近年、若年層に広く認知されているヴィレッジ・ヴァンガードといえばオシャレな書籍店/雑貨店だが、中高年世代でジャズが好きな人たちにとってはヴィレッジ・ヴァンガードと言えばニューヨークの老舗ジャズクラブである。
日本のヴィレッジ・ヴァンガードは設立が1998年(平成10年)だが、本家ニューヨークの方は1935年(昭和10年)であり、あの名門レーベルのブルーノート創業の4年前である。なお、日本のヴィレヴァン創業者の菊地敬一氏は元々ジャズ好きであり、自分の店(書籍店)でジャズのライブをやりたいという夢があった。音響の関係でライブこそ断念したものの、店名やBGMにジャズを流すなどすることでジャズ的な雰囲気を残すようにしたということだ。
前述の創業者菊地氏が好きなアルバムにヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤がいくつかあるそうだが、例えばテナーサックスの大御所であるソニー・ロリンズの名盤である「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」(1957年11月3日録音)もその一つだ。このライブはコード(和音)楽器がいないピアノレスのトリオ(サックス、ベース、ドラム)での演奏である。ジョン・コルトレーンのグループでの演奏で有名なエルヴィン・ジョーンズ(Ds)との初共演が聴ける。コード楽器がいない…つまり和音が奏されないということはサックスのアドリブにとってはイマジネーションがより自由になる、ということでもある。この日のロリンズもエルヴィンも素晴らしいプレイをしており、永遠に色褪せない素晴らしいライブレコードである。
また、名ピアニストのビル・エヴァンスの名盤である「Sunday at the Village Vanguard」(1961/06/25録音)も菊地氏が好きなアルバムとのことだ。このときのエヴァンスのトリオにはあの名ベーシストのスコット・ラファロが在籍している。ラファロは若くして交通事故で亡くなってしまうが、エヴァンスのトリオ在籍時には数々のモダンで美しく、しかもイノベーティブな演奏を残している。
そして、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤と言えば、忘れてはいけないのがジョン・コルトレーンの2つのレコードだ。
一つは「Live At The Village Vanguard」(1961/11/2,3録音)であり、エリック・ドルフィーがバスクラリネットで参加したクインテットでの演奏である。1曲目の「Spiritual 」というタイトルにも表れているが、深い精神性を感じさせる演奏には普遍的な価値が感じられる。3曲目の「Chasin' The Trane」はずっと後の時代にチック・コリアのアコースティックバンドでも演奏されているが、曲自体はオーソドックスなブルース(キーはF)である。コルトレーンのアドリブもかなり自由に飛翔しているが、ここでマッコイ・タイナー(ピアノ)は故意に演奏(バッキング)をしていない。コードを鳴らさない方がサックスのアドリブがより遠くへ飛ぶことができるからである。ドラムでリズムを鼓舞するエルヴィン・ジョーンズの凄まじいグルーヴ感もあって曲の後半になると鳥肌が立つほどの盛り上がりを見せる。
ジョン・コルトレーンの傑作ライブアルバム「AT THE VILLAGE VANGUARD」ジャケット
もう一つは、「Live at the Village Vanguard Again!」(1966年5月28日録音)である。冒頭に掲げた画像がそのジャケットだ。メンバーはほとんど入れ替わっており、妻のアリス・コルトレーンがピアノ、もう一人のテナーサックスにファラオ・サンダースが入ったクインテットである。よりスピリチュアルな領域に入っている演奏になっている。なお、この時のヴィレッジ・ヴァンガード出演の2ヶ月後にコルトレーンはこのメンバーで最初で最後の来日を果たしている。コルトレーン自身は翌年(1967年)の7月に亡くなるが、その前年の演奏である。日本でもJR東海の「そうだ、京都へ行こう」CMで有名になった「My Favorite Things」も演奏している。ソプラノサックスで演奏されるが、コルトレーンが好んで演奏した曲の一つである。
もう一つのビレッジ・ヴァンガードでのライブ盤である「LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN!」
このニューヨークの老舗ジャズクラブであるヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤は数多い。「Live at the Village Vanguard」で検索すればAmazonでもYouTubeでも多くのライブ盤がヒットする。名演奏が生まれるジャズクラブ、それがヴィレッジ・ヴァンガードなのである。
ヴィレッジ・ヴァンガードの日曜日のマチネー(昼公演)を告知する新聞広告。時期的に1957~1958年頃と思われる。ジョン・コルトレーンがセロニアス・モンク・カルテットに加わって出演する、というものだが、今から見れば凄すぎて鳥肌が立つほどの組み合わせである。
