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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融政策変更、日銀の示唆するものは?

2024年03月20日 16時09分54秒 | 経済

日銀の新しい金融政策の方向が示されました。感想を言えば、適切な配慮をしつつ、解り易い表現で、的確にこれからの金融政策の方向を示したという点で、先ずは満点の内容という所ではないかと思っています。

先ず第一に挙げなければならないのは、マスコミの見出しのように、11年来のアベノミクス、異次元金融緩和からの明確な決別を明示した点です。政府は勿論、市中の金融機関も、企業経営者も、生活者としての一般家計も、みんな、これからの金融の在り方はこれまでと違うという意識変革の必要を感じたでしょう。

その上で、特筆すべきは、こんな金政策の大転換を発表したに関わらず、金融マーケットは全く平穏に推移しているという事です。

一部には、日銀が異次元金融緩和脱出の方向を明示し、一方でアメリカのFRBが金利引き下げの具体化を示唆するとなれば、為替レートは大幅円高、ダウ平均は上がるかもしれないが、日経平均は暴落というシナリオの現実化を予想した筋も多かったでしょう。

その危惧は既に3月7日の日経平均「寄り200円高、引け500円安」といった水鳥の羽音に驚いたミニ・ショックにも見られるところですが、それが現実となった昨日は、逆に円安、日経平均は2日連続大幅上昇という平穏を通り越し、マネーマーケットは絶好調といった状態です。

関連業界では、今回の日銀の発表はすでに「織り込み済み」という説明が用意されていたようですが、マスコミが巨大活字で扱う大変革と、それを全く気にしないようなマネーマーケットの活況はまだに対照の妙でしょう。

日銀発表の中身を見れば、日銀預金のマイナス金利は消えますが、0.1%の金利は変えず、市中銀行の金利は自主決定、ETFなどの購入は元々付加的な緩和政策ですから1年かけてやめますが「国債の買い入れ」は従来通り、しかし、基本方針は「BSの圧縮」という表現で示すといったものです。

政府は当面安心できると思うでしょうが、日銀は、決して無理はしないが、しかしやるべきこと確りやりますと内外に意思表示したものと理解すべきでしょう。

政府は当面安心しながらも、今迄のような国債を印刷すればバラマキが出来るという具合には行かなくなるだろうと自覚するでしょうし(少し甘いかな)、マネーマーケットもバブルの進展には気を付けるでしょう(これも甘いかな)。

今日のアメリカのFOMC の発表がどうなるかは微妙ですが、今年中に3回の金利引き下げの可能性がどの程度かも次第に明らかになるでしょう。

そうした、予測の難しい国際情勢の中で、日銀は、今のマネー経済面での活況を「→バブル→崩壊」ではなく、正常な範囲の活況で実体経済活動への潤滑剤にするような舵取りを目指すのではないでしょうか。植田総裁の腕に期待が懸るところです。

もう一つ付け加えれば、植田総裁が「金融改革は賃上げを見て」と繰り返されたことの意味を、日本の経営者も労働組合も(経団連も連合も)「日本経済における賃金決定の在り方の重要性」を労使に理解してもらうための発言と受け取り、「担当責任者」として、年々、誤りない「適正賃金の決定」に本気で取り組むという意識を確りと持って欲しいと思うところです。


日米のインフレ目標2%と政策金利

2024年03月18日 16時45分27秒 | 経済

今春闘の妥結結果が、昨年より一段と高くなることがほぼ確実にな状況です。「今春闘の結果を見てゼロ金利脱出を検討する」というのは植田日銀総裁ですが、その日銀の政策決定会合が今日と明日です。

明日の午後には、日銀の意向は明らかになるでしょう。さて、10年来のゼロ・マイナス金利という異常状態がどうなるかいよいよ大詰めです。

このブログでは、その予想をする意図は全くありません。考えてみたいと思っていますのは、明日・明後日とアメリカのFRBの同様の会合FOMCが行われ、アメリカでは5.25%~5.50%とインフレ対策で引き上げた金利を下げるかどうかが議論になっているという日米逆の状況がどんな風に進展すれば、お互いに上手く行くのか、日本が下から狙い、アメリカが上から狙うインフレ目標の「2%」というのが適切なのか、といった問題です。

日米が同じインフレ目標というのには当初から違和感を持っていましたが、先ず、両国の実態をベースに考えてみたいと思います。

日米のインフレの実態を少し長期に見たのが下のグラフです。 

    日米インフレ率の長期推移        資料:各国統計                       

1980年、共に石油危機後の安定経済の模索の時期ですが、アメリカは深刻なスタグフレーションからの脱出、日本は第二次石油危機克服の最中でしょうか、日本のインフレはアメリカのほぼ半分、その後も上がり・下がりの動きは似ていますが、日本のインフレ率は圧倒的に低いです。特に、1986年以降は「プラザ合意」による円高で、物価が上げられるはずもなく、僅かにバブルのときの3%程度の上昇だけです(アメリカは5~6%)。

欧米主要国がスタグフレーションを克服し、労働組合は力を失い、世界中が「インフレのない時代に入った」と言われた1990年台後半から2020年までに、日本ではインフレがゼロ・マイナスの年が10回以上ありましたが、アメリカではリーマンショックの翌年1回だけです。2021年原油価格が上がると忽ち6~8%のインフレ(ヨーロッパは10%越え)です。

こうした日米のインフレの歴史を見れば、日米の差は歴然です。

この2国が同じインフレ目標2%を掲げるというのは矢張り無理があるようです。この違いを生む最大の原因は企業経営というものについての考え方、そこから生まれる労使関係の違いでしょう。

