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週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

思わぬ食い道楽の旅。

2017年03月26日 | ★江戸っ子エッセイ★




【肩並べ観覧車みて春感ず】哲露


 大阪淀屋橋で仕事を終え、チェックイン。

 梅田の阪急前でローカルの友人と待ち合わせた。

 予約を済ませていた熟成肉とイタリアンの店【ボノ】へ。

 飲み放題なので、まずはカールスバーグを。

 イタ飯の前菜って好きだ。







 生ハムのサラダに、インカのめざめ。

 どちらもスパークリングによく合う。

 お互い、アラフィフ。

 仕事終え、やや疲れ気味なので、話題もスローペース。

 だが、アルコールの消費ととも、徐々に元気を取り戻す。錯覚か!?






 カラスミのボンゴレが来たあたりで、あっしのお腹は満たされつつある。

 そこへ登場した、熟成肉。

 周りの人もよく食べること。

 みんな胃袋が大きいのね。

 男同士の話。

 悩みを相談されたが、同じような経験で返す。

 学生の友達ってこういうもの。







 ここに来て、話も盛り上がって来た。

 普段は会えない分、このまま別れがたくプラプラと。

 あっしはバーでいい気分だが、彼はまだ食えるとのこと。

 むしろお腹が空いたと。

 さすが年に何度もフルマラソンを走る男。

 そこで、アーケード街で見かけた看板に釣られ、ラーメン【2国】へ入る。

 彼だけ豚骨醤油ラーメンなどすすり、しっかりと炒飯まで食べ、わしは餃子を少しつまんでビールを飲んだ。

 それにしても、たいしたもんだ。

 酒飲みであり、健啖家である師匠を思い出す。

 この街で、戦時下、飢えを忍んだ体験が彼をそうさせたと思っている。

 友よ、仕事の帰り、おおきに。





 思わぬ、食い道楽の旅となった。

 この職業について、美味しいもん食べてんでしょとはよく言われる。

 こんな写真をアップしているとまさにその通りかも、と思う。

 なので、普段は質素におにぎりなどでランチをしてる。

 明日の朝は、京都へ。

 出張の旅はまだ続く。

  


レイパーカーJrを聴いて、メロウな夜

2017年03月12日 | ★江戸っ子エッセイ★




【悲しみも笑顔も聞きし花は咲く】哲露


 春めいてきたある夜。

 後輩の計らいでビルボード東京のLIVEにありつけた。

 「Woman Needs Love」がかかると、あの頃の匂いが蘇る。

 ディスコと呼ばれた箱が楽しかったあの時代。

 街の空気は、煌びやかで、穏やかで、優しい驕りの時代。 

 「ゴーストバスターズ」がかかると、厳格な家庭に育ち常に表情の硬かった友人が笑ったことを強く思い出す。 





 演奏が始まってから終始にこやかで、ユーモア溢れるレイ。

 バンドのメンバーもみんなイカす大人たちだ。

 客層はまた渋い紳士淑女たち。

 仕事帰りに、こうした楽しみを享受できる平和を想う。




 


 6年前。

 こんなことがあった。

 紙面からありえない戦慄が伝わってくる。

 あれから寄付と偽善、絆と分断、嘘と真実がせめぎ合う。

 そして、人々はいつの間にか日常に流され、見て見ぬ振りの無関心がはびこる。

 福島や被災地だけでなく、自分の日常と直結する政治にも無関心になりつつある。

 「慣らされる」、この真の怖ろしさを、欧米、中東、アジア、日本の現状を横目にひしひしと感じる。





 6年前には完成していなかったツリーに、人々は群がる。

 あの日も、花は咲いていた。





 目に見えないのは放射能だけでなく、慣らされて無関心になっていく無機質な心だ。

 何を知ろうとし、何を考えるか。

 行動より先にすることは山ほどある。

 現代は本当にメロウな夜を迎えているのか。

 現実を直視せよ。

 そう自分に問いかけ、今宵もまた酒精をすする。

 合掌。 


ああ、懐かしのメトロに乗って。

2017年02月12日 | ★江戸っ子エッセイ★




【地下街の煙の匂い枯れてなお】哲露


 浅草に暮らして○十年。

 幼い頃から慣れ親しんだ黄色の電車。

 毎週のように親に連れられ、銀座で映画を見たり、渋谷で人工の満天の星を眺めたりした。

 その帰り、浅草駅に近づきカーブを畝ると、地下鉄の電燈が一瞬切れる。

 幼心にずっと不思議だった。

 親に尋ねたこともあったかもしれないが、記憶の彼方だ。

 この時代のことは構想にあるが、まだ書けていない。

 メトロに乗ってなんて望郷薫らす映画もあったが、何と言っても浅草ノスタルジーの極め付けシネマは【異人たちの夏】に尽きる。

 片岡鶴太郎と秋吉久美子の昭和初期の親ヅラがなんともはまっていた。

 何度見ても発見のあるホラーであり、メランコリックでありながら、遥か遠いあの日を思い出すようで好きな作品だ。


 


