◼️「わんぱく戦争/Guerre Des Boutons」(1961年・フランス)
監督=イヴ・ロベール
主演=アンドレ・トレトン アントワーヌ・ラルチーグ ジャン・リシャール
中学生の頃に手にした雑誌付録の名作映画を紹介する冊子。最後のページで紹介されていて、妙に気になっていたフランス映画が「わんぱく戦争」。2021年にデジタルリマスター版でリバイバル公開され、やっと配信でありつけた。感謝😌
冒頭タイトルバックに流れるのはきっと耳にしたことのある「わんぱくマーチ」。
いーざーゆーけや、なーかまたーちー
めざすはあーのおかー♪
日本語の歌詞がつけられてNHK「みんなのうた」でも親しまれ、90年代にはビールのCMでも使われた。
隣り合う村の少年たちが連日繰り返す喧嘩。お互いの村を罵り合う。「このフニャチン!」と言われて、悪口だとわかるが意味がわからない少年たち。大人に言って反応を見る場面が笑える🤣
捕虜として捕らえた隣村の少年にナイフを突きつける。着ている服のボタンを全部切り落として釈放、ボタンを奪い合う戦争に発展する。大将のルブラックも同じ目に遭うが、母に言われたひと言で妙案を思いつく。
観ているこっち側は、少年のあどけなさを微笑ましく思い、一方で何でそこまで?と大人目線で顔をしかめる。しかし。少年たちの抗争を眺めながら、これは単にお子様の映画じゃないぞ、と思い始めた。
誰が大将として指揮を取るのか、みんなからお金を集めようと意見が出て仲間割れ。これは共和政だぞ、そんな共和政なら王政で結構だ。あー、なるほど。フランス革命という歴史があるからこういうやりとりになるんだな。そのあたりから、この映画は少年や村の大人たちを通じて、現代社会や戦争を風刺しているのだと気付かされる。
子供たちが口にする政治の話だけでなく、ボタン戦争はスイッチ押すだけで核弾頭が飛んでいく核戦争を遠回しに仄めかしている。そして少年たちの抗争がエスカレート。一方が馬やロバを借りてきて騎馬隊で攻め込んだら、相手の大将は父親のトラクターで少年たちが作った秘密基地をぶっ壊す。やられたらそれ以上にやり返す。もはやただの喧嘩ではなくなっていく。これはまさに戦争そのもの。
本作とは違ってもっとシリアスな話だが、筒井康隆のジュブナイル短編「三丁目が戦争です」を思い出した。子供の喧嘩に親が出て、本当の戦争になるストーリー。しかし、「わんぱく戦争」はあくまでもほんわかしたムードを貫く。大人たちも対立し始める場面が出てくるけれど、これは唖然とする結末になる。大人なんて子供と何も変わらない。笑わせながらも、訴えていることはかなり手厳しい。
シナリオは反戦映画の大傑作「禁じられた遊び」のフランソワ・ボワイエと監督の共作。戦場が描かれないのに、子供たちの微笑ましい姿とのんびりした村の風景しか出てこないのに、そこに小さいけれど確かな戦争がある。それは人間の相容れない寂しさ。
度々騒ぎを起こすルブラックは、大人たちにとって手を焼く存在になっていく。寄宿舎制の学校に行かされるのを嫌がる台詞が幾度も出てくる。フランス映画の名作「コーラス」にも問題児が集められた厳しい寄宿舎制の学校が出てくるが、入校するまでには本作で描かれたような経緯があるのだなと納得。映画のラスト、ルブラックに思わぬ出会いが待っている。それはほっこりさせてくれる最高の結末だし、風刺映画としての視点でも、人と人はわかり合えるのだと希望を与えてくれる🥲。
この映画、男児のヌードが出てくることばかりが紹介されがち。その場面は本編のほんのちょっとだし、単に微笑ましい光景にしか見えない。受け取り方はあるとは思うけれど、そのシーンだけに目くじらを立てて、この傑作とそのメッセージを避けてしまうのはもったいない。
冒頭タイトルバックに流れるのはきっと耳にしたことのある「わんぱくマーチ」。
いーざーゆーけや、なーかまたーちー
めざすはあーのおかー♪
日本語の歌詞がつけられてNHK「みんなのうた」でも親しまれ、90年代にはビールのCMでも使われた。
隣り合う村の少年たちが連日繰り返す喧嘩。お互いの村を罵り合う。「このフニャチン!」と言われて、悪口だとわかるが意味がわからない少年たち。大人に言って反応を見る場面が笑える🤣
捕虜として捕らえた隣村の少年にナイフを突きつける。着ている服のボタンを全部切り落として釈放、ボタンを奪い合う戦争に発展する。大将のルブラックも同じ目に遭うが、母に言われたひと言で妙案を思いつく。
観ているこっち側は、少年のあどけなさを微笑ましく思い、一方で何でそこまで?と大人目線で顔をしかめる。しかし。少年たちの抗争を眺めながら、これは単にお子様の映画じゃないぞ、と思い始めた。
誰が大将として指揮を取るのか、みんなからお金を集めようと意見が出て仲間割れ。これは共和政だぞ、そんな共和政なら王政で結構だ。あー、なるほど。フランス革命という歴史があるからこういうやりとりになるんだな。そのあたりから、この映画は少年や村の大人たちを通じて、現代社会や戦争を風刺しているのだと気付かされる。
子供たちが口にする政治の話だけでなく、ボタン戦争はスイッチ押すだけで核弾頭が飛んでいく核戦争を遠回しに仄めかしている。そして少年たちの抗争がエスカレート。一方が馬やロバを借りてきて騎馬隊で攻め込んだら、相手の大将は父親のトラクターで少年たちが作った秘密基地をぶっ壊す。やられたらそれ以上にやり返す。もはやただの喧嘩ではなくなっていく。これはまさに戦争そのもの。
本作とは違ってもっとシリアスな話だが、筒井康隆のジュブナイル短編「三丁目が戦争です」を思い出した。子供の喧嘩に親が出て、本当の戦争になるストーリー。しかし、「わんぱく戦争」はあくまでもほんわかしたムードを貫く。大人たちも対立し始める場面が出てくるけれど、これは唖然とする結末になる。大人なんて子供と何も変わらない。笑わせながらも、訴えていることはかなり手厳しい。
シナリオは反戦映画の大傑作「禁じられた遊び」のフランソワ・ボワイエと監督の共作。戦場が描かれないのに、子供たちの微笑ましい姿とのんびりした村の風景しか出てこないのに、そこに小さいけれど確かな戦争がある。それは人間の相容れない寂しさ。
度々騒ぎを起こすルブラックは、大人たちにとって手を焼く存在になっていく。寄宿舎制の学校に行かされるのを嫌がる台詞が幾度も出てくる。フランス映画の名作「コーラス」にも問題児が集められた厳しい寄宿舎制の学校が出てくるが、入校するまでには本作で描かれたような経緯があるのだなと納得。映画のラスト、ルブラックに思わぬ出会いが待っている。それはほっこりさせてくれる最高の結末だし、風刺映画としての視点でも、人と人はわかり合えるのだと希望を与えてくれる🥲。
この映画、男児のヌードが出てくることばかりが紹介されがち。その場面は本編のほんのちょっとだし、単に微笑ましい光景にしか見えない。受け取り方はあるとは思うけれど、そのシーンだけに目くじらを立てて、この傑作とそのメッセージを避けてしまうのはもったいない。