司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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取締役会の決議の定足数算定の基準

2010-09-17 14:41:03 | 会社法(改正商法等)
 現存する取締役の員数が法令又は定款で定める取締役の最低数を下回っている場合の定足数の考え方は,次のとおりである。


 取締役会の決議の定足数算定の基礎となる取締役数は,原則として,現存する取締役の員数である。しかし,現存する取締役の員数が法令又は定款で定める取締役の最低数を下回っているときは,その最低限の員数が基準となる。

 取締役会設置会社においては,取締役は,3人以上でなければならない(会社法第331条第4項)ので,定款に特段の定めがなければ,現存する取締役の員数が法令で定める取締役の最低数(3人)を下回っているときは,「3人」が基準となる。

 定足数を充足するには,議決に加わることができる取締役の過半数が出席することを要する(会社法第369条第1項)から,ある議案に際して,特別利害関係を有する取締役が1人存するときは,「2人」が基準となり,過半数要件を満たすには,取締役2人が議決に加わる必要がある。

 したがって,取締役会設置会社において,例えば,取締役1人が死亡し,現存する取締役の員数が2人である株式会社の場合,取締役の利益相反取引の承認(会社法第365条第1項)を取締役会が行うことはできないことになる。

 株式会社の対応としては,以下のものが考えられる。

① 速やかに株主総会を開催して,取締役を補充選任し,取締役会が承認をする。
② 速やかに株主総会を開催して,定款の変更を行い,利益相反取引の承認を株主総会の権限とした後,株主総会が承認をする(取締役会設置会社の定めを廃止することも考えられる。)。
③ ①②がいずれも困難である場合には,一時取締役の職務を行うべき者の選任を裁判所に申し立て(会社法第346条第2項),選任を受けた後,取締役会が承認をする。
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