司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

継続会の開催と取締役等の任期の問題

2020-04-16 09:20:58 | 会社法(改正商法等)
 コメント欄の御質問を受けて。

 大多数の株式会社の定款には,定番のように,「定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集する」旨が定められている。したがって,「定款に定められた基準日から3か月を経過した後に定時株主総会が開催される場合」は,株主総会の招集の手続が定款に違反することになり,株主総会の決議の取消事由となる(会社法第831条第1項第1号)という疑問があったが,法務省の最近のQ&A等は,「天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときは,定款違反にならない」旨を明確にしたものである。

 また,上記定款の定めがあって,取締役等が定時株主総会の終結の時に任期満了する予定である場合に,「定款に定められた基準日から3か月を経過した後に定時株主総会が開催される」ときは,事業年度の終了後3か月の期間の経過によって,当該取締役等は,任期が満了して権利義務承継者となり,取締役等の変更の登記においては,同じ者が再任された場合であっても,「退任」&「就任」となる。退任日は,「事業年度の終了後3か月の期間満了の日」として登記しなければならない,というのが従来からの登記実務である。

※ 法務省の最近のQ&Aは,「改選期にある役員等の任期については,定時株主総会を開催することができない状況が解消された後合理的な期間内に開催された定時株主総会の終結の時までとなる・・・当初予定していた時期(6月末)に定時株主総会を開催することができず,令和2年7月20日に開催した場合,当該定時株主総会において再任した役員についてする役員の変更の登記の登記原因は,「令和2年7月20日重任」となる」という考え方を示している。

cf. 令和2年4月13日付け「法務省,新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合の役員の任期に関するQ&Aを公表」

 例えば,定時総会を令和2年6月29日,その継続会を同年7月29日に開催するという場合,先の総会に役員選任議案を付議せずに,継続会で決議した場合には,同じ者が再任されるときであっても,上記の理により,権利義務承継の状態が生じ,「令和2年6月30日退任」&「令和2年7月29日就任」という登記がされることになる。

 しかし,先の総会で役員選任議案を決議したときは,後任者の就任の日を令和2年7月1日と設定することによって,権利義務承継の状態を生じさせることなく,「令和2年7月1日重任」という登記をすることができる。

 なお,上記3か月云々の定款の定めがない株式会社(持株会社の100%子会社においては,あり得るであろう。)にあっては,同様に継続会を開催した場合であっても,「令和2年7月29日重任」となる。

 というわけで,コメント欄の御質問の件については,大丈夫である。
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1 コメント

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ありがとうございました (なが~い)
2020-04-16 23:45:22
企業サイドのニーズとしては、7月1日に代表取締役を変更したい、7月1日に新任者を就任させたい、など派生問題がいろいろありそうに思います。
私も、もう少し論点を整理してみます。
ありがとうございました。
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