Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

突然炎のごとく

2014-01-01 | 映画(た行)

■「突然炎のごとく/Jules Et Jim」(1961年・フランス)

監督=フランソワ・トリュフォー
主演=ジャンヌ・モロー オスカー・ウェルナー アンリ・セール

 トリュフォーの代表作として名高い映画だが、実は今回初めて観た。一人の男性を愛せない奔放なカトリーヌに魅せられた二人の文学青年。女って男には不可解な生き物だ。でもそれ故に女に惹かれずにはいられない。60年代の映画だから、色恋のドロドロした部分を詳細に描くことはもちろんないし、それにトリュフォーはそういう部分をサラッと描いちゃう人。セックスにまつわる場面はすべてナレーションで表現している。これをハリウッドがリメイクするともっと直接的な映画になるんだろうな。「暗くなるまでこの恋を」→「ポワゾン」の例もあるし。でもこの映画に限ってはそういうリメイクもアリなのかな、とも思う。

 文学青年二人が主人公でお互いがウンチクを語り合ったりするだけに、全体を通してすごく”文系男子向け映画”の雰囲気がする。彼ら3人に娘という同居生活は、村の人からは白い目で見られれているという描写も出てくる。世間的に見れば理解しがたい、奔放な女をめぐるドロドロ恋愛劇を、トリュフォーはひたすら詩的な雰囲気で包み込み、普遍的な”愛の映画”の外見にしようと試みているのだ。確かにお互いがそれぞれの愛し方を貫こうとした、そんな映画にも見える。文系男子であれば、おそらくその雰囲気だけでオッケーとしちゃう方もあることだろう。僕も観る前はフランス映画のお家芸的三角関係ドラマを期待していた。

 でもこの映画の狙いはそこではない。女性は感情で動く動物、男性は欲で動く動物と言われるが、この映画の主題はまさにそこなのだ。奔放に男性の間を飛び回るカトリーヌは、美しい蝶のよう。その蝶に魅せられ人生をかき乱される男達にとって、彼女はまさに運命の女。ジャンヌ・モローが劇中歌う ♪つむじ風 はカトリーヌの人物像をうまく表現している。ボーボワールを引用して女性を悪く言うジュールに腹を立て、川に飛び込むカトリーヌ。もはや自分を愛の対象としなくなったジムを道連れにするラスト。・・・彼女の行動を本当に理解できるだろうか?。おそらく男である以上無理だと思う。女は男にとってやはり不可解な生き物。その”わからなさ”は、邦題が上手に表現してくれていると思うのだが。二つの遺灰を安置して教会を後にするジュールの姿。妙にコミカルな音楽がかぶさるラストシーンが僕は気に入らない。「そしてジュールは彼女から解放されましたとさ」とでも言っているようだったから。これからが彼は大変なのだ。娘と共に生きるジュールは、この先ずっとカトリーヌの分身をそこに見ることになるのだから。

 ★

この文章を書いたのは2004年。最近はこの頃と違って、ヨーロッパ映画にどっぷりと浸る機会や時間がなくって、この手の映画欠乏症気味だ。トリュフォー監督作はあれこれ観たけど「突然炎のごとく」はかなり好きな作品。先日「ミッドナイト・イン・パリ」を観て、”文系男子向け?”などと綴ったが、先にこの映画の感想で同じような表現を使ってたのを忘れてた。





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2 コメント

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Unknown (tamaiichi)
2012-07-16 23:03:34
こんばんわ。
そういう映画なのですね。なるほどと思いました。
欧州映画は好きなのですが、フランス映画はちょっと難しくて、これも観てないのです。
文系男子というニュアンスが何となくわかる気がします。意外と周りの男性(文系)にフランス映画好きがいます。
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tamaiichiさんへ (tak)
2012-07-18 20:25:55
私見ですので・・・w。
フランス映画は人間模様を描くのがお家芸です。そんなん日常で事足りてる!と思っても、魅力的な人、個性的な人がたくさんで日常を忘れさせてくれます。だから好きなのかなぁ
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