クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

取材 NBR WRX FUJI SW

2022-12-16 11:21:11 | イベントレポート
富士スピードウエイで行われたNBR仕様のWRXの
シェークダウンテスト&お披露目会に行ってきました。

オートスポーツ誌の取材お手伝いです。



概要説明、走行、記念撮影などの予定を一通り終えた後に、
独占取材で総監督の辰巳さんと、トラックエンジニアの宮沢さんにインタビュー。

ニュルブルクリンク 24時間レースを走るサスペンションとは、を色々と教えてもらいました。
オートスポーツ来年1月売り号にこの記事が載ります。

ピットの中でエンジン暖機していても排気臭なしで純正並みの排気音。

シュルシュルと静かで速いニュル仕様。

ABSを効かせたブレーキングから、コーナリングもアウト一杯までのスキール音が、土手の上まで聞こえてきます。

マスターバック付きブレーキでABSを常用しているとのこと。

なのでフロントLSDは純正ギヤ式、センターデフも純正DCCD最弱で使用。

リヤLSDはLOMタイプでイニシャルトルク弱め。

この組み合わせがABSを生かすためのLSDの存在限界。

この日、GT300 BRZも隣のピットにいて、待ち時間の間STI渋谷さんと立ち話。

ピットの中で遠目にWRXを眺めていたら何人もの人から声をかけられました。

残念なことにうろ覚えだったり、なんと返事しようか迷う人もいたり。

マスク着用なのでお互いがわかりずらい!

さらに、以前一緒に仕事をしたことのある編集者、カメラマンも。

学生フォーミュラをやっていた時に接点のあった彼はスバルの名刺を手に目の前へ。

私が現役の頃、競技インプレッサに同乗走行をした人(二十数年前)は、ヘルメットを取った時の顔知らないし⋯

昔小関さんの部下で⋯からはじまった人に至っては記憶の巻き戻しが困難。

でもなんでも言ってくださいとこの人から優しく声をかけていただきました。

スバルとWRXを身近に感じることができたことと、取材以外にも多くの人に会えて嬉しい1日でした。



タルガタスマニアラリー参加車両

2022-12-14 13:39:13 | ガレージレポート(オリジナルボックス)

オーストラリアのタルガタスマニアラリー に参加した時の
AW-11スーパーチャージャーが里帰りしてきました。

参加したのは1999年なのでもう23年経ちます。

保管状況が思わしくなくボディーの痛みが進んでいたり、部品も何点か無くなっていて不動状態。

ラリー本番ではそれはそれは元気に走ってくれました。

その時に組んだコ・ドライバーは、国内ラリーでAW-11がデビュー仕立ての頃に、
メーカー系のドライバーと組んで戦っていたので、車両挙動に癖があるのをよく知っています。

なので一度もカウンターステアーを当てることなく走るAW-11は、自分の記憶と違うおかしいと、
危なっかしい挙動が出るはずのタイミングで叫んでいました。

クラス優勝と、全てのタルガステージ(SS)で基準タイムをクリアした人だけに送られる賞もいただきました。

これはSS途中で一度でもスピンするとアウトになるくらいの厳しい制限タイム内で、全SSをドライもウエットも失敗なく走らせた証です。

このラリー では、オーストラリア国内のMR-Ⅱクラブの人たちが大歓迎してくれました。

AW-11の参加は一台のみだったのでなおさらでした。

SW-20が同じクラスに参加していて途中まではいい勝負をしていたのですが、
3日目にコースアウトして牧場のフェンスに跨ってアウト。

ちなみに漫画家の山口かつみ氏もこのラリーに同行、タキシード姿で表彰式もご一緒しました。

漫画オーバーレブがスタートしたのが1997年なのでちょうど2年後のことです。

女の子が主人公でMR-Ⅱが活躍する話にピンときた人は、
そうですリアルなタスマニア仕様のスペックが単行本のどこかに紹介されています。

⋯⋯と言った思い出のあるクルマ。








ロータスエリーゼの場合

2022-12-07 15:33:58 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
エリーゼの初期型が入庫してきました。

アルミのディスクローターが使われている珍しいタイプです。

オーナーさんは車両を手に入れた後、全塗装に始まりエンジンその他諸々
ほぼ車両代ほど改造費を注ぎ込んだそうです。

締めで購入したダンパーキットは"評判"のもの。

これがサーキットの中ではなんとかなっても乗り心地が残念!

