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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

2023-10-23 | 映画(さ行)

◼️「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け/She Said」(2022年・アメリカ)

監督=マリア・シュラーダー
主演=キャリー・マリガン ゾーイ・カザン パトリシア・クラークソン アンドレ・ブラウアー

ハリウッドの大物プロデューサーによる性暴力を報道したニューヨークタイムズ。担当した記者2人の姿を描いた力作。

報道の現場を描いた作品は、取材への圧力や様々な障害、記者や会社が信念を曲げずに報道までたどり着けるかがとてもスリリング。ウォーターゲート事件を扱った「大統領の陰謀」にしても、ベトナム戦争の戦況を記した文書をめぐる「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」にしても、報道に関わる人々の強さと、闇に葬られそうな社会悪を許さない信念が心に残る作品だった。

本作もそうした報道機関のドラマである。劇伴を極端に少なくして、淡々と進めていく語り口は「大統領の陰謀」を思わせもする。けれどあくまで政府が相手だったのに対して、事件の被害者たちがいる。今まで泣き寝入りを強いられてきた性暴力をめぐる事件を暴く過程で、報道する側の人間ドラマだけでなく、自分の身に起きた出来事を報道される被害者の姿を丹念に追っていることが大きな違いだ。そこには信念と怒り、葛藤と不安が入り混じる人間ドラマがある。

関係者にアプローチするゾーイ・カザンのしぶとさ。出産後の鬱を経て職場復帰をするキャリー・マリガン。社会悪に挑むタフな仕事をしているけれど、仕事と家庭に向き合う彼女たちの私生活こそ想像を超えたタフな日々だ。

ワインスタインが被害者たちに何をしてきたのか。この映画ではホテルの廊下をゆっくりとカメラが進む映像に会話のやり取りを重ねた映像で表現する。そこに被害者たちの告白が添えられるだけで、十分に恐怖を感じる。行為の卑劣さを女優に身体を張って演じさせてきた、かつての映画界のありようさえ問われているようにも感じられる。先日観たアニメ「パーフェクト・ブルー」、レイプシーンをヒロインに演じさせる場面で、「ジョディなんとかもやってたじゃない」と軽く言い放った男性を思い出す。今思えば、「告発の行方」でジョディ・フォスターにあそこまで演じさせない方法はなかったのか、とすら考えてしまう。

「全部90年代の話だ。なぜ昔の話を聞く?。その後も多くの過ちを犯している」
そんな関係者のひと言にゾッとした。

それにしてもこの邦題、なんとかならんか。誰の名を暴くんよ。変なサブタイトルは、いらん世話です。




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