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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

親子逆転の株式交換

2011-08-15 16:43:53 | 会社法(改正商法等)
 月刊登記情報2011年1月号に,「登記官の目『疑問?奇問?愚問?』」(122頁)があり,「会社の親子関係が逆転する株式交換の可否について」が論じられている。

 現在,親子関係にある株式会社が株式交換によって,親会社が株式交換完全子会社となり,子会社が株式交換完全親会社となる株式交換は可能か,その場合,子会社が親会社の株式を取得することができないとする会社法第135条第1項等との関係は,どうかというものである。

 ただし,この論稿は,

(1)株式交換後,子会社(※株式交換完全子会社=元親会社)となる株式会社が親会社(※株式交換完全親会社=元子会社)となる株式会社の株式を株式交換前から保有している場合までも禁止されている訳ではない。
(2)株式交換によって親会社(※株式交換完全親会社=元子会社)の株式を取得するのは子会社(※株式交換完全子会社=元親会社)自体ではなく,子会社(※株式交換完全子会社=元親会社)の株主である。

と結論付けをしている(括弧内は,私の注記である。)。

 原文どおり(括弧書きをスルーして)読めば,会社法第135条第1項等との関係を論じているようであるが,括弧内の語に置き換えて読むと,当たり前の話で,何の結論も導き出してはおらず,意味不明である。


 実例としては,次のものがある。

○ ウェルネット株式会社 & 株式会社一 たかはし(平成21年6月)
http://www.well-net.jp/ir/ir_pdf/kabushiki.pdf

○ 株式会社みずほフィナンシャルグループ & 株式会社みずほホールディングス(現在,株式会社みずほフィナンシャルストラテジー)(平成15年3月)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97

○ 株式会社ティーアンドシー・ホールディングス(現在,株式会社T&Cホールディングス) & 株式会社トレーダーズ・アンド・カンパニー(平成13年9月)
http://www4.atwiki.jp/sysd/pages/2845.html


 理屈付けとして,当初は,『株式交換は,完全子会社となる会社(元親会社)の行為であり,完全親会社となる会社(元子会社)は,株式交換契約を締結するものの,「株式交換をする」わけではなく,元親会社がその発行済株式の全部を元子会社に取得させることに尽きるものである,したがって,子会社が親会社株式を取得する行為をしたのではなく,親会社が子会社に取得させる行為をした,であるから,会社法第135条第1項の規定にはひっかからない,ということではないか』などと屁理屈を考えたりしたが・・。

cf. 相澤哲編著「論点解説 新・会社法」(商事法務)Q.899「株式交換とは,何か。」

 会社法の法文からは,略式交換に関する第796条第1項本文の規定は,親子逆転の株式交換を当たり前のように許容しているようである。

 (吸収合併契約等の承認を要しない場合等)
第796条 前条第1項から第3項までの規定は、吸収合併消滅会社、吸収分割会社又は株式交換完全子会社(以下この目において「消滅会社等」という。)が存続株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併消滅株式会社若しくは株式交換完全子会社の株主、吸収合併消滅持分会社の社員又は吸収分割会社に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続株式会社等の譲渡制限株式である場合であって、存続株式会社等が公開会社でないときは、この限りでない。
2~4 【略】

 上記は,「株式交換完全子会社が株式交換完全親会社の特別支配会社である場合(株式交換完全親会社の総株主の議決権の10分の9以上を株式交換完全子会社及びその完全子会社等が有している場合。)には,株式交換完全親会社(被支配会社)において,株主総会の決議を要しない」という趣旨だからである。

 逆さ合併があるように,「逆さ株式交換」があってもよいということか。

 そもそも,「親会社株式の取得禁止」の立法趣旨は何かを考えると,自己株式の取得規制の潜脱防止である。

 設示のような株式交換が実施されると,親子関係が逆転してしまうため,会社法が予定した「禁止すべき場合」(自己株式の取得規制の潜脱行為)には該当しない,というのが,最も合点が行く根拠付けなのかもしれない。

 株式交換後には,株式交換完全子会社が株式交換完全親会社の株式を保有している状態が生ずるが,この点に関しては,上記の論稿の結論(1)のとおりである。

 で,会社法第135条第2項の規定により,株式交換完全子会社は,相当の時期にその有する株式交換完全親会社株式を処分しなければならない,ということで,おしまい。
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1 コメント

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Unknown (charaneko)
2011-08-16 14:20:56
内藤先生、このたびは詳細な解説をいただき、ありがとうございました!
略式株式交換のことは、全く思いつきませんでした。親会社株式の取得規制のところばかり気にしていましたので。。。(~_~;)
やっぱり、広い視点を持つことが重要ですね。勉強になりました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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