問題はその違いを無視して同じ目標を掲げるとどんなことが起こるかです。アメリカが2%に抑え込むと景気の失速が起きる可能性が出て来るのではないでしょか。日本は2%以下のインフレで、健全な安定成長は可能でしょうが、余りそれにこだわると、また「円高にして頂かないと」と言われる恐れが増してくるのではないでしょうか。

金利差の変化は、当然に為替レート調整に繋がり、為替レートの変化は、マネー経済だけでなく実体経済にも大きな影響がありますから、特に日銀にとっては八方に目配りをしなければならない難しい仕事だと思っています。


輸入物価、企業物価、消費者物価の動向(終回)

2024年03月15日 13時56分07秒 | 経済

一昨年来、原油をはじめ資源価格が高騰、世界がインフレで苦労しています。日本でも、まず輸入物価が上がり、それが企業物価に波及、そして消費者物価も上がりました。アメリカやヨ―ロッパはまだインフレ退治の途上です。

日本も多少ゴタゴタしましたが、何とか物価問題は落ち着いて来ています。1970年代の石油危機の時は、日本は主要国に先駆けインフレを収めて『ジャパンアスナンバーワン』と言われましたが、今回は、日本はデフレ脱出という逆方向です。長いデフレでしたが、漸く日銀がゼロ金利脱出に動けるまでになりそうです。

いつも通り2枚のグラフで状況を確認していきます。

    主要3物価指数の推移                                         資料:日本銀行、総務省

指数の動きを見ますと輸入物価は、OPECの減産の延長、その他国際情勢の不安定はありますが何とか落ち着くといった動きで、国内企業物価に大きな影響がある状態ではなくなり、企業物価の動きは殆ど水平状態で、輸入インフレの心配は、ほぼ消えています。

消費者物価の動きは、国内政策の問題で、主なインフレ要因は賃金ですが、緑の線は緩い下降で推移です。企業も日銀も、春闘賃上げで賃金インフレとは考えないでしょう。

3物価指数の動きは、下の対前年費上昇率で見ても、青、赤、緑の線は急速に収斂して、今後も何か特別なことが気ない限り、正常な推移をたどりそうです。

     3物価指数の対前年同月の変化率(%)

                資料:上に同じ

輸入物価は国際価格の変化によるものですから、日本の力ではどうにもならないのですが、国際価格が安定すれば当然企業物価は安定します。後はそれぞれの国の賃金と物価の関係で消費者物価が決まるのですから、日本は、日本の実質経済成長率(≒生産性上昇率)と賃金上昇率の関係を日銀の言う2%インフレ以内に収めて行けば、問題は起きないはずです。

それでも問題が起きるとすれば、主要国(特にアメリカ)の経済政策の影響で、円高や円安が起きる場合ということでしょう。

当面,そうした面で大きな迷惑がかかることも起きないだろうと考えれば、一昨年から追いかけてきた、物価問題も当面終息と考え、このシリーズも今回で終わる事にしたいと思っています。(国内物価、特に消費者物価の問題はまだ続ける必要がありそうです)


平均消費性向の長期推移を見る

2024年03月14日 15時17分36秒 | 経済

今春闘の集中回答日が過ぎました。大手企業の殆どが満額回答、満額以上という所まであって、日本の経営者は、可能でさえあれば、出来るだけ従業員の働きに報いたいと考えると言われたかつての日本的経営、日本的労使関係の片鱗が垣間見えたような気がしました。

恐らく今年の最終結果は、これまでの予想をかなり上回ると思いますが、日銀の植田総裁が、「春闘の結果によって(ゼロ金利脱出の金融政策を)判断する」という場合の判断基準である、賃金上昇を伴う2%インフレが見えてくるのではないでしょうか。

主要企業の結果を追いかける中小企業も、公取の「賃上げの価格転嫁の指針」もあり、また労働組合の存在価値の証明を賭けて、久方ぶりに賃上げストの声も聞こえてきます。

分配で対立、生産性向上で協力というあるべき労使関係が健全な形で働き始めることを期待するところです。

ここで考えておかなければならないのが、賃上げの結果を日本経済の健全な成長に確り生かすという問題でしょう。

賃上げで消費が増える、消費が増えれば投資・消費のバランスの取れた経済活動が復活すると考えますが、一つ問題があります。それは「消費性向」という問題です。

このブログでは、総務省の家計調査で毎月調べられている「二人以上勤労者世帯」の「平均消費性向」を追いかけています。

ご承知のように「消費性向」とは可処分所得(手取り収入)の何%を消費支出しているかという数字で、残りは貯蓄ですから、「消費性向+貯蓄性向=100%」となります。

日本の大部分の家庭は二人以上勤労者世帯で、生活の安定を重視しているこの世帯の消費性向の平均が総務省の「家計調査」で調べられているのです。

そして、何故この数字をこのブログがしつこく追っているかの理由は、長期不況の中で、政府の年金不安、老後不安、将来不安などの宣伝が重なって、日本の勤労者家計の平均消費性向は傾向的に落ちて来ているのです。

  二人以上勤労者世帯の平均消費性向の長期推移

        資料:総務省「家計調査」

石油ショック(1973年)前は高度成長時代で、賃金は毎年上る安心感からでしょうか、平均消費性向は80%前後ありました。その後も賃金はバブル崩壊まで上がりましたが、バブル後は殆ど賃上げのない時代になり、年金財政不安、老後不安、少子高齢化、人口減少など、将来不安が政府の政策にも色濃く反映する時代になり。最後の留めはコロナ禍で、この間を通じて「平均消費性向」は傾向的に下がり、家計は金を使わず将来のために貯蓄するという行動が一般化したようです