 あの日の僕はどこに消え、いまの僕は何者になったのだろう。

 親父に手を引かれ、黄色の地下鉄に乗って出かける。

 それだけでエンターテイメントの入り口と思っていた。

 銀座のデパートにマクドナルドが出現した頃から、現代の凋落へつながる傾斜が引かれたのかもしれない。

 今や百貨店も風前の灯火。

 銀座の松坂屋も外国人向けのバスターミナルに変質する。

 変わることは時代の必然とはいえ、このスピードの速さに果たして人は付いていけるのだろうか。

 善か悪か。

 それは後世の人が考えること。

 わっしはそそくさと、地下街のソース焼きそばで一杯の酎ハイを引っ掛けるのみ。

 銀座線の旧1000形のお披露目。

 昭和世代には、ぜひこの機会にノスタルジーを味わってほしい。 

  


食と浮世絵のデジタルアートを体験

2017年01月29日 | ★江戸っ子エッセイ★




【蔦重の思いが動く絵の世界】哲露


 「食神さまの不思議なレストラン展」と「スーパー浮世絵 江戸の秘密展」が本日からスタートした。

 これは日本橋兜町・萱場町を文化で活性化させるプロジェクトの一環。

 古いオフィスビル一棟を、カナダの「モーメントファクトリー」が世界最高峰のデジタルアートで魅せる。

 私の会社もこのプロジェクトに参加しているため、前日の内覧会で体験してきた。






 すべて映像であるため、静止画で伝えるのはむずかしい。

 日本にはない基板が無数に置かれ吊るされ、体験したことのない映像が映し出される。

 体温に呼応して変化する光の粒が新鮮だ。

 巨大なごはん茶碗には200kgの米が入り、手を差し込むことができる。

 幼い頃米櫃に手を突っ込んで叱られたことが、ここでは単純に楽しめる。

 米を触ると、癒しの音の中、水田が優雅に波打つ。 

 実に不思議で、神秘的な体験だ。





 様々な食のデジタルアートの後は、出汁香るレストランが待っている。

 中東氏(野草一味庵「美山荘」)、村田氏(京料理・懐石料理「菊乃井」)、ジョエル・ロブション氏。

 錚々たる料理人が監修した和食が味わえるのだ。







 
 ふんわりとカニ餡をのせた稲庭うどん。

 具沢山のいなり寿司、山椒を効かせた玉子焼きをつまみに、辛口の酒をいただく。

 絶妙だったのが、甘酒。

 爽やかな米麹を、紫蘇、いちご、グレープフルーツの三種の味で楽しめる。

 これは旨い!

