上場企業が子会社を吸収合併する場合に,当該子会社が債務超過であるときで,簡易合併によりたい場合には,
(1)債権放棄又は増資により,資産超過にする。
(2)資産超過となっても,抱き合わせ株式消滅損が生ずるときは,減損処理をして,特別損失を計上する。
という手順を踏む必要があると考えられていた。
cf. 平成23年4月15日付け「簡易合併の可否」
しかし,5年くらい前から,「債務超過額相当の貸倒引当金を計上していれば,合併差損は発生しない」という考え方の下に,吸収合併の手続が実行される事例が数多見受けられるようである。
例えば,
「なお、吸収合併消滅会社は債務超過となっておりますが、当社は当該債務超過額相当の貸倒引当金を計上しており、本合併の際に貸倒引当金を戻し入れることから合併差損は発生しないものと判断し、簡易合併をいたします」
というようなプレスリリースが散見されるようである。
cf. ローム株式会社
https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20200204456716&pid=140120200204456716
吸収合併消滅会社が債務超過である場合(会社法第795条第2項第1号),「差損」が生ずるものとして株主総会の決議が必要(会社法第796条第2項ただし書)であって,「債務超過額相当の貸倒引当金を計上していれば,合併差損は発生しない」という理屈は立たないはずである。
特段の公権解釈が示されているわけでもないようである。合併無効を招来しかねない重大な論点であり,疑義を呈しておく。
ところで,法務局HPの「商業・法人登記申請」に掲げられている登記申請書記載例(1-22)の「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」は,従来から「差損」を顧慮しない内容である。親子会社の吸収合併であれば,無対価であることから,この証明書を不要という取扱いを採っている商業登記所も少なくないようである。
cf. 1-22
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#1-22
商業登記所の審査で,「差損」の有無について,なぜノーチェックを貫いているのかが不可解である。
「差損」の有無は,株主総会の開催の要否に関わり,「差損」が生ずる場合に,株主総会の決議がなければ,合併無効という重大な結果を招く事項であるのだから,「差損が生じないこと」を「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」の記載事項とすべきであろう。
(1)債権放棄又は増資により,資産超過にする。
(2)資産超過となっても,抱き合わせ株式消滅損が生ずるときは,減損処理をして,特別損失を計上する。
という手順を踏む必要があると考えられていた。
cf. 平成23年4月15日付け「簡易合併の可否」
しかし,5年くらい前から,「債務超過額相当の貸倒引当金を計上していれば,合併差損は発生しない」という考え方の下に,吸収合併の手続が実行される事例が数多見受けられるようである。
例えば,
「なお、吸収合併消滅会社は債務超過となっておりますが、当社は当該債務超過額相当の貸倒引当金を計上しており、本合併の際に貸倒引当金を戻し入れることから合併差損は発生しないものと判断し、簡易合併をいたします」
というようなプレスリリースが散見されるようである。
cf. ローム株式会社
https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20200204456716&pid=140120200204456716
吸収合併消滅会社が債務超過である場合(会社法第795条第2項第1号),「差損」が生ずるものとして株主総会の決議が必要(会社法第796条第2項ただし書)であって,「債務超過額相当の貸倒引当金を計上していれば,合併差損は発生しない」という理屈は立たないはずである。
特段の公権解釈が示されているわけでもないようである。合併無効を招来しかねない重大な論点であり,疑義を呈しておく。
ところで,法務局HPの「商業・法人登記申請」に掲げられている登記申請書記載例(1-22)の「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」は,従来から「差損」を顧慮しない内容である。親子会社の吸収合併であれば,無対価であることから,この証明書を不要という取扱いを採っている商業登記所も少なくないようである。
cf. 1-22
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#1-22
商業登記所の審査で,「差損」の有無について,なぜノーチェックを貫いているのかが不可解である。
「差損」の有無は,株主総会の開催の要否に関わり,「差損」が生ずる場合に,株主総会の決議がなければ,合併無効という重大な結果を招く事項であるのだから,「差損が生じないこと」を「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」の記載事項とすべきであろう。