バブル明けで回復基調ではありますが、65%に達しません。

平均消費性向の2ポイントの上昇でGDPは1ポイント増えます。という事は、消費性向が上がれば賃上げにプラスした経済効果があるという事です。貯蓄に回ってしまえば、賃上げ効果はそれだけ減殺されるという事です。

問題は、消費性向を高めるためには何が必要かですが、過去の推移からみれば、日本の将来は明るいというイメージを国民が持たなければならないのでしょう。

春闘賃上げを如何に明るい日本の将来につなげていくか、労使の頑張りに政府が応えなければならないでしょう。

そこで必要なのは、嘘を言わない政府、信頼できる政府、「当面の自分の保身」ではなく「将来の国民の自信」を創出する清廉且つ毅然たる政治ではないでしょうか。

上のグラフを眺めながら、日本の政治や外交の失敗、倫理的堕落と同じように国民の不安と「消費性向の低下」進んでいるような気がしてなりません。


1月「平均消費性向」低下、回復のカギは春闘に?

2024年03月13日 13時49分47秒 | 経済

日本経済回復の年となるのではないかと期待される2024年スタートの1月ですが、頼みの消費需要は予想外の不振で、前途多難を象徴するような幕開けの数字になったようです。まず2024年1月分の2人以上世帯の消費支出ですが、対前年同月変化率で名目マイナス4.0%、消費者物価上昇率を差し引いた実質ではマイナス6.3%という大幅な落ち込みになりました。

先ず名目支出が前年1月に比べて4.0%も減少というのが異常で実質との差の消費者物価の上昇率は傾向的には下がってきていますが、統計の内訳で見てみますと、名目支出で、光熱・水道22%減、住居の18.2%減が特に目立ち、さらに交通・通信の10.5%減も異常です。

総務省の説明ではダイハツの出荷停止で乗用車の販売が30%減ったことなどがあったようですが、交通・通信は自動車関係費を含みますから、自動車の買い控えの影響はあったでしょう。

光熱・水道や住居については、考えてみれば、今年の1月は異常な暖冬でしたから、そうした異常気象の影響で、結果的に安くて済んで仕舞ったという事もあったのではないでしょうか。

家計の消費意欲というのは、先ずは名目支出に現れますが、今年の1月の社会情勢で「まずは支出を抑えなければ」といった特別の要因は無かったように思われます。

暖冬であれば、結果的に暖房費を使わずに済んだという事もあり得ましょう。

逆に支出の伸びているのは教育31.4%増、保健医療10.7%増で、インフルエンザは仕方ないとしても、補習教育などを含む教育費の増加は、支出意欲の表れ、教養娯楽は伸びてはいませんが(-2.8%)前年急上昇で高止まりの状態でしょう。

そんな状況の中で、2人以上勤労者世帯の平均消費性向は、昨年1月の81.8%が今年の1月は76.7%と大幅な低下ですが、日本の家計が今年に入って、更に倹約の度を強めるとは些か考えにくいので、来月以降、特に春闘の結果を見ながら検討を続けたいと思います。      

     勤労者世帯の平均消費性向の推移

        資料:総務省統計局「家計調査」

グラフは、今月から2021年を省き、2024年を加える形にしました。2022年はコロナの終息を見込んでか、特に平均消費性向の予想外の上昇の年でしたので、22年の各月の数字を上回ることが消費需要回復の条件と言えるのかもしれません。


実体経済の回復に主眼を

2024年03月12日 13時14分38秒 | 経済

先週金曜日に「証券市場、政策変更先取りのミニ・ショック」を書きましたが、今週に入って、昨日今日も株式市場は急落です。理由は、円高が進んでことでしょう、アメリカで半導体関連が下げたこともあるようですが今日は戻しています。

円高が進んだ理由は先週金曜日にも触れましたように、3月か4月にゼロ金利脱出への動きがある「かも」という情報です。これで日経平均4万円越えはバブルと判断した投機資本が売りに出た(外資系?)といった所でしょか。本当のところは近ぢか解るでしょう。

マネーマーケットとはこういうもの(先を読んで動くもの)なのです。

実体経済面では昨年10-12月期のGDP二次速報で改定があり、実質経済成長率が年率換算-0.4から+0.4%とプラスに変わりました。原因は、法人企業統計季報の10-12月の発表があり、仮置きしてあった「企業設備」が-0.1%から+2%と順調だったからです。

実体経済は、スローペースですが前進を続けている様子です。

来月からの来年度経済については、春闘も集中回答日以前から満額回答とか、要求以上の回答なども織り交ぜ、中小企業でも賃上げの動きは従来よりはっきりと活発になって来ている様で、消費者物価の沈静傾向とも相俟って、実質賃金もマイナスからプラスに転換し、安定して上昇している企業の設備投資(デジタル化、ソフトウエア充実が顕著:日銀「短観」)と賃上げが支える消費需要との投資・消費のバランスのとれた姿を取り戻す可能性が強くなると期待しています。

1月の家計調査:家計収支編は8日に発表されており、これについては明日取り上げるつもりですが、勤労者世帯の平均消費性向は、残念ながら前年比マイナスに落ち込んだようです。マネー経済はいろいろあるかもしれませんが、2024年度には、実体経済は何とか健全性を取り戻す方向に進むのではないかと期待できそうなデータが揃いつつある状況です。

