【地下街の煙の匂い枯れてなお】哲露
浅草に暮らして○十年。
幼い頃から慣れ親しんだ黄色の電車。
毎週のように親に連れられ、銀座で映画を見たり、渋谷で人工の満天の星を眺めたりした。
その帰り、浅草駅に近づきカーブを畝ると、地下鉄の電燈が一瞬切れる。
幼心にずっと不思議だった。
親に尋ねたこともあったかもしれないが、記憶の彼方だ。
この時代のことは構想にあるが、まだ書けていない。
メトロに乗ってなんて望郷薫らす映画もあったが、何と言っても浅草ノスタルジーの極め付けシネマは【異人たちの夏】に尽きる。
片岡鶴太郎と秋吉久美子の昭和初期の親ヅラがなんともはまっていた。
何度見ても発見のあるホラーであり、メランコリックでありながら、遥か遠いあの日を思い出すようで好きな作品だ。
あの日の僕はどこに消え、いまの僕は何者になったのだろう。
親父に手を引かれ、黄色の地下鉄に乗って出かける。
それだけでエンターテイメントの入り口と思っていた。
銀座のデパートにマクドナルドが出現した頃から、現代の凋落へつながる傾斜が引かれたのかもしれない。
今や百貨店も風前の灯火。
銀座の松坂屋も外国人向けのバスターミナルに変質する。
変わることは時代の必然とはいえ、このスピードの速さに果たして人は付いていけるのだろうか。
善か悪か。
それは後世の人が考えること。
わっしはそそくさと、地下街のソース焼きそばで一杯の酎ハイを引っ掛けるのみ。
銀座線の旧1000形のお披露目。
昭和世代には、ぜひこの機会にノスタルジーを味わってほしい。
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