 こんな甘酒なら、往時を偲ばずとも現代の夏バテにちょうどいい。






 お披露目では、片岡愛之助氏と乃木坂46松村氏、若月氏が、デジタルアートの声として登壇。

 イベントに華を添える。

 食神さまに続いて、江戸の秘密展へ。





 新吉原の大門を潜ると、花魁道中に遭遇する。

 格子をぐるりと回る。

 360度、当時のスターである花魁が闊歩していく。





 魚河岸のある日本橋には、参勤交代の大名行列がこちらへ続いてくる。

 橋のたもとには、首が晒され、下の犬たちに、男女の心中を見てとれる。

 浮世絵に隠された符丁を読み解くのも一興だ。








 歌舞伎の天井桟敷、役者のブロマイド、版画の再現。

 浮世絵をスーパーデジタルで表現している。

 老若男女、国籍を超えて、誰もが一瞬で理解できる内容だ。

 江戸湾が広がる大海原では、広重やら北斎の世界が潮騒とともに大胆に迫ってくる。

 巨大なLEDが贅沢に使われている。

 隠し絵も用意され、こりゃあ飽きないわ。

 音と相まって、いつまでも見ていたい欲求にかられる。





 地元、大川では梅が紅い香りを振りまいている。

 梅は〜咲い〜たか、桜はまだかいな。

 あっしの仕事であるグルメサイトが監修し、トップシェフによるスイーツの販売も用意している。

 茅場町にはOLさんも多いが、甘いもんのお店が少ない。

 ミシュランの星を持つシェフのオリジナルスイーツは2月20日から始める。

 通常の「見る」だけの展示会でなく、「触る」「聞く」「嗅ぐ」「食べる」といった五感で楽しむ新しいアート展だ。

 この不思議で貴重な体験は春を跨ぐこの時期だけ。

 https://tabegamisama.com

 みなさん、お江戸日本橋をぶらりと渡ってはいかが。


2017年高校サッカー決勝戦

2017年01月15日 | ★江戸っ子エッセイ★




【成人になる前の汗芝を蹴る】哲露


 1月9日、埼玉スタジアム2002に向かった。

 第95回になる、高校サッカー選手権の決勝なのだ。

 昨年はKING KAZU、今年の顔は岡崎選手。

 気温はいつもより暖かい。





 浦和美園駅を降りて、楕円の競技場へ一直線に歩く。

 巨大な建物にありがちで、目の前にデンとあるのに、なかなかたどり着けない。

 ラスベガスに行った時も、あっちのホテル、こっちの劇場、そっちのカジノと遠かった。






 やはり広いし、天然芝の競技場は見るだけでも素敵だ。

 この日は、4万人以上の満員御礼。

 大学サッカーの決勝の閑散に比べて、人気のありようが伝わる。





 選手権の今年の歌は、家入レオが熱唱。

 心地よい声が、スタジアムに響き渡る。

 闘いの気分が盛り上がってきた。





 青森山田 vs 前橋育英。

 前半は、前橋優勢。

 パスも、ドリブルも上手いし、連携が取れて気持ちいい。

 ただ、決定力に欠けた。

 そうしてるうちに、青森が対策を立て直す。

 そして、1点、2点と入っていく。





 終わってみれば、青森の圧勝。

 大学選手権の日体大同様、大味な試合になってしまった。

 かつては、追いついての大逆転、もつれてPK戦が多かった。

 これはどうした傾向だろう。

 こういう結果だと、みている方はつまらない。

 圧倒的な格差。

 まるで今の社会を写したよう。

 会社は少しずつ慣れてきたが、何処も課題は山積みだ。

 とはいえ、刺激をいっぱいもらっているよ。

 高校生の汗、もっと感動をもらえるような試合が見たい。

 おっさんも、もう少し汗を流すことにしよう。
  

  


2017年の幕開け。

2017年01月04日 | ★江戸っ子エッセイ★





【陽を浴びて澄みし大気に並ぶ顔】哲露


 A Happy New Year ☆ 2017

 1月1日6時に目覚め、体をアップする。

 聖水を飲んで、いつもの隅田川RUNを開始する。

 胸のすくほど蒼い空を見上げれば、踏み出す足も軽やかになる。

 吸い込む大気はさほど凍てついてもいず優しい。

 いいスタートだ。





 江戸を戦火から救った立役者の一方、勝海舟が未来を指す。
 
 勝が、坂本が、山岡が闊歩した街に住まう。

 彼らは往時何を語り、何を思っていたものか。

 はて、我々はどこへ向かう。

 おいらはただ前を向くばかり。





 駒形橋で上がりかけた陽が、吾妻橋辺りで輝きを増す。

 欄干には人々が立ち並ぶ。

 老若男女、みんな笑顔で溢れる。

 そしておもむろに、スカイツリーの背後から後光が下町を照らしていく。

 歓声が上がり、シャッター音が鳴り止まない。

 2017年が明けたのだ。






 川沿いも、雷門も、笑顔で溢れている。

 初詣に夜通し行列の絶えない仲見世だが、ここらはいちばん空いている時。

 これから三が日は故郷の街に、世界中から観光と参拝の人々が集うのだ。一年中だけどね。

 おいらは、喧騒のわずかな合間を縫って走り抜ける。

 何処も、スマホを構えているから、ファインダーから逃れるのも忘れない。





 寝る前に、家族揃って氏神様である、熱田神社で初詣を済ませている。

 早朝は、浅草寺、浅草神社、浅間神社を巡り、身を清め、思うところを祈る。

 穏やかな朝だが、参拝で動きを止めると、途端に汗が冷却されて震えだす。





 知らんかった。

 浅間神社に、浅草富士が建っていた。

 いつの間に、びっくりぽんや。

 頂上に登り、わが街を眺めた。

 ヤッホー!