ところで、このプロセスで日本としてやらなければならない事は金融の正常化です。長い円高デフレ時代を脱出するために黒田日銀総裁が、アメリカはFRBのバーナンキ方式に倣って導入したゼロ金利政策は、円高の終了を実現しましたが、その後のアベノミクスの舵取りが、余りに実体経済の理解を欠いていたため、異次元金融緩和という厚手の衣も着せて10年も続いてしましました。

これからのゼロ金利脱出プロセスでは金利上昇は不可避です。異次元の量的緩和も次第に正常化されるでしょう。そのたびにマネーマーケットはガタガタするかもしれません。

しかし、人間はGDPという実体経済で生きているのです。そして今、その発展は地球環境と共生する先端技術の世界的競争の真っ只中で技術開発の成果にかかっています。

これは日本の得意な分野だったのではないでしょうか。マネーマーケットは、それに必要な潤滑油でもあるのです。そして安定した実体経済の成長は、マネーマーケットの盛況を可能にすることにもなるでしょう。

それを永続させるのは「平和」でしょう。人類の知恵が問われていますし、平和憲法を掲げる日本の役割も期待されるのではないでしょうか。

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(訂正)上記「平均消費性向の箇所、1月統計で、前年比マイナスでしたので、その点、前年比プラスの文章を訂正いたしました。不注意を陳謝します。


証券市場、政策変更先取りのミニ・ショック

2024年03月08日 15時17分02秒 | 経済

今年は日本経済の舵取りの難しい年でしょう。先日「マネー経済から実体経済へ着実な転換を」と書きましたが、日本では日銀がゼロ金利脱出へ動かなければならない事は確実でしょう。

一方、アメリカではインフレ抑制で引き上げた政策金利の引き下げが必要で、すでにFRBから年内に3回の引き下げの方針がプロットされています(多分各回0.25%)。

日本の政策変更の条件は、春闘賃上げで賃金上昇が物価上昇を上回り、個人消費が活発化し、「賃金インフレ」が2%に近づくという事でしょう。

アメリカの場合は、高金利が景気過熱を抑制し、賃金インフレが2%以下に下がってくることでしょう。

2%程度の「自家製インフレ」(主に賃金インフレ)が「活発で健全」な経済、低迷や過熱でない経済の「体温」として適切な目印というのは日米共通の認識のようです。

という事で、日本で最も関心の高い今春闘の賃上げに関する情報では今春闘の平均要求(中間集計)は5.85%と30年ぶりの高さで価格転嫁促進の雰囲気などもあり、昨年の3.6%を上回る賃上げ率が期待されています。

そうした中で、昨日、政府や日銀関係者の名前などにも触れながら、3月、4月の日銀の政策決定会合で、ゼロ金利見直しの動きがあるかといった情報が流れ、昨日、株価は寄りの200円高から急落、引けは500円の下げでした。当然、日米金利差縮小の予想から円レートは147円まで円高が進み、今日もマネー市場は乱高下のようです。

恐らくこれからは、こうした情報がリークから公表まで、いろいろな形で出て来るでしょう。そのたびにマネーマーケットは乱高下でしょうか。

政府、日銀に必要なことは実体経済に先立って動いているマネーマーケットを如何に適切な情報発信によって適切に活用、実体経済の順調な始動につなげることでしょう。

日米の関係は複雑です、基本的には、米国の金利引き下げはドル安、ダウの上昇を齎し、日本のゼロ金利脱出は円高、日経平均下落につながるでしょう。

しかし一方では日本の株式市場はアメリカの動きを写すというのが良く知られた現象です。この2つの動きは相矛盾する事が出て来そうです。

春闘の効果で日本経済の活動の活発化があれば、それは日本のマネーマーケットの活況に繋がるでしょう。そうした好ましい変化を日本の政策金利の引き上げに反映させれば、為替レートやマネーマーケットの動きは当然マイナスの影響を受けるでしょう。

しかし何と言っても、こうした動きは、30年の長きにわたり異常な形で運営されてきた日本経済の正常化のための必須プロセスなのです。やり抜かなければならない事でしょう。

いま日本政府は貯蓄から投資へという政策を取り。マネーマーケットの活用で国民の財産や、公的年金の基金などにも増やそうとしていますが、逆風の可能性もあるでしょう。

政府の奨励で買ったNISAの証券の価格はどう動くでしょうか、庶民にとっても、これは難しい問題です。政府、日銀がそれに能く応えてくれることを願うところです。


輸入補助金の効果と経済行動

2024年03月06日 12時16分36秒 | 経済

前回は昨日発表された東京都区部の消費者物価指数の対前年同月比が1月の1.8%から2月は2.5%に上昇したという報道について実態を見ました。

物価の実態は沈静傾向が続いているのですが、政府の補助金などによる物価の下げがあった場合、「対前年同月」という統計の表示では、その分消費者物価は下がりますが、1年経過したところでその分が「上がる」という「計算上の」数字が出るので気を付ける必要があるという事を書きました。

勿論、マスコミではその分の説明はなされていますが、グラフを見ただけといった場合は「物価が上がったのか」と勘違いするので、念のためという事です。

今回は同じ「補助金による政府の負担軽減策についてですが、もう少し本質的な問題を考えてみたいと思います。

原油の輸入価格が高騰してガソリンの価格が上がって大変という事で、レギュラーガソリンが1リッター170円を越えたら元売りに補助金をだし、それ以上上がらないようにするという話を思い出す方は多いと思います。