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日本のヴィレッジ・ヴァンガードは設立が1998年(平成10年)だが、本家ニューヨークの方は1935年(昭和10年)であり、あの名門レーベルのブルーノート創業の4年前である。なお、日本のヴィレヴァン創業者の菊地敬一氏は元々ジャズ好きであり、自分の店(書籍店)でジャズのライブをやりたいという夢があった。音響の関係でライブこそ断念したものの、店名やBGMにジャズを流すなどすることでジャズ的な雰囲気を残すようにしたということだ。
前述の創業者菊地氏が好きなアルバムにヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤がいくつかあるそうだが、例えばテナーサックスの大御所であるソニー・ロリンズの名盤である「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」(1957年11月3日録音)もその一つだ。このライブはコード(和音)楽器がいないピアノレスのトリオ(サックス、ベース、ドラム)での演奏である。ジョン・コルトレーンのグループでの演奏で有名なエルヴィン・ジョーンズ(Ds)との初共演が聴ける。コード楽器がいない…つまり和音が奏されないということはサックスのアドリブにとってはイマジネーションがより自由になる、ということでもある。この日のロリンズもエルヴィンも素晴らしいプレイをしており、永遠に色褪せない素晴らしいライブレコードである。
また、名ピアニストのビル・エヴァンスの名盤である「Sunday at the Village Vanguard」(1961/06/25録音)も菊地氏が好きなアルバムとのことだ。このときのエヴァンスのトリオにはあの名ベーシストのスコット・ラファロが在籍している。ラファロは若くして交通事故で亡くなってしまうが、エヴァンスのトリオ在籍時には数々のモダンで美しく、しかもイノベーティブな演奏を残している。
そして、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤と言えば、忘れてはいけないのがジョン・コルトレーンの2つのレコードだ。
一つは「Live At The Village Vanguard」(1961/11/2,3録音)であり、エリック・ドルフィーがバスクラリネットで参加したクインテットでの演奏である。1曲目の「Spiritual 」というタイトルにも表れているが、深い精神性を感じさせる演奏には普遍的な価値が感じられる。3曲目の「Chasin' The Trane」はずっと後の時代にチック・コリアのアコースティックバンドでも演奏されているが、曲自体はオーソドックスなブルース(キーはF)である。コルトレーンのアドリブもかなり自由に飛翔しているが、ここでマッコイ・タイナー(ピアノ)は故意に演奏(バッキング)をしていない。コードを鳴らさない方がサックスのアドリブがより遠くへ飛ぶことができるからである。ドラムでリズムを鼓舞するエルヴィン・ジョーンズの凄まじいグルーヴ感もあって曲の後半になると鳥肌が立つほどの盛り上がりを見せる。
ジョン・コルトレーンの傑作ライブアルバム「AT THE VILLAGE VANGUARD」ジャケット
もう一つは、「Live at the Village Vanguard Again!」(1966年5月28日録音)である。冒頭に掲げた画像がそのジャケットだ。メンバーはほとんど入れ替わっており、妻のアリス・コルトレーンがピアノ、もう一人のテナーサックスにファラオ・サンダースが入ったクインテットである。よりスピリチュアルな領域に入っている演奏になっている。なお、この時のヴィレッジ・ヴァンガード出演の2ヶ月後にコルトレーンはこのメンバーで最初で最後の来日を果たしている。コルトレーン自身は翌年(1967年)の7月に亡くなるが、その前年の演奏である。日本でもJR東海の「そうだ、京都へ行こう」CMで有名になった「My Favorite Things」も演奏している。ソプラノサックスで演奏されるが、コルトレーンが好んで演奏した曲の一つである。
もう一つのビレッジ・ヴァンガードでのライブ盤である「LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN!」
このニューヨークの老舗ジャズクラブであるヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤は数多い。「Live at the Village Vanguard」で検索すればAmazonでもYouTubeでも多くのライブ盤がヒットする。名演奏が生まれるジャズクラブ、それがヴィレッジ・ヴァンガードなのである。
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ヴィレッジ・ヴァンガードの日曜日のマチネー(昼公演)を告知する新聞広告。時期的に1957~1958年頃と思われる。ジョン・コルトレーンがセロニアス・モンク・カルテットに加わって出演する、というものだが、今から見れば凄すぎて鳥肌が立つほどの組み合わせである。
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