司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

改正医療法施行後の不動産登記事務の取扱いについて

2016-08-17 16:36:46 | 法人制度
 「医療法の一部改正に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)」も併せて発出され・・・るのでしょう,おそらく。

 以前,コメント欄で御指摘があった件を取り上げてみると,

 改正医療法が施行されると,医療法人と理事の利益相反取引については,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第84条が読み替えて準用される(医療法第46条の6の4)。

 したがって,不動産の所有権の移転等が医療法人と理事の利益相反取引に該当する場合には,社団である医療法人においても,財団である医療法人においても,理事会の承認が必要となり,不動産登記の申請書には,理事会議事録を添付しなければならない(不動産登記令第7条第1項第5号ハ)。この場合の理事会議事録については,原則として,出席した理事及び監事が記名押印しなければならない(医療法第46条の7の2第1項において読み替えて準用される一般社団法人及び一般財団法人に関する法律法第95条第3項)。

 問題は,役員に関する事項として登記簿に登記されるのは,理事長のみであることから,理事会議事録に記名押印する「出席した理事及び監事」について,どのように証明するのかである。

 おそらくは,「出席した理事及び監事」を選任した際の社員総会議事録又は評議員会議事録を添付することになるのであろう。就任後に辞任等で退任していることもあり得るので,「当法人において,現に在任している理事及び監事は,次のとおりである。」旨の理事長名の証明書も添付することになろうか。

 そもそも論から言えば,今回の改正がガバナンス強化にあることからすれば,役員に関する事項として理事及び監事の全員の氏名を登記事項とすればよかったのであるが。

 なお,医療法人においても,定款で理事会議事録に署名し,又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した理事長とする旨の定めがある場合にあっては,当該理事長及び出席した監事が記名押印するのみで足りる取扱いである(医療法第46条の7の2第1項において読み替えて準用される一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第95条第3項かっこ書)。

 また,定款の定めがあれば,書面決議が可能である(医療法第46条の7の2第1項において読み替えて準用される一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第96条)が,この場合は,議事録の作成に係る職務を行った理事のみが記名押印すればよい(不動産登記令第7条第1項第5号ハ,同第19条第1項)。監事が異議を述べなかった旨も明記しておく必要があると解される。

 なお書き以降については,改正法施行後に定款変更をする必要があり,監督官庁の認可を要するので,当分の間は,考慮する必要はないが。

 とまれ,通達が発出されたら,要確認ということで。

 一般社団法人等に関する不動産登記実務について,下記の書籍で解説しています。改正法施行後の医療法人に関する不動産登記実務についても参考になると思うので,ぜひ御覧ください。

cf. 共著「不動産登記の実務と書式(第3版)」(民事法研究会)2009年6月刊
http://www.minjiho.com/shopdetail/012001000005/
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