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Something New.

下院から再出発?トランプ氏の動向

2021-07-06 02:00:20 | 国際
トランプ氏の近況と今後について、国際政治学者の藤井厳喜氏が解説しているので、その内容を中心にして紹介させていただく。

トランプ氏の今後の展望だが、非常に興味深い話が出てきた。トランプ氏が来年(2022年)の11月にアメリカ中間選挙の下院議員選挙に出馬するのではないか、という話が浮上してきたのである。(*1) そうは言っても、これはまだ一つの「話」でしかなく、正式な事案ではない。


トランプ氏は2024年の大統領選挙に出馬する意向を持っているが、大統領にまでなった人物が、なぜ今、下院議員なのであろうか。

アメリカの現状を見てみよう。

現在のアメリカとメキシコの国境は違法な移民がどんどん越境してきており、もはや国境としては崩壊しているような状況にある。これを何らかの方法で時間を巻き戻してトランプ時代のように国境管理をちゃんとしなければいけない。そして、アメリカ外交の現状は外交も総崩れのような状況で、経済政策もでたらめであり、やがて悪性インフレが起きてくると予想されるような状況である。

こういったものを建て直さなければいけない、ということなのだ。

このような状況下で「下院議員選挙に出る」というのはいったいどういうことなのだろうか。

もちろんだが、トランプ氏は「ただの下院議員」になるのではない。「下院議長になる」事がポイントである。下院議長、つまり「スピーカー・オブ・ザ・ハウス」になる、ということだ。

それはすなわち「バイデン政権に対する弾劾」をやり、そして予算の審議権を握って「悪い政策には予算を出さない」ということの運動をリードする、ということだ。いわば、反バイデンの立場で抵抗運動を押し進めるということである。単なる民間人でもなく大統領候補でもなく、下院議長という政府の大きな権力を握った立場でそれを押し進めることに意味があるのだ。

ちなみに、なぜ下院議長なのか、その理由を述べる。

アメリカの議会は上院と下院があるが、下院議員は全米で453人。上院議員は100人である。上院は一つの州で2人までしか選ばれない。同じ政治家と言っても上院議員の方が「格」は高くステータスがある。上院は元々セネットと呼ばれる。これは古代共和政ローマ時代 (紀元前6世紀〜) の「元老院 (ラテン語: Senatus)」という語に由来している。ローマの元老院になぞらえているくらいだから国家の中枢になる人たちが居る、という建前である。

ならば上院議長になった方が良いのではないか、と思われるだろうが、上院議長にはなれないのである。

なぜか。

上院議長というのはアメリカの副大統領が上院議長を兼ねる事になっているので、たとえトランプ氏が上院議員になったとしても上院議長にはなれないのである。

しかし下院ならば可能だ。下院議長は下院議員から選出されるので、これは多数議席を取った党の推薦する人物が下院議長になる…そういう仕組みだからである。

そして、下院議長になると「大統領弾劾裁判」を始められるのだ。

もう一つは、下院には「予算の先議権」があるということ。予算を主に下院で決めるということになっているのである。予算を握り、かつバイデンの過去の罪状と、大統領になって以降のことを暴いて追い込んでいくことができる…そういうことなのである。

弾劾裁判をやるだけでもバイデン政権は機能不全に陥るだろう。政権を機能不全に陥らせて、悪い政策を実行させないということが大きな眼目になるのだ。

「予算と弾劾権を手に入れる」…これが大きなポイントである。

そして大統領選挙だが、下院議長のまま大統領選挙に立候補しても全然構わないのである。下院議員でも上院議員でも現役議員のまま大統領選挙に立候補した人は過去に大勢いるし当選した人もいるのだ。


仮にトランプ氏が下院議員選挙に出馬するとすれば、フロリダ州あたりが可能性が高いと思われる。出馬すれば当選するだけではなく、トランプ氏自身が下院議員になるということで、全米の共和党の下院議員候補が一斉にエネルギーを得て勢いがつくことだろう。そうすると下院の圧倒的多数を2022年秋の中間選挙で押さえることができるだろう。

ただし、そうなるためには選挙制度をインチキができないように改正しておかなければならないだろう。民主党・リベラル勢力に依る先の大統領選挙でのインチキ工作はあまりにも酷いものがあった。陰謀云々ではない。証拠や証言も多数明らかにされており、厳然たる事実である。

トランプ氏自身が出馬するならば、上院も下院も共和党多数の議会になる可能性が高くなるであろう。

このように、中間選挙に対して単なる応援団として関わるのではなく、トランプ氏自身が出馬してくる可能性が出てきた…ということである。


これは一つの奇策といえば奇策ではあるが、それで2024年の大統領選挙に弾みが付くならば良い戦略と言えよう。





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(*1)
この話を最初に言い出したのは、ポール・べダート氏というジャーナリストである。トランプ氏に非常に近い人物である。彼はワシントン・エグザミナーに書いており、2021年4月5日号には「トランプにはこういう手がある」「やれば下院選挙で圧勝するだけでなくて、反転攻勢の良いチャンスになる」という趣旨の記事を執筆している。