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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

株主名簿記載事項証明書

2006-06-10 00:16:19 | 会社法(改正商法等)
 会社法の下で、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する(会社法第218条第1項)会社が増えているようである。

 この「株券発行会社でない株式会社」の株主は、株式会社に対し、株主名簿記載事項証明書の交付を請求することができる(第122条第1項)。しかし、株主名簿記載事項証明書のブランクフォーム等で公表されているものは、皆無に近い。わずかに、改正前ではあるが、拙筆である共著「会社公告の手続と文例」(新日本法規)(2005年9月刊)があるぐらいである。

 会社法下の株主名簿の記載事項は、第121条で法定されている。したがって、通常は、

①譲渡人である株主の氏名又は名称及び住所(同条第1号)
②譲渡人である株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)(同条第2号)
③譲渡人である株主が株式を取得した日(同条第3号)

を記載し、末尾に「上記は当社の株主名簿に記載されている事項であることを証明する。」旨を付記して、証明年月日と代表取締役の署名又は記名押印(第122条第2項)を施せば足りる。株主名簿管理人を置く株式会社は、株主名簿管理人が委託を受けて行う(第123条)。


 問題は、株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録(いわゆる名義書換)が第三者対抗要件である(第130条第1項)にもかかわらず、優先劣後を公的に証明する制度がないことである。「株券発行会社でない株式会社」である非上場企業の株式を譲受ける際には、株券が存しないため、株主名簿記載事項証明書の交付を受けて、譲渡人が株主であることを確認し、株式譲渡契約を締結することとなる。しかし、会社に株主名簿記載事項の記載又は記録を請求したときに、その「請求」が会社に到達した時点と二重譲渡による他の株主名簿記載事項の記載又は記録の請求が会社に到達した時点との優先劣後を証明するのは発行会社の手に委ねられるのである。100%の公正は保てないであろう。旧有限会社にも同様の問題はあったのであるが、出資持分の譲渡がほとんど行われない有限会社と一律には論じられない。証明書の発行・受領、決済及び株主名簿記載事項の記載又は記録の請求を同時に行うか、または、決済の前に株主名簿記載事項の記載又は記録の仮請求を行う等、発行会社に株式譲渡の事実を事前に認識させておくような手続が要求されるのではないだろうか?

 もっとも、当該会社が「公開会社でない株式会社」(いわゆる株式譲渡制限会社)であれば、取締役会又は株主総会等の承認(第136条)を得ての決済となるので、このような心配は不要であり、非上場の公開会社(第2条第5号)において問題となりうるものである。
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