クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

バウンシング

2022-09-24 14:20:14 | 試乗レポート
ピッチングセンターをホイールベースの中から車両の後方に置く設計としました。

・・・CX-60の新車試乗会の折のマツダのエンジニアの説明です。

ピッチングセンターがホイールベースの中にあるということは、
前後サスペンションがシーソーのように逆相で伸び縮みすることを意味します。

この時ボディーが忙しい揺れ方をするので特に後席は落ち着かない乗り心地になります。

しかし運転席の下あたりにピッチングセンターがあると、ドライバーが気がつきにくいという盲点があります。

ピッチングセンターがホイールベースの外(後方又は前方)にあれば前後サスペンションは同相で動いて、
車体が地面と並行に揺れるバウンシング挙動をしていることになります。

後席も含めて快適なのは後者です。

ホイルベースの短いクルマはひょこひょこした忙しい揺れになる。

ホイールベースを長くすればゆっくり動いて快適な乗り心地になる。

一般的に言われている乗り心地のイメージですが、これだと半分正解。

この時にホイールベースが短くてもバウンシング挙動に仕上げられていれば上下動が多少忙しくても快適で、
逆にホイールベースが長くてもピッチング挙動の出るクルマは、頭が上下前後に揺さぶられるので快適とは言えません。

ピッチングセンターをどこに置くか、あるいは結果としてどの辺りにあるかで、
快適性に大きな差があることから後方に追いやったという訳です。

これは長時間の移動で頭がぼやけたり、疲れの差になって出てきます。

なのでどう仕上げれば良いかの、技術的な落とし込みに高いスキルが必要なのはいうまでもありません。

分かりやすい例としては欧州車(北米車も)のそれはバウンシング挙動。

日本車のそれはピッチング挙動の出ているクルマがまだまだあります。

最近手掛けたポルシェ997のようにリヤヘビーなクルマは、フロント/リヤのバネ上荷重に大きな差があるので、
上下する速さ(振動数)の違いから、前後サスペンションを同相で動かすのが難しく、ピッチング挙動が出やすいと言えます。

なのでポルシェ純正の足といえどもピッチング挙動が出ます。

その997をいかにしてバウンシング挙動に仕立てるか⋯

それもあってCX-60の話が頷けます。