 たっぷりの昆布出汁、鶏肉、三ツ葉のあっさりとした雑煮が我が家流。

 おいらが一年に一度、餅を食う珍しい日。

 おせちもいいけど、あったかい汁が体内をゆくと温まる。

 わしも子どもたち、悩めるオトナたちの心がほっこりする物語を描きたいものだ。

 だけど、焦りは禁物。

 じっくり自分のペースで、一歩ずつ歩いていきますわ。

 元日は、恒例の映画の日。

 次回、感想を書いてみるつもりだす。

 みなさん、2017年もよろしゅうお頼み申し上げます。

 
 海光拝 


海辺に想いを馳せて。

2016年12月31日 | ★江戸っ子エッセイ★

 

 【万物のめぐみを浴びて事始め】哲露


 今日は大晦日。

 なまはげやら各地では風習の行事がおこなわれていることだろう。

 おいらの実家は下町で商売をしていたから、年末は大わらわだった。

 年越しの蕎麦は、出前を掻っ込むならわし。

 コンビニが出来てからそれもめっきりと。

 いずれ遠き思ひ出に過ぎない。

 そして、今年も湘南、師匠の地茅ヶ崎に何度も足を運ぶ。






 師走には、湘南国際マラソンがあり大磯を起点に、数年ぶりに走った。

 三月に行われる三浦と比して、この時期は温暖だから助かる。

 むしろランナーには暑いくらいで、目の前で倒れる人もいた。

 風もあるから脱水症かもしれない。

 天気は上々。

 海辺のRUNはなんと爽快なことか。

 いつか晩年はこの地で暮らすのもわるくない。







 友人夫妻とおきまりのご褒美で乾杯!

 茅ヶ崎まで出て正解。

 ザーサイだけでいけるが、餃子も炒め物も量もたっぷりと嬉しい。

 お店の名物という玉ねぎ炒めも、温かな接待もなかなかのもの。

 横濱屋さん、ごちそうさま。





 
 行く年来る年。

 切なさと儚さを感じつつ、気持ち新たに前に進もう。

 それが生まれ来るときから死に向かう生き物の定めなり。

 新年はどんな出会い、どんな発見が待っているだろう。

 まずは、今夜の蕎麦を何でシメるか。

 やっぱり鴨のセイロか。

 わしの干支の猿は去り、酉でござる。



 ご愛読のみなさま、拙いたわ言に一年お付き合いくださり感謝します。

 どうか良いお年をお迎えくださいませ。


酉の市。

2016年12月10日 | ★江戸っ子エッセイ★




【鳥居抜け黄金の餅に験担ぎ】哲露


 お日様の温さがありがたい冬真っ盛り。

 今年も酉の市をそぞろ歩く。

 幼い頃、普段クルマが占有する車道に、寝転んだり、「なんでも」という遊びができるのが嬉しかった。 

 景気が悪くとも、熊手を担ぐ主人の顔は晴れやかだ。

 眩ゆい灯りをゆく家族や若者たちが、どの露店を冷やかそうか思案しつつも皆笑顔。







 下町ローカルならではの賑やかさが、一服の清涼をもたらす。

 夜風は、二の酉、三の酉になるほど冷える。

 今年の暦は、二の酉までだから、火事が少ないと思うのも一興。 

 はてさて。



 


 植木市にも出ているタイラーメンのお母さん。

 着物姿が目の保養と思ったら、なんとインバウンドのアジア人。

 随分と国際的な街になったもんだ。 

 寒風吹きすさぶ中で、すするコメの麺に心もほっこり。

 看板通り、ここのスープはクセになる味なのだ。








 小さなお店から大企業、有名人やら政治家の先生方やら、我が倭人は縁起を担ぐ民族というのがよくみえる。

 あちらこちらから熊手を買い求める方が続く。

 シャンシャンシャン、と景気のいい三本締め。

 ああ、2016年も終わるのだな。


 


