いわゆる「みなし解散」の登記がされて長年が経った後,法定清算人の登記を申請する必要が生じた場合,併せて監査役の変更の登記もしなければならない。その際,登記されている監査役の在任当時,監査役の法定任期がどうであったのかを理解しておく必要がある。以前も取り上げたネタであるが,今回は,任期が1年であった昭和25年改正以降まで遡って取り上げ,整理をしてみた。
1.「任期1年」の時代
昭和25年商法改正(昭和26年7月1日施行)後,昭和49年改正前商法下の監査役の任期は,「1年を超ゆることを得ず」(同商法第273条)であった。
(監査役の任期)
第273条 監査役の任期は1年を超ゆることを得ず
※ 原文は,カタカナである。以下平成17年改正前商法下において同じ。
2.「任期2年」の時代
昭和49年商法改正後,平成5年改正前商法下の監査役の任期は,「就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄」(同商法第273条第1項)であった。
(監査役の任期)
第273条 監査役の任期は就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄とす
2 最初の監査役の任期は前項の規定に拘らず就任後1年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄とす
3 前二項の規定は定款を以て任期の満了前に退任したる監査役の補欠として選任せられたる監査役の任期を退任したる監査役の任期の満了すべき時迄と為すことを妨げず
※ 第2項のルールは,会社法施行に際して廃止された。
昭和49年改正の際,次の経過措置が置かれた。
附則
(監査役に関する経過措置)
第7条 この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役で,この法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものに関しては,この法律の施行後も,なお従前の例による。
2 前項の定時総会の終結の際現に在任する監査役は,同項の定時総会の終結と同時に退任する。
第273条の規定の施行期日は,平成49年10月1日である。
したがって,例えば,3月決算の株式会社においては,施行後最初に到来する決算期(昭和50年3月期)に関する定時総会(昭和50年6月)の終結の時に,監査役は一斉に退任となり,その後に就任する監査役から任期が2年となった。
3.「任期3年」の時代
平成5年商法改正後,平成13年改正前商法下の監査役の任期は,「就任後3年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄」(同商法第273条第1項)であった。
平成5年改正の施行期日は,平成5年10月1日である。
平成5年改正の際,次の経過措置が置かれた。
附則
(監査役の任期に関する経過措置)
第4条 この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役でこの法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものの任期に関しては,この法律の施行後も,なお従前の例による。
したがって,例えば,3月決算の株式会社においては,施行後最初に到来する決算期(平成6年3月期)に関する定時総会(平成6年6月)の終結後に就任する監査役から任期が3年となった。
4.「任期4年」の時代
平成13年改正商法(法律第149号=平成14年5月1日施行)により,「就任後4年内ノ最終ノ決算期ニ関スル定時総会ノ終結ノ時迄」(平成17年改正前商法第273条第1項)とされた。
その際,次の経過措置が置かれた。
附則
(監査役の任期に関する経過措置)
第7条 この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役でこの法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものの任期に関しては,この法律の施行後も,なお従前の例による。
したがって,例えば,3月決算の株式会社においては,施行後最初に到来する決算期(平成15年3月期)に関する定時総会(平成15年6月)の終結後に就任する監査役から任期が4年となった。
なお,3月決算の株式会社において,平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役の任期は,上記改正附則第7条により,「就任後3年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄」となる。すなわち,平成18年3月期に関する定時総会(平成18年6月)の終結の時までである。
5.「任期最長10年」の時代
平成18年5月1日,会社法が施行されて,監査役の任期は,「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法第336条第1項)とされた。また,最長10年とすることができるものとされた(同条第2項)。
(監査役の任期)
第336条 監査役の任期は,選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は,公開会社でない株式会社において,定款によって,同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
3・4 【略】
その際,次の経過措置が置かれた。
整備法
(取締役等の任期に関する経過措置)
第95条 この法律の施行の際現に旧株式会社の取締役,監査役又は清算人ある者の任期については,なお従前の例による。
よって,上記「平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役」は,やはり平成18年6月開催の定時総会の終結の時に任期満了となりそうである(ただし,いわゆる「公開小会社」においては,平成18年5月1日に任期満了となったので,それ以外の株式会社の場合である。)。
しかし,いわゆる「解凍理論」により,「公開会社でない株式会社」が会社法施行後に監査役の任期に関する定款の変更(例えば,「選任後10年以内」とする等)を行えば,会社法施行の際現に旧株式会社の監査役である者の任期も,「なお従前の例による」が解凍されて,「選任後10年以内」に伸長することができると解された。
