司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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「新基本民法7 家族編 -- 女性と子どもの法」

2015-01-03 02:45:17 | 家事事件(成年後見等)
大村敦志東京大学教授著「新基本民法7 家族編 -- 女性と子どもの法」(有斐閣)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641136946

 法学部生向けの教科書として書かれたものであるが,親族法における最新の動向が網羅されており,新書を読むようにさらりと通読することができる。お薦め。



 若干気になった点を挙げておくと,

○ 「実際には,親族の誰かが後見人等になることが多い(8割弱)。」(24頁)

 成年後見の申立件数として平成25年の数字が取り上げられているのだが,平成25年のデータによると,「8割弱」ではなく,下記のとおり「約4割」である。平成12年以来の総計でも,約66%である。


8 成年後見人等と本人との関係について
・ 成年後見人等(成年後見人,保佐人及び補助人)と本人の関係をみると,配偶者,親,子,兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約42.2%(前年は約48.5%)となっている。
・ 親族以外の第三者が成年後見人等に選任されたものは,全体の約57.8%(前年は約51.5%)であり,前年と同様,親族が成年後見人等に選任されたものを上回っている。その内訳は,弁護士が5,870件(前年は4,613件)で,対前年比で約27.2%の増加,司法書士が7,295件(前年は6,382件)で,対前年比で約14.3%の増加,社会福祉士が3,332件(前年は3,121件)で,対前年比で約6.8%の増加となっている。
・ 弁護士,司法書士及び行政書士の数値は,弁護士法人233件,司法書士法人197件及び行政書士法人27件をそれぞれ含んでいる。

cf. 平成26年11月3日付け「成年後見関係事件の概況」



○ 「約9万件の普通養子のうち,かなりの部分(約3分の1と言われる)が未成年養子であると言われている。それにもかかわらず,許可件数が1000件に過ぎないということは,未成年養子のほとんどすべてが連れ子養子であるということを意味している。」(157頁)
※ 許可件数=家庭裁判所縁組許可件数

 未成年養子においては,いわゆる相続税対策で,孫を養子にする等の「血縁養子」が約5分の1を占めているのだが・・・。

 未成年養子(約33%)=連れ子養子(約25%)+孫や甥,姪等の血縁養子(約7%)+他児養子(約1%)

 成年養子  67%
 連れ子養子 25%
 血縁養子   7%
 他児養子   1%  ※下記森口論文によるデータ

cf. 森口千晶一橋大学経済研究所教授『児童福祉としての養子制度を考える「成年養子大国・日本」と「子ども養子大国・アメリカ」の変遷を追う』
http://www.hit-u.ac.jp/hq/vol036/pdf/hq36_26-27.pdf

 とまれ,血族でも姻族でもない子を対象とする「他児養子」がわずか1%(約1000件)に過ぎないというのは,やや驚きの数字である。



○ 巻末に資料として,戸籍法上の届出用紙のサンプルが掲げられているのだが・・・「出生証明書」「養子縁組届」等で,誤植が多い。本文中と異なり,校正の目配りが足りなかった感。
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