  転職した会社から青山墓地は、程よい散歩道。

 乃木神社も近いからこんな石碑も建っている。

 日の当たる場所で、弁当を食らうのもいいもんだ。

 怒涛の飲み会、覚えること多しで脳がフル回転している。

 茂木先生曰く、あえて体験しえない環境に身を置くことが、ボケの防止になるそうだ。

 アルコールで破壊される脳と、活性脳、どっちが勝つのか。

 そんなしょうもないことを考えつつ、今日も走る。

 今週も飲み会だらけだな。

 好きこそ物の上手なれ。

 気の合う仲間と飲む酒は、いつでも旨い。 

 さて、今宵も。 


時の過ぎゆくままに☆

2016年11月20日 | ★江戸っ子エッセイ★




 過ぎ去りし、10月某日。

 荒川を走る。

 吹く風は穏やかで、12年ぶりの有給休暇というのを楽しむ。

 実際、同僚や世間の皆さんは仕事している方がほとんどだから、心は休まっているようで休まらない。

 それでも、室内にいるよりはマシと、走ることにした。


【ぶつかって避けて走った秋の土手】哲露



 どこまでも真っ直ぐな道。

 走るようになって初めてフルマラソンを走ったのもこの荒川だった。

 6月という気候の初チャンレンジは、今思えば無謀のひと言。

 全身から塩が噴き出して結晶となり、炎天下なのに寒気がし、仕舞いには心臓がばくばくしていた。

 あれは、熱中症というやつなんだろう。

 それでも完走したら、それまで感じなかった別種の何かが見えた。

 あれから、何年経ったろう。





 貨物船の駅の名残か、国鉄のような案内看板が随所に立つ。

 江戸の頃は、千葉や全国からこの川を下り、上って荷が届いたという。

 まさに交通の要所だ。

 そんなことに思いを馳せて走る。

 晩秋の陽光だが、どこまでも優しい。





 ついに東京湾へ出る。

 遠くに見えるのは、葛西臨海公園の観覧車。

 川幅は優雅に広がり、潮の香りが鼻腔を刺激する。

 ああ、ここまでよく走ったなぁ。

 両手を広げ、胸いっぱいに潮風を吸い込んだ。





 一年ぶりに描いた小説世界では、主人公が荒川を走る。

 川沿いに野球場とサッカー場が上流まで続く道。

 土手には、犬を釣れる人、走る人、猛スピードでスポーツ自転車が過ぎ去る。

 まもなく日が沈む。

 ボールを蹴っている親子が微笑ましい。





 12年間走ってきた会社を辞めた。

 出版社に転職して20年以上、この業界に携わってきた。

 国内はもちろん、海外も単独で取材に飛び回った20代が懐かしい。

 スーパームーンから二日後。

 新しく勤め始めた会社の帰り、クリスマス色のツリーと屋形舟が祝福してくれた。

 版元を離れるのは、いい仲間と別れることでもある。

 一抹の寂しさはあるけど、前に進むと決めた。

 これからは、尊敬する兄貴とともに、グルメサイトを盛り上げていく。

 もうアラフィフ。

 気張り過ぎず、飄々と、柳のように生きていきたい。

 時の過ぎゆくままに。  


いざ貴船の納涼床へ

2016年10月27日 | ★江戸っ子エッセイ★




 嵐山つづき。

 祝って飲んで走った翌日の朝。

 旅館の朝飯を食らう。

 これぞ正しい日本の朝ごはん。

 鮭の干物、納豆、漬物、梅干し、がんもどき、温泉卵、白いご飯とお味噌汁。

 もはやいうことはない。

 しばし二人には広すぎる部屋で寛いでから、また渡月橋へ。


 
 


 レトロチックな車両に乗って、嵐山を発つ。

 バイバイ、嵯峨野よ。

 また逢う日まで。



 


 さらにローカル線叡山電鉄へ乗り込む。

 かねてから行ってみたかった貴船の納涼床。

 電車内では、岩手とコラボした写真コンテストが行われていた。

 南部鉄を使った風鈴は我が家にもある。

 見た目涼やかな江戸風鈴もいいが、澄んだ音色は南部鉄器にはかなわない。

 盆地の夏に涼感をもたらしてくれた。






 貴船口の駅を降りて歩く。

 男の旅は、なんといっても歩きなのだ。 

 川の瀬音をBGMに、ホタルの岩を通過する。


 


 見えてきた、きた。

 あれが夢にまでみた納涼床か。

 いくつかお店があるので、下から吟味していく。



 



 テレビで見た神社を参拝。

 やはり映像で見た清水につけて占う光景を目の当たりにする。

 俺たちはやらなかったけどね。





 道を歩くと思わぬ発見がある。

 巨大な大木に女性が。。。


 


 ついに来ました、納涼の床体験。

 まだまだ歩いて登ると汗を掻く九月初旬の気候。 

 床に座ると、それだけで感じる温度が違う。


【床の下流るる水に今昔】哲露




 