ということでそのダンパー仕様のまま来社されました。

決断が早かった証拠に、ダンパーキットが新品状態。

アライメント定盤に上げてあちこちサスペンション周りの採寸の後、
純正ダンパーに交換してその日はお帰りいただきました。

エリーゼのサスペンション形式は前後ダブルウイッシュボーンで、
レーシングカーのサスペンションそのものです。

公道を走るために必要なロードクリアランスを確保しているところが、
地面を擦りそうなレーシングカーとの違いで、サスペンションの触り方、
セットアップの方法はレーシングカーのそれです。

そのことを知ってかしらずか車高を下げる余地があるからと迷わずローダウンする⋯かなりの確率で。

ローダウンから始めるサスペンションいじりは良い結果に結びつきません。

気に入ったサスペンションキットがなかなか見つからず取っ替え引っ替えした挙句に、
知らないメーカーのダンパーが隣のクルマについているとよく見えてしまう厄介な病いにかかります。

工場出荷時のサスペンションの成り立ちを理解せずに手を入れると、コーナリングの限界特性が神経質になるか醜い乗り心地になるか、又は両方か。

今回がズバリその例。

ということで、バネとダンパーをワンオフ。これに多くのノウハウを詰め込んで無事納車に至りました。

そのうちコメントが聞けると思います。

*写真の1/4スケールモデルはエリーゼのフロントサスペンションを正面から見たもの。
 教科書に載っていない、旋回時の挙動原理が再現できる優れものです。



トヨタ セリカ ST185の場合

2022-11-29 10:46:11 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
OZホイール、ビルシュタインダンパー、アイバッハスプリング・・・

ひと昔前に、セリカのラリーカーがWRCを走っていた時に身につけていたパーツ。

その時のイメージが強烈だったオーナーさんが、ST185セリカを探し求め、エンジンのレストアを終えて、
ビルシュタインダンパーでサスペンションを仕立てたいということで来社されました。

時間が掛かりましたが無事できあがりました。

バネレートの選択、減衰値の仕立て、車高⋯

部品を組み合わせたらそれで終わりではなく、走りの"バランス取り"をします。

ある意味一台限りの手作り料理。

このまま競技タイヤに履き替えればヒルクライムとか峠アタック、サーキット走行も楽々こなせます。

ラリーカーのイメージでと言われたので、標準車高のままハードなバネを選択しました。

フロントヘビーなクルマなので、しっかりしたロール感を演出するのに必要なレートといえます。

試乗から戻ってこられて一言、パワーが足りなく感じるほどコーナリングが軽快。

さらに乗り心地は快適。

ニコニコ顔で帰路につかれました。

遠路お疲れ様でした。

ダートラドライバー憧れの地

2022-11-16 13:04:05 | イベントレポート
ダートラドライバー憧れの地


久々の遠出。

秋晴れの中、知人との再会を兼ねて全日本ダートラに行ってきました。

整備が行き届いていて、起伏のある立体的なコースは、
ダートラドライバーなら一度はここを攻略してみたいと思わせるレイアウト。

ハイスピードコーナーをパワードリフトで駆け抜ける気持ちよさは、ダートラドライバー全員がかかる「やまい」

学生時代にかかって定年間近になってもかかりっぱなしの人が何人もいます。

何もタイムで一番にならなくても、他の参加者と同じだけ砂利を撒き散らしてカッ飛ぶことができる競技なので、
勝負のこだわりが先なのか、気持ちよく走るのが先なのか分かりません。

そうでなければ、100秒を1日に二本走るだけの競技をしに日本全国に出かける理由が見つかりません。

だからと言って誰でも一番になれるほど簡単な競技ではなく、気がつけば表彰台に縁の無いドライバーもいます。

ところが、片付けを終えて会場を後にする時に、暗い顔をして家路につくドライバーは一人もいないという不思議があります。

そんなダートラドライバー憧れの聖地と言えるのがテクニックステージタカタ。

思う存分の走りを披露する夢舞台でもあります。

スタートラインを前にして息を整え、日章旗が振られるのを待つ瞬間から、
砂利を弾き飛ばす音とエンジン音だけのトキメキの世界へ⋯






ゼロタッチバネ その17 ND-RFの場合

2022-11-08 15:17:33 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
マツダロードスターND-RF用のゼロタッチバネができ上がってきました。