電気代、ガス代についても昨年2月から政府は電力・ガス会社に補助金を出して電気料金、ガス料金の上昇を抑えるという国民の負担軽減策を取りました。結果、消費者物価は1%弱の下落となり、国民負担は軽減されました。

こうした政府の施策は、「国民に寄り添う」という言葉と共に行われているようですが、財源は結局赤字国債で、国民からの借金、将来の国民負担という事になります。

原油などのエネルギー価格高騰の中で、石油元売り企業が史上最高の利益を出したり、このところガス会社の株が大幅に上昇するといったこともあり、こうした「国民に寄り添う政策」がほんとうに国民のためになっているのか疑問という意見もあるようです。

輸入物価上昇については、何時も指摘していますが、輸入物価の上昇は、国民がみんなで背負うべきものなのです。国民全体が頑張って対応するしかないのです。

特にエネルギー資源といった問題につてはいかに省エネ技術を進めるか、再生可能エネルギーの低コスト化を実現するか、如何に安定した貯蔵法(特に電力)を考えるかといった問題は喫緊の課題なのです。

赤字国債でエネルギーの価格を下げて、それで国民のためになっていると考える政府は本当に「国民のために役割を果している」のでしょうか、それとも当面「ぬるま湯」を提供して、国民の問題意識や日本の技術進歩を遅らせているだけなのでしょうか。

嘗てのオイルショックの時、その後もエネルギー価格の上昇を予測した無資源国日本は徹底した省エネルギーのための技術開発を進め、世界に先駆けてエネルギー係数がマイナス、つまり、経済成長は実現したが、エネルギー消費は減少したという経済状態を作り上げた実績があると記憶しています。

日本経済の復活のためには国民全体のこうした気概と努力が大切なのではないでしょうか。


東京都区部の消費者物価指数実態に近づく

2024年03月05日 14時07分51秒 | 経済

今日、総務省統計局から2月分の東京都区部の消費者物価指数の速報が発表になりました。20日過ぎに発表になる全国指数の先行指標という意味で、特に気になる変化があった時は取り上げていますが、今回も、統計数字上誤解の懸念もあり取り上げました。

消費者物価はこの所、鎮静傾向が顕著で、日銀の植田総裁も金融政策(ゼロ金利脱出)との関連で注視しているところですが、2月の東京都区部の数字の「対前年上昇率」は総合指数で2.6%と1月の1.8%に比し、1ポイント近い上昇となっています。

私自身もまさかと思い、説明を見てみますと、原因は政府のエネルギー補助金のせいでした。

このブログの毎月の消費者物価の分析の時、昨年2月から電力・ガスなどエネルギー部門に政府が補助金をだし輸入エネルギー高騰が消費者を直撃しないようにすることで消費者物価は1ポイント近く下がったことは指摘していました。

それから丁度1年たったので「対前年上昇率」が高くなっていたのです。

「生鮮とエネルギーを除く総合」はエネルギー価格が入っていないので影響はありません。。

昨年2月から「総合」と「生鮮食品を除く総合」については、補助金で電力料金やガス代が下がったっ分だけ指数の対前年同月比は低くなっていました。

今年の2月になりますと、昨年の2月の分は、すでに補助金で下がっていますから、政府の補助金による指数の下落幅は消えて、その分対前年同月の物価上昇率は上がることになるのです。

       都区部「消費者物価指数」の対前年同月上昇率の推移

                 資料:総務省統計局「消費者物価指数」

グラフで見て頂くとよくお解りの様にエネルギー補助金に関係ない「生鮮とエネルギーを除く総合」(緑の線)では、昨年2月の下折れと、今年2月の上折れはありません。(青と赤の線では補助金の影響がはっきりです) 

つまり本来の「対前年」消費者物価指数の上昇率は「総合」と「生鮮を除く総合」の場合、昨年2月から今年の1月まで、補助金の分だけ「1年間だけ」下がるというのが「対前年上昇率」の数字なのです。

そんなことは解っていますと言われる方には不必要な説明をしてしましましたが、消費者物価の鎮静化傾向には変わりないと思っています。

いずれ補助金はなくなるでしょうから、その時は消費者物価そのものが現実に上がります。(そしてその後1年間は「対年同月上昇率」で今回と逆の現象が起きることになります)

グラフで3本の線が収斂して来た事は、物価の沈静傾向、それに物価の動き向が落ちついて来ている事を表していると思っています。


令和6年度経済見通し閣議決定、政府は本気か!?

2024年03月04日 17時02分39秒 | 経済

週明けの今日、日経平均は早速に日経平均40000円突破の報道です。「米国ダウの上昇を反映」といった解説もついていたりしますが、アメリカが上れば日本が上がるというのでは何か心もとない気もします。

いずれにしても今後日経平均は4万円台ですよ、これから景気は上向きですよと明るい展望を示唆してくれるのは、国民の気持ちも明るくなっていいことかもしれません。

一方では「アメリカがクシャミをすれば、日本は風邪を引く」などと言われた「経済のアメリカ追随」という意識はまだ消えていないのかと、ダウ平均の動きと日経平均の動きを眺めながら何か不安感が残ります。

日本が30年を超える苦難の経済状況の期間も、アメリカはリーマンショックの震源地でありながら、それなりに経済成長をしていました。一方、嘗て1980年前後、レーガン改革前後の時期はアメリカはスタグフレーションに苦しみ、日本はジャパンアズナンバーワンと言われました。

