クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

痛い!

2017-02-14 15:53:16 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
なんとも表現しずらいド派手な外装といえばイタ車ですが、それと見分けがつかないくらいの競技車を預かりました。

写真はその車についていた、フロントストラットの倒立タイプシリンダーです。
クルマはランサーEvoX、ジムカーナ仕様。

ストラット形式のサスペンションは、ストラットが減衰機能とサスペンションの支柱を兼ねているので、
伸び縮みしながら、タイヤの倒れ方向の力、ブレーキング時にキャリパーが受ける力、
トラクションがかかった時の車体を駆動する力などを常時曲げ方向(折方向)に受けています(数千ニュートン)今更な話ですが⋯⋯

今回こうなった理由として考えられるのはジムカーナ用に仕立てられた硬いバネ、高い減衰値との組み合わせの影響です。
(ここまで一度も手入れされていなかったというのが一番の理由ではあるのですが)

硬いバネは少しのたわみ量で大きな荷重を受け留め、高減衰は時間当たりのストローク量を少なくする働きをします⋯⋯
つまりほとんどストロークしないサスペンションセッティングにしたことで、力の逃げ場はストラットに集中します。

ストラットが通常の何倍もの力(曲げ方向の力)受ければ摺動部の面圧も上がりグリス切れが起きやすくなります。
さらに短いストロークで摺動し続けるのでグリスは拭い取られる一方、グリスの供給を得られるところまで擦れている箇所がストロークしないので、慢性的な潤滑不足に陥ります。
潤滑なしで強烈な横Gを受ければ倒立シリンダーのメッキが剥がれるのは当然です。

市販車に採用されている倒立タイプは柔らかいバネ、低い減衰値、長いストロークで入力を受け止めます。
大きくストロークすればグリス潤滑機能も働き、手入れの期間は比較的長めでも大丈夫なように作られているのですが、グリス潤滑は安定的ではなく手入れは必ず必要です。

改造車にすると走らせ方も影響してサスペンションの負荷が格段に大きくなる分、二乗分の一三乗分の一に寿命が縮まることを理解しておかないと、イタい結果がやってきます。