製作したビルシュタインダンパーとの組み合わせで取り付けてみると、
狙いの1G車高に前後とも誤差1mm以内で前後ともピタリ。

ND-RF専用のバネを「あつらえ」たのだからこうなるのはわかってはいてもなんだか嬉しいですね。

サスペンションセッティングの土台となる「車高」をバネメーカーに作り込んでもらえたお陰で、
走り始めるまでの一手間(車高調整には時間がかかります)が省けて大助かり。

純正形状で仕上げる難しさがここにあるのですが、おつきあいさせてもらっている
バネメーカーさんの実力を改めて感じる瞬間です。

前もって車高の微調整ができるようにと、
Cリングの溝増し加工を(スプリングシートの位置を変えられるように)しておいたのですが
今回は標準位置で車高が出たことから、他のND車両にも問題なく組み込めるということになります。

*軽量なNDに装着の場合は微調整が必要です。

走り始めの減衰仕様はフロントのバネレートに合わせてやや硬めから。

バネレートのアップ率がさほどではないリヤは低めの数値です。

乗り心地は心配したほど硬くはなく、路面に影響されて振動が少し出るのが気になる程度。

コーナー侵入時の操作の「遠慮」がいらなくなってハンドリングが大きく変わりました。

試走を終えた後、フロントのダンパーを外して振動対策の減衰力チューニング。

⋯圧側のオリフィス領域と減衰ボリュームをわずかに削りました。

振動が減って静かな時間が増えて落ち着いた乗り心地に。

純正車高のままバネレートをアップする方法は、スポーティーさが増して乗り心地も良好。

専用のバネを作ることができてこそですが、アフターパーツの世界でそのうち市民権を得るかも⋯

オートスポーツ誌

2022-10-29 13:19:39 | NEWTON BRAKE
月刊誌になってから時々お手伝いをしています。

「レースドライビング」の見出しで12月号が本屋さんに並んでいると思います。

F-1あり。WRCあり。インディカーあり。シュミレーターの話あり。

それぞれの分野で経験豊富なドライバーの生の声だったり、データーで見られたりする内容です。

本全体が派手な内容が多い中、ジミーな話で足を引っ張っているようにも見えるブレーキの大切さを書きました。

しかも始めの方のページで展開しています。

ブレーキの大切さを読んでいただいてから、ドライバーコメントを読むのもよし。

私の話は後回しにして、先にドライバーコメントを読むのもよし。

そうするとコーナリングのあれこれを話すドライバーも、結局は正確なブレーキング技術が
あってのことだよなと理解できるはずです。

どのドライバーの話も「ブレーキ」で地続きなんだと。

ここを冷静に考えていけば、テクニックと呼ばれるものが一体なんなのか。

そんなことを考えさせてくれるとても良い(ズシっと重さを感じる)内容になっています。

これは長年モータースポーツに携わってきた編集者のなせる技。

おすすめです。

写真、記事はオートスポーツ誌202212月号


安全運転技術向上分科会 その3

2022-10-20 18:36:39 | NEWTON BRAKE
参加者の一台に初心者マークが貼られていたので、初心者マークの期間ですか?と尋ねました。

とっくに過ぎているんですけど中々外せなくて⋯と話しながらペロッと初心者マークをめくると、
うっすらとマークの形に汚れが見えました。

この日彼女の横に乗ったインストラクター仲間に聞いたところ、街中を走らせるのがとにかく不安とのこと。

ハンドル操作もブレーキ操作もオドオド。

考えられる理由は本人の技量よりもクルマ側にありそうです。

まず手応えが曖昧なステアリング。

フロントガラス越しに見える景色を、〇〇ゲームのように、右に左にそっちじゃないこっちじゃないを
繰り返すしかなく、自分で進路を決めている実感が持てません。

それとブレーキペダルは踏力比例型ではない、ペダルストロークが先行する足応えの希薄なブレーキタッチ。

一応クルマが止まるブレーキがついています⋯のレベル。

これでは減速Gの強弱を思い通りにコントロールできません。

私に近寄ってこないで!系のクルマです。

街中でこのクルマを運転して動き回るのは難しく、
初心者マークが外せない(おまじまいに過ぎません)ことになるのです。

助手席でも、運転していても酔いそうなグミ仕上げの乗り心地と上記の