矢張り日本は、日本自体の力で、着実に対外・対内の両方に於いて、賢明な経済政策を確立し、実行して、健全な安定成長の路線を進んで行かなければならないのでしょう。

経済成長という国民の要望を考えれば考えるほど、誤りのない外交政策をベースにあくまでも「実体経済」の安定した成長を重視した経済政策の必要を痛感します。

前回も触れましたが、何よりも重視すべきは「実体経済動向」中心の視点、実質GDP成長の目標数字を確り設定し、それを確実に実現していくという政府の姿勢でしょう。

こんな事を書いてきたのも、令和6年度(2024年度)の政府経済見通しの発表を見て、こんな事でいいのかという感じを持つからです。

端的に数字を挙げてしまえば、さる1月26日閣議決定した「令和6年度の経済見通し」によれば、令和5年度(2023年度)の実質経済成長率の実績見込み1.6%に対し令和6年度の実質経済成長率は1.3%に下げられているのです。

政府があれだけ賃上げを奨励し、価格転嫁の指針まで作り、労使が賃上げの必要を認識し、一方、消費者物価は確実に上昇率の低下が予想されている中です。

閣議に参加した人たちは、政府も国民も、いかに消費不況脱出を願っているかを知りながら。民間消費の伸び実質1.2%、企業設備の伸び実質3.3%という投資偏重、消費軽視の見通しを「結構です」と決定しているのです。

政府はこの程度でいいのだと考えているのでしょうか。それとも関心事は、経済見通しの前提になる当初予算案の衆院通過で、通過さえすれば、事務局案に追加事項を加え閣議了解から、閣議決定に自動的に刷り変えればいいのだからでしょうか。あまりにも事務的で、今年こそ日本経済を何とかしなければといった気概や気迫は皆無のようです。

tnlaboでは、実体経済は、民間労使の努力を中心に、一層の改善ありと考えていますが、そのためには、補正予算を組めばいいというのでしょうか。(当初予算の意味は?)

頼りは民間労使の努力と、日銀の優れた舵取りでしょうか、期待する所です。


マネー経済から実体経済へ着実な転換を

2024年03月02日 20時39分51秒 | 経済

今年の春闘は、労使がそろって確りと賃上げをし、これまで長い間元気のなかった消費需要を盛り上げ、投資、消費のバランスのとれた安定成長経済に転換しようと考えていると思っています。

しかし、日本の労使がそう考えていても、日本経済に大きな影響を与える国際経済という現実があります。

日本は、自国経済のバランスを労使の判断で適切に運営しながら、国際経済が日本経済に与える影響に上手に対応し、出来れば上手く活用して、これまでの長かった長期の低成長経済からの脱却を果たさなければならないようです。

「プラザ合意」から始まって、日本の経済外交は失敗の連続でした。もうこれ以上失敗は出来ませんし、絶対失敗しないという意気込みで、内外情勢をつぶさに分析し消化して、さすが日本、いざとなればここ迄出来るのかと言われるような転換をする好機でしょう。

好機と書きましたが、客観的に見て、今の日本経済の状態は、そうした転換を可能にするのに必要な条件が国際競争力、対外黒字や国民の経済社会再建の意欲など具合よく揃っているように思うのです。

話を具体的にしていきますと、この所、国際資本が、日本の復活を予想して短期資金も長期資金も、日本に流れ込んでいます。

目立つのは国際投機資本の動きです。その効果でしょう、日経平均は1988年のバブル破裂直前の数字を超え、来週には40000円を超えそうな勢いです。

国内の投機筋はまだまだ日経平均は上がると色々なデータを出して更なる上昇を期待しています。この動きを日本としてどう受け止めるかという問題がありあります。

日経平均の上昇を望む人は多いと思いますが、問題は「もうか、未だか」をどう読むかです。やり方によってはバブル再来で、行くところまで行って破裂という可能性もあるわけで、それは失敗の典型でしょう。マネー経済が活発なときは企業に資金量は大きくなり、ますが、破裂すれば消滅です。

必要なことは、「奇貨置くべし」で、タイミングよくその資金を実体経済の成長に向けて、いかに上手に転換、活用するかでしょう。重要なのは勿論日本企業の経営戦略ですが、それを誘導するのは金融政策でしょう。バブルは放置すれば、破裂するまで続くのです。

折しも、アメリカは政策金利の引き下げの必要を感じており、日本はゼロ金利からの脱出を望んでいるのです。そしてこの動きは。投機に必然的に随伴する過度のボラティリティ―を伴う可能性が大きいのです。経済専門家も危険性は十分認識していると思います。

それは、株価と為替レートの2つの分野で共時性を持つのです。日本は、1990年前後の「地価と株価」のバブルの崩壊で典型的な形での失敗を経験しています。あの時は円高が先行していましたが、今回は円高も同期するということになるのでしょう。

今日の経済学、というより経済活動では、巨大に育ち過ぎたマネー経済の崩壊が実体経済に大きな負の影響を与えることは、リーマンショックが実演してくれた通りです。

今日のマネー経済の活況を、いかに上手に実体経済の健全な動きに繋げられるかどうか、日本企業労使、それに(今の政府では頼りになりませんが)金融政策当局としての日銀が、いかに巧みに事を運ぶか、折に触れて見ていきたいと思っています。


消費者物価の沈静傾向はさらに明瞭に

2024年02月27日 13時09分29秒 | 経済

株価は上がっていますが、それと反対に、消費者物価の沈静化は一層明瞭になってきました。

輸入物価には一部多少の上昇が見られることは2月13日付のブログでも触れましたが、国内発の物価上昇要因が消えて来た事で、ここ当分消費者物価は沈静傾向を続けるものと思われます。