したがって,3月決算の株式会社において,平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役の任期が,極端な話ではあるが,平成25年3月決算期に関する定時株主総会(平成25年6月)の終結の時までである,というようなことがあり得る。
1.「任期1年」の時代
昭和25年商法改正(昭和26年7月1日施行)後,昭和49年改正前商法下の監査役の任期は,「1年を超ゆることを得ず」(同商法第273条)であった。
(監査役の任期)
第273条 監査役の任期は1年を超ゆることを得ず
※ 原文は,カタカナである。以下平成17年改正前商法下において同じ。
2.「任期2年」の時代
昭和49年商法改正後,平成5年改正前商法下の監査役の任期は,「就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄」(同商法第273条第1項)であった。
(監査役の任期)
第273条 監査役の任期は就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄とす
2 最初の監査役の任期は前項の規定に拘らず就任後1年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄とす
3 前二項の規定は定款を以て任期の満了前に退任したる監査役の補欠として選任せられたる監査役の任期を退任したる監査役の任期の満了すべき時迄と為すことを妨げず
※ 第2項のルールは,会社法施行に際して廃止された。
昭和49年改正の際,次の経過措置が置かれた。
附則
(監査役に関する経過措置)
第7条 この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役で,この法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものに関しては,この法律の施行後も,なお従前の例による。
2 前項の定時総会の終結の際現に在任する監査役は,同項の定時総会の終結と同時に退任する。
第273条の規定の施行期日は,平成49年10月1日である。
したがって,例えば,3月決算の株式会社においては,施行後最初に到来する決算期(昭和50年3月期)に関する定時総会(昭和50年6月)の終結の時に,監査役は一斉に退任となり,その後に就任する監査役から任期が2年となった。
3.「任期3年」の時代
平成5年商法改正後,平成13年改正前商法下の監査役の任期は,「就任後3年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄」(同商法第273条第1項)であった。
平成5年改正の施行期日は,平成5年10月1日である。
平成5年改正の際,次の経過措置が置かれた。
附則
(監査役の任期に関する経過措置)
第4条 この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役でこの法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものの任期に関しては,この法律の施行後も,なお従前の例による。
したがって,例えば,3月決算の株式会社においては,施行後最初に到来する決算期(平成6年3月期)に関する定時総会(平成6年6月)の終結後に就任する監査役から任期が3年となった。
4.「任期4年」の時代
平成13年改正商法(法律第149号=平成14年5月1日施行)により,「就任後4年内ノ最終ノ決算期ニ関スル定時総会ノ終結ノ時迄」(平成17年改正前商法第273条第1項)とされた。
その際,次の経過措置が置かれた。
附則
(監査役の任期に関する経過措置)
第7条 この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役でこの法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものの任期に関しては,この法律の施行後も,なお従前の例による。
したがって,例えば,3月決算の株式会社においては,施行後最初に到来する決算期(平成15年3月期)に関する定時総会(平成15年6月)の終結後に就任する監査役から任期が4年となった。
なお,3月決算の株式会社において,平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役の任期は,上記改正附則第7条により,「就任後3年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時迄」となる。すなわち,平成18年3月期に関する定時総会(平成18年6月)の終結の時までである。
5.「任期最長10年」の時代
平成18年5月1日,会社法が施行されて,監査役の任期は,「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法第336条第1項)とされた。また,最長10年とすることができるものとされた(同条第2項)。
(監査役の任期)
第336条 監査役の任期は,選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は,公開会社でない株式会社において,定款によって,同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
3・4 【略】
その際,次の経過措置が置かれた。
整備法
(取締役等の任期に関する経過措置)
第95条 この法律の施行の際現に旧株式会社の取締役,監査役又は清算人ある者の任期については,なお従前の例による。
よって,上記「平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役」は,やはり平成18年6月開催の定時総会の終結の時に任期満了となりそうである(ただし,いわゆる「公開小会社」においては,平成18年5月1日に任期満了となったので,それ以外の株式会社の場合である。)。
しかし,いわゆる「解凍理論」により,「公開会社でない株式会社」が会社法施行後に監査役の任期に関する定款の変更(例えば,「選任後10年以内」とする等)を行えば,会社法施行の際現に旧株式会社の監査役である者の任期も,「なお従前の例による」が解凍されて,「選任後10年以内」に伸長することができると解された。
したがって,3月決算の株式会社において,平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役の任期が,極端な話ではあるが,平成25年3月決算期に関する定時株主総会(平成25年6月)の終結の時までである,というようなことがあり得る。