 納涼といったらビールでしょ。

 昨日も散々飲んだのに<これだから酔っ払いは嫌ね。

 なはは。

 定番の鮎の塩焼き、葉唐辛子の漬物、胡麻豆腐、具の入ったソーメン。 

 これで十分。

 これだけでビールを何杯も飲んでしまう。

 ああ、この世の極楽たぁこのことよ。 

 川の流れが足元を落ちていく。

 まさに自然のクーラー。 





 思えば、利江子姐さんのお祝いがあっての極楽浄土。

 都会のストレスあれこれ。

 光化学スモッグの大気。

 せせこましくみみっちい飼われた犬の性根。

 すべてを洗い流してくれた、そんなひと夏の休暇でござった。

 可愛い子には旅をさせろ、とはよく言ったもの。

 幾つになっても、旅はいい。

 京都よ、また来るぜ。

 おいでやすぅ、と聞こえてくるわ。 

 皆さま、ご愛読感謝! 


嵯峨野の朝。

2016年10月16日 | ★江戸っ子エッセイ★





 嵐山の宿を早朝から飛び出す。

 前夜の酒もなんのその、離れて暮らす友との朝RUNもこの旅の楽しみで来た。

 涼しい山の朝とはいえ、まだ夏の名残で気温は高い。

 軽いストレッチ後、軽快に走り出した。





 天龍寺を駆け抜け、桂川に出る。

 山と川の霊気が生の喜びを与えてくれる。

 鷺が潔く立ち、鮎釣り師がぽつぽつと長い竿を操っていた。 






 名所の渡月橋は遠景から眺めるのがよろしいようで。

 渡って戻って、嵯峨野の竹を目指す。

 台風の影響で雲が怪しいけど、天上の蒼さが清々しい。

 この辺り、ランナーやバイクリストも多い。

 自転車で回っても気持ちいいだろうな。







 船着場の先に、静止画のような川面が輝いている。

 天と水に森の緑が鮮やかだ。

 風の少ない朝の特権だろう。






 猿ってこんなに凶暴なのか。

 人が他の生き物たちの行き場を奪って、何を言っているという本末転倒だ。

 人間様の行いの業は深い。 





【青竹のすっくと伸びる秋の涼】哲露


 憧れだった、嵯峨野の竹林。

 まさに自然界のナチュラルマイナスイオンのシャワーを浴びる。

 汚れきった都会の排気ガスやらストレスやらが溶けて落ちていく。

 涼しい冷気が笹を揺らす。

 駆け抜ける足音だけがざっくざくと木霊する。




 


 洛西随一という、野宮神社のじゅうたん苔。

 京都駅の喧騒から近いところで、こんなものに遭遇できるのが古都の魅力の一つだろう。

 鳥居は黒木で、樹皮がついたまま建っている。

 これぞ原始の慣いそのものだ。

 嵯峨野の宮恐るべし。

 宿に帰って風呂を浴びる。

 朝飯で、名編集者のご夫婦と挨拶を交わした。

 市内を散策するという。

 熱中症にお気をつけを。

 あっし達は、貴船神社の納涼床に向かう。

 次号も乞うご期待。 


嵐山の夜。

2016年10月10日 | ★江戸っ子エッセイ★





 利江子姐さんのお祝い会の後、嵯峨野へ向かう。

 嵐山駅を降りて踏切を渡る。 

 懐かしい景色に心が和む。

 どうにか尼崎の友と合流し宿へ。

 虹が出迎えてくれた。



 


【七色の人生駆けて嵐山】哲露


 あった、あった。

 出版健保の京都の奥座敷。

 前回はクリスマスに来たから、この季節の雰囲気は初めてのこと。

 柔らかい夕日が旅の疲れを癒してくれる。

 秋に入ったせいだろう、広い部屋に通された。

 男二人には贅沢なほど。

 湯に浸かり浴衣に着替える。





 昼酒を控えていたので、温泉後のビールの旨いこと。

 友との泊まりがけは20代以来か。

 せっかくなので、近所を散歩する。

 嵐山駅がライトアップされていた。

 くまモン列車に、京友禅の光林が映える。
  







 駅はキモノフォレストという粋な装い。

 不思議な球体を囲む光の柱が遠目に幻想的だ。

 大学のイベント、ナイトハイク。

 夜通し歩いた友は今やRUN友。

 何でもあっしがフルマラソンを走ったことが刺激になったとか。

 元陸上部だから、とっとと抜かれてしまう。

 この歳になってのRUNは記録ではない。

 それぞれのペースで走ろうとする気持ちが大切なんだ。

 明日の朝も走るつもりだ。





 渡月橋の灯りに吸い寄せられるように人が集まっている。

 久方ぶりの泊まりがけに酒と話しは尽きない。

 理系の彼、文系の俺。

 あの頃のように彼と旅に出たら愉快だろうな。

 そんな日が来ることを願って飲んだ。

 学生時代の友ってのはありがたいね。

 嵐山の夜に乾杯! 