昨年秋まで加工食品、飲料、日用品などいわゆる生活必需品の価格上昇の波が激しかった原因は、下の図をご覧いただくと解るような気がします。

     消費者物価主要3指数の対前年上昇率の推移(%)

                資料:総務省統計局「消費者物価指数」

そうした品目が中心の「生鮮食品とエネルギーを除く総合指数」(緑色の線)が2021年から22年初めにかけてコロナによる消費不振で値上げできずに我慢した利益圧縮の取り返しをかけて22年から23年にかけて一斉に波状値上げに動いたことが大きかったように思います。この動きは昨年秋から、もうこの辺でっという事でとなったのでしょう。

「総合」や「生鮮食品を除く総合」が2023年2月に大きく下げているのは政府の電力ガスなどへの補助金のせいです。今後補助金が消えれば3本の線は収斂に向かうでしょう。

という事で、改めて2021年からの、輸入物価の上昇の中での日本の消費者物価の推移を見ますと下図です。

        消費は物価3指数の推移

                   資料:上に同じ

日本は資源輸入国で、資源などの輸入物価の上昇分は結果的に国民が負担する事が比較的整然と行われます。これは1973年の第一次石油危機の経験から学んだ結果です。

アメリカやヨーロッパの様に海外物価の上昇率を国内価格にも賃金にも転嫁しようという動きは小さく、国内価格は輸入価格のようには上がりません。輸入物価上昇に対応する便乗値上げも便乗賃上げも大きくならず、物価上昇は合理的な範囲で収まるようです。

その結果、アメリカやヨーロッパの様に、輸入インフレの激化を金利引上げで抑えようといった政策は必要ないのです。

結果的に国際競争力が強くなるのに、更に円安になるといった困ったことが起きます。

欧米は金融引締めで物価を抑え、日本は賃上げをして物価を引き上げて彼我のギャップを小さくする必要があるのでしょう。今春闘で労使とも、更に政府も高めの賃上げをというのもその結果でしょう。

日本が少しづつ賃金インフレを起こして問題解決に近づいていくのではないでしょうか。


バブルの気配「気が付かないのがバブル」と言いますが

2024年02月26日 17時26分05秒 | 経済

日経平均が1989年12月の38957円をあっさり超え、39000円を上に抜けました。

この間までアメリカではダウ平均が史上最高を記録といっていましたが、日本もこの先、上がれば史上最高ということになりました。

そろそろバブルという声もあります。勿論バブルではないという声もあります。本当のところはどうなんでしょうと言われても、自信を持って答えられる人はいないでしょう。

バブルが恐ろしいのは、バブルの最中は皆が気付かないからで、気付いた時にはバブルの破裂、価格暴落で大損の可能性があるというとでしょう。

バブルの時はいろいろなものの価格が上がります。1990年代のバブルの時は土地が中心でしたが、今回は株価が中心で、しかし土地の代わりにマンション価格が大幅に上がっているようです。

勿論、マンション自体の品質が良くなっているという事もあるでしょうが、東京で売り出された新築マンションの価格がこの1年で大幅に上昇したなどと聞きますと矢張り気になります。

経済学ではバブルと実需の違いは、実需の場合は、使用価値、利用価値からみて価格が妥当ですが、バブルの場合はそれ以上の価格が一般的なるというように説明されます。

使用価値、利用地以上のものを買うのはなぜかと言えば、将来価格が上がる事を見込んだ場合という説明がされ、そうなると価格が上がったら転売してキャピタルゲインを得ようという仮需要、架空需要が発生する時にバブルは本物になるという事のようです。

1990年台のバブルでは「土地は必ず値上がりする」という土地神話があり、「空き地があれば買っておけ」で地価上昇、「日本の土地を全部売れば、面積25倍のアメリカの国土が4つ買える(土地単価100倍)といった異常状態で、土地を持つ企業の株が暴騰といった事情が株価の支えにもなっていました。

この時の日経平均のピークに追いついたと言っても、まだまだバブルではないといった当時の数字と比較した解説もありますが、あの時の異常さは別格でしょう。

ゼロ金利の銀行預金や国債より株の方が利回りが良いというメリット(実利)が言われ、特にこの所のような株価上昇という中で、政府の政策もあり、株や投信に資金が動くのも解りますが、それは今までの話で、今後は銀行預金や国債にもそれなりの金利が付き、日本の金利引き上げ、アメリカの金利引き下げになれば、状況様変わりという事態が(地震ではありませんが)近い将来来る可能性はほぼ確実でしょう。

政府はいつも「国民の生命と財産を守る」と言っていますが、時にあてになりません。NISAについても、些か説明不足のようです。岸田総理は外国で「私に投資を」などと言っています。

国民が一様に喜ぶのは、日本経済が健全な経済成長路線を取り戻した時ではないかと考えれば、来年度の実質経済成長の見通しが今年度より低く1.3%(前年は1.6%)などとせず、適切な経済政策を考え、もう少し高い見通しを出すべきではないかというのが、前々回の最後に「余計なこと」を付け加えた理由です。 


日銀植田総裁「インフレ状態にある」の読み方

2024年02月23日 13時29分47秒 | 経済

植田総裁が22日の衆院予算委員会で「日本経済はすでに(デフレではなく)インフレ状態にある」と発言されたことが注目を集めています。

全国消費者物価の先行指標である東京都区部の速報では前年同月上昇率が12月の2.4%から1月は1.6%に下がり21カ月の続いてきた実質賃金低下の記録がストップするかもしれないという物価鎮静化の中での発言ですから、些か奇異と感じた方も多いと思います。

