コメント欄での御質問を受けて。
Q.管轄外への本店移転のケースで,旧所在地を管轄する登記所に印鑑を提出していた会社が,引き続き新所在地を管轄する登記所においても印鑑を提出することとする場合,どのような手続になるのか。
A.印鑑の提出については,従来どおり(改正前商業登記法第51条第1項後段)本店移転の登記の申請と同時に旧所在地を管轄する登記所を経由してすることも,登記完了後に新所在地を管轄する登記所に対してすることもできると考えられる。
ただし,本店移転の登記について,本人申請であれば書面で申請をする場合,代理人による申請であれば書面の委任状を添付する場合には,印鑑の提出を同時に経由してすることが必須である(新規則第35条の2)。同時経由でない場合は,本店移転の登記について,本人申請であればオンライン申請をすること,代理人による申請であれば電子委任状を添付すること(当該代理人が書面で申請をするか,オンライン申請をするかは問わない。)が要件となる。
【解説】
令和元年改正会社法の施行に伴う整備法により,商業登記法第51条第1項後段が削除される。これにより,印鑑の提出方法は如何というのが御質問の趣旨である。確かに,この点については,商業登記規則改正案においても特段の手当がされない方向であるようだ。
今般の商業登記法第20条の削除により印鑑の提出義務が廃止され,商業登記法及び同規則の関連義務規定が軒並み廃止される運びであることから,管轄外への本店移転の登記の申請をする場合においても,新所在地を管轄する登記所にする印鑑の提出についても同時経由を要しないとされたものである。「同時経由」の義務付けの廃止である。
義務付けの廃止とはいっても,本店移転の登記について,本人申請であれば書面で申請をする場合,代理人による申請であれば書面の委任状を添付する場合には,印鑑の提出を同時に経由してすることが必須である(新規則第35条の2)。
管轄外への本店移転の登記の申請と同時に印鑑の提出をしないことは,いわば,そのタイミングで,印鑑の廃止の届出(規則第9条第7項前段)をするのと同じ意味合いを持つことになる。ただし,本店移転の登記について,本人申請であればオンライン申請をすること,代理人による申請であれば電子委任状を添付すること(当該代理人が書面で申請をするか,オンライン申請をするかは問わない。)が要件となる。
実務的には,従来どおり,登記の申請と同時に経由して提出するケースが通常であろう。
しかし,改正規則は,同時に経由して提出することを義務付けていないことから,上記要件を満たす場合には,本店移転の登記の完了後の適宜の時期に,新所在地を管轄する登記所に対して直接印鑑の提出をすることができることになると考えられる。この場合には,もちろん原則どおり,印鑑届書には,個人実印を押印して,市町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければならない(規則第9条第5項柱書本文)。
ところで,商業登記法第52条第2項の「並びに同項の印鑑」は,削除漏れである。「同項」とは,「第51条第1項」を意味するが,改正により規則第51条第1項中「印鑑」の文字は存しないことになるからである。嗚呼・・・。
Q.管轄外への本店移転のケースで,旧所在地を管轄する登記所に印鑑を提出していた会社が,引き続き新所在地を管轄する登記所においても印鑑を提出することとする場合,どのような手続になるのか。
A.印鑑の提出については,従来どおり(改正前商業登記法第51条第1項後段)本店移転の登記の申請と同時に旧所在地を管轄する登記所を経由してすることも,登記完了後に新所在地を管轄する登記所に対してすることもできると考えられる。
ただし,本店移転の登記について,本人申請であれば書面で申請をする場合,代理人による申請であれば書面の委任状を添付する場合には,印鑑の提出を同時に経由してすることが必須である(新規則第35条の2)。同時経由でない場合は,本店移転の登記について,本人申請であればオンライン申請をすること,代理人による申請であれば電子委任状を添付すること(当該代理人が書面で申請をするか,オンライン申請をするかは問わない。)が要件となる。
【解説】
令和元年改正会社法の施行に伴う整備法により,商業登記法第51条第1項後段が削除される。これにより,印鑑の提出方法は如何というのが御質問の趣旨である。確かに,この点については,商業登記規則改正案においても特段の手当がされない方向であるようだ。
今般の商業登記法第20条の削除により印鑑の提出義務が廃止され,商業登記法及び同規則の関連義務規定が軒並み廃止される運びであることから,管轄外への本店移転の登記の申請をする場合においても,新所在地を管轄する登記所にする印鑑の提出についても同時経由を要しないとされたものである。「同時経由」の義務付けの廃止である。
義務付けの廃止とはいっても,本店移転の登記について,本人申請であれば書面で申請をする場合,代理人による申請であれば書面の委任状を添付する場合には,印鑑の提出を同時に経由してすることが必須である(新規則第35条の2)。
管轄外への本店移転の登記の申請と同時に印鑑の提出をしないことは,いわば,そのタイミングで,印鑑の廃止の届出(規則第9条第7項前段)をするのと同じ意味合いを持つことになる。ただし,本店移転の登記について,本人申請であればオンライン申請をすること,代理人による申請であれば電子委任状を添付すること(当該代理人が書面で申請をするか,オンライン申請をするかは問わない。)が要件となる。
実務的には,従来どおり,登記の申請と同時に経由して提出するケースが通常であろう。
しかし,改正規則は,同時に経由して提出することを義務付けていないことから,上記要件を満たす場合には,本店移転の登記の完了後の適宜の時期に,新所在地を管轄する登記所に対して直接印鑑の提出をすることができることになると考えられる。この場合には,もちろん原則どおり,印鑑届書には,個人実印を押印して,市町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければならない(規則第9条第5項柱書本文)。
ところで,商業登記法第52条第2項の「並びに同項の印鑑」は,削除漏れである。「同項」とは,「第51条第1項」を意味するが,改正により規則第51条第1項中「印鑑」の文字は存しないことになるからである。嗚呼・・・。
やはり、商業登記法52条2項は削除漏れですよね。
何かしら通達が出て、そこで触れられるとよいのですが。
質問が連続となってしまいましたが、それぞれ詳しい解説をありがとうございました。
「同時経由でない場合は,本店移転の登記について,本人申請であればオンライン申請をすること,代理人による申請であれば電子委任状を添付すること(当該代理人が書面で申請をするか,オンライン申請をするかは問わない。)が要件となる。」旨を追記しました。
それにしても、印鑑の提出が任意となると、書面申請の場合とフルオンラインで分けて考えないといけないのでちょっと面倒ですね。委任状も書面で出すのか電子委任状にするのかで代わりますし。
個別改正だと経過措置規定などが改正されず貸家組合などでは押印が継続することになるがどうだろうか。