  


游俠沓掛時次郎とモスクの夕べ

2016年09月11日 | ★江戸っ子エッセイ★




【游俠をモスクに誓い秋刀魚食う】哲露

 演劇なぞとんと観た記憶がない。

 能、歌舞伎はちょろちょろ、どこかでアニーを観たし、ラスベガスで観たアバのミュージカルは感激した。

 演劇の体験は学芸会以来かもだが、とても比較にならないレベルだろう。

 西の酔狂な知人から便りがあった。

 ええい、と誘いを断らないのが元来の信条だから初台までトコトコと出掛けた。





 シスカンパニー公演のお題目は、遊侠沓掛時次郎。

 原作は長谷川伸。

 あの池波正太郎の師匠ではないか。

 劇作家北村想が大衆に愛された長谷川を慕ってのオマージュということだ。

 現金なもので、長谷川伸と知り俄かに心が逸る。

 青空に茣蓙を敷き、田舎芝居を見ることはかつて日本各地での原風景でもあったのだろう。

 開始時刻になると、館内の照明が落ち、真っ暗闇に蝉しぐれが舞う。

 一気に作品世界に飛べる素晴らしい仕掛けだ。

 麦わら帽子、スイカ、ソーメンの入ったアルミ鍋、

 長谷川團十郎一座が来た素朴で純粋な日本古来の夏の思い出がそこかしこにある。

 そして主役の段三役、段田安則の太い声とどっしりとした貫禄、

 戸田恵子の凛と響く声音が舞台を締める。

 劇中、長谷川伸の筋書き通りの人生を歩む人間模様が泥臭い臨場感をもって迫る。

 生まれ変わったら、芝居もいいな。

 歌舞伎、相撲、と揶揄され差別を受けたた芸能も、今や社会的ステイタスの極みに登った。

 テレビや映画では味わえない、小劇場ならではの親近感。

 生身の役者の動きと汗、息遣いがズドンと伝わる。

 好きなことを頑張っている姿ってのはいいねぇ。

 雪夜の汽笛が鳴り、幕は閉じる。

 現代の天井座敷に酔いしれた。

 さぁて、皆の衆、おひかえなすって・・・






 芸能界は狭い。

 話題のあのメンバーの祝いの花もあった。 

 やはりライブは人間臭くて面白い。

 Yさん、おいらにぴったりな作品と、思い出してくれてありがとう。

 分かっちゃいるけど、意に反して闇に踏み込んでしまう破滅衝動って誰にでもあるのかもしれない。

 創作のヒントにもなった、気がする。。

 心より多謝。 





 劇場から代々木上原まで歩き、山の手のビールの名店へ。

 蕎麦屋呑みの仲間であり、先輩と呑む。

 それぞれ製造法やホップに工夫があるのか、個性溢れる味。

 冷えた大麦は、日本の夏に欠かせない。

 過去、現在、未来といろんな話しをした。

 夕暮れの八幡様で契った約束。





 ここはトルコか。飛んでイスタンブール。

 こんな立派なモスクが都内にあったなんて。

 二軒目に行く前に、大兄に連れられ、瞬時に世界の旅へ。

 広くて狭い世の中。

 まだまだ知らないこと多し。

 日々是修行。

 小説道や如何に。 


 

 
 そして今日は9.11、マンハッタンに黙祷。

 Love&Peace。


サザンビーチに酔う♪

2016年08月20日 | ★江戸っ子エッセイ★



【烏帽子岩波間に見ゆる恋心】哲露


 久しぶりのサザンビーチ。

 C調言葉にご用心、ご存知のマークに気分上々。

 上野から一気通貫で約1時間。湘南ライナーって便利ね。

 熱射だらけのサザンstに、ローカル御用達のベーカリー「Taizo」がある。

 ここのパンが絶品なのよ。

 惣菜パンからイギリス、フランスの本格派まで。

 とにかく美味くて、しかも安い、これ大事。

 クーラーにエビスとハイボール。

 20代から使い込んだビーチパラソルを広げればそこは真夏のパラダイスなのだ。

 大波小波。

 ボディボードに乗って、茅ヶ崎に飛び込んだ。

 ワォ!







 家族連れからケツの青い若者まで、茅ヶ崎は胸騒ぎ真っ最中。

 海の家では、アームレスリングで大歓声。

 やんちゃな若者が、嬉し楽しやギャルを担いで海へドボン!

 いいなぁ、青春真っ盛り。

 シミやソバカスなんて気にしない。

 パラソルもなしで日焼けするそのプリプリの肌が眩しいわい。


 


 いつか観た海へ飛び込むお神輿が迫力の浜降祭。

 その神輿がサザンstに鎮座している。

 真白い長半纏姿、相州節が耳によみがえる。

 前日の胃カメラでわるかった気分が、浜風に吹かれぶっ飛んだぜ。

 ビーチは四六時中、サザンサウンドが鳴り止まない。

 なんて素敵な真夏の果実なんだ。





 夏気分でベトナムフォーとカレーのセット。

 透明で薄い塩味はナンプラーが効いて、冷えた胃に優しい。

 南国アジアのスパイスで汗腺も全開。

 ココナツ、タピオカ、頭のてっぺんから陽光と、夏のカオスにいつしか心穏やかになる。

 海チャージが足りなかったんだな。

 洪水のような誘いや情報が身辺をざわつかせる。

 どっちにしろ、人生一度きり。

 今この瞬間にやれることといったら、目の前の一つだけ。

 ブログ書いたら、走るってわけ。

 そしたら息子たちがお腹を空かせて帰ってくる。

 幸せのど真ん中に、これからの道はいく通りにも見える。 

 はてさて、スコールに飛び込むとするか。

 秋虫なんてなんのその、蝉よ頑張れ。

 真夏の空に乾杯! 


ウクレレとチャーシュー麺

2016年08月06日 | ★江戸っ子エッセイ★




【ウクレレの音色に踊る浜の風】哲露
 




 二週続けて赤レンガに行った。

 アスファルトの熱射に、浜風がさらう。

 高木ブーさん、小錦さん、サザン関口さんなど、ウクレレ好きが集まる祭典。

 ウクレレピクニック2016。

 今年も来てしまった。

 ハワイアンの雰囲気がそこかしこでムンムン。

 やっぱ夏はいい♪








 このピクニック、なんと15周年。

 何事も継続なのだ。

 色とりどりの布が、横浜の空に揃ってはためく。

 沢山の異国の少女が手を振っているようだ。

 ブルースブラザーズ、ジョンベルーシの前には懐かしいコカコーラの瓶。

 艶やかなサボテン、サボテンブラザースのチェビーチェイスには笑った。

 昨年見つけたハワイ手帖。目下予約受付の中、今年も買えた。
 

 

 白浜に子供たちが夢中。

 大人たちはその横で、マンゴーのカクテルを飲んでいる。

 ビールと辛口の白ワインが喉にこたえる。

 ハンモックが気持ちよさそう。

 ホノホノ(ぶらぶら)、モエモエ(寝る)。


 



 豪華客船飛鳥が浮かんでいた。

 でかい!

 ボォー、と汽笛が鳴いた。

 ラッキーなことに、出船に立ち会えたのだ。

 大勢のお客さんも、飛鳥の勇姿に釘付けだ。





 広島にスピーチは感動を呼んだ。

 具体的に歩む道こそなかったが、世界から人を殺傷する兵器が消えることを願いたい。

 オバマ、サンキュー。




 会社から行くランチ。

 北大塚ラーメンはいつも行列の大人気。

 お目当てはこの迫力のチャーシュー麺。

 玉子も麺も見えんもんね。

 太めの麺はかみごたえあり、素朴な醤油味に合う。




 ちなみにこちらが普通のラーメン中盛り。

 激中辛を頼む。

 お店を営むご夫婦は、名コンビ。

 この二人、大陸人か台湾人か。

 ライスがついて600円、チャシュー麺は800円なり。

 同僚が教えてくれた。

 たまにはがっつり肉を食えってさ。

 ヘタレはラーメンで十分でやんす。





 周辺が慌ただしい。

 その合間を縫ってなんとか夏を満喫している。

 波乗りしたい。

 夏後半。

 亜熱帯気候のお江戸。

 そろそろビールが飲みたい時間帯。

 しっかり水分を摂って、まだまだ夏を楽しむのだ。