植田総裁の発言では、今春闘の結果に注目という事ですが、そうした意味で考えますと、日銀が金融政策の転換点を睨みつつ現状をどう理解しているかが見えるように思います。

このブログでは、一昨年から続いた生活必需品の一斉波状値上げは終息しつつあると理解し、今後消費者物価の上昇が起きるとすれば、差し当たって、今春闘の賃上げの高まり、賃上げ価格転嫁の「公認」による賃金インフレと見て来ています。

このブログの提言では、平均賃金10%の上昇で、5~6%のインフレ、4~5%の実質賃金上昇にしても日本経済の国際競争力には問題なく、後はインフレを2%に抑える本来のインフレ目標に努力すればいいとしています。

恐らく、植田総裁は今春闘における労使の賃上げついての意欲の高さ、政府が公正取引委員会を通じて、賃金上昇の価格転嫁を容認するという指針を出しているといった状況から判断し、今年は国民経済生産性を超える賃金コストの上昇で、日本自体の「自家製賃金インフレ」が起きるという判断をされての発言と理解すべきと思っています。

勿論、こうした形でこれまでの「賃金上昇不足の自家製デフレ」から脱出できれば、日本経済正常化への第一歩が踏み出せるので、大変結構で大いに支持したいところです。

昨年の場合は、政労使が共に賃上げに積極的と言いながら、結果は平均賃金の1~2%程度上昇にとどまり、折からの食料を始めとした生活直結品目やサービスの一斉波状値上げで、実質賃金は下落を続け、デフレムードからの脱出が出来ませんでした。

しかし、今年は2つの好条件があります。消費者物価の値上げの動きが一巡し、賃金上昇が物価上昇に食われる可能性が小さくなりそうなこと、もう1つは公正取引委員会の賃上げの価格転嫁の指針発表で、賃上げが下請け部品産業や中小零細企業など広範囲に広がる可能性があることです。

経済計算でいえば、賃上げの価格転嫁を確りやっても「便乗値上げ」が無い限り、物価上昇が賃金上昇を追い越すことはないのです。結果、デフレムードも消えそうなのです。

という事で、少し余計な事を書きますが、ここで日銀が金融正常化を進めれば、日本は正常な資本主義国にな戻るのです。金利が認められなかった中世から金利が機能する資本主義経済になって、技術開発と相まって、経済発展が可能になったのが経済の歴史です。

金利は経済活動の成果の健全な所得(インカムゲイン)です。金利が確り機能しないと資本主義はゼロサムゲームの「キャピタルゲイン」指向のマネー資本主義に堕します。 日本は、「39,000円・40,000円」を目指すより、1%でも高い実質経済成長を目指しましょう。株価は後からついて来ます。


政治家は「嘘を言わない」を社会常識にしよう

2024年02月19日 15時45分00秒 | 経済

政治改革が必要という意見は日本中の至る所から聞こえて来るようです。国会中継を見ていても、論争をしているのはパーティーで集めた金がどうなったのかという事のせめぎ合いで、どう見ても、国民のための政治で論議をしているとは思われないような事ばかり映っています。

国民にとって大事なことは国会ではなく、閣議でどんどん決まっているようで、集団的自衛権から最近は武器輸出が可能になるという事態まで日本は変わりつつあります。

さすがに公明党が、武器輸出が人間の殺傷に繋がることは問題ではないかと異議を唱え、与党内でも歩調が乱れて来たようです。

このブログでも、経済政策や防衛政策といった国民にとっての重要問題は、見ていると大体アメリカの望むように動いているようで、多くの場合国民はその結果への対応対に苦労するのだと書いてきました。

国会で議論している事は、そうした国民のための議論ではなく、政府の許認可の仕方やカネの使い方がおかしいといったことが多く、経済社会政策などは「一億総活躍」とか「新しい資本主義」とかスローガンばかりで中身が不明のものが多く、与野党一致するのは、補助金や給付金のバラマキで、財源は赤字国債といった程度というような感じです。

あとは旧統一教会や、パーティー券の売り上げ代の裏金化といった、政権維持のための努力が裏目に出て野党に追及されるといったところでしょうか。

自伝を書いた本を何千万円も買い上げて配布したのが文書費だというのが「裏金の正しい使い道」といった議論に、国民は呆れるばかりでしょう。

こんな問題を1つひとつ正して行くのは大変なことですから、何かもっと簡単な政界浄化、考えてみますと、こんなのはどうでしょうかという案が浮かんできます。

「国会答弁で嘘を言ったら議員失格」というのはどうでしょうか。安倍元総理は息を吐くように嘘を言うといわれましたが、在任期間は史上最長でした。

こんな事から、国民も、嘘が悪いのは「証人喚問で偽証罪」があるだけで、それ以外では嘘を言ってもいいんだ、と思って仕舞っているようです。

こういう安易な状況が政治家の言動を堕落される原因になっている可能性は十分ですから、「嘘を言ったら議員失格」などというそんな法律は出来っこない、などと言わずに、真面目な国会議員何人でも集まって「我々の在任中にやる」と言えば、国民の大多数は賛同して支援するでしょう。

法律がすぐに出来なくても、そういう真面目な国会議員頑張っているということが広く知られれば、メディアが「だれだれがこういう嘘を言った」と確証を挙げて報道すれば、次の選挙で当選は難しくなるでしょう。

議員になったら公式の場で嘘は言えないものなのだというのが、広く国民の常識となるような社会を作れば、民主主義社会は一段上の優れた社会に進化するのではないでしょうか。

日本なら出来そうな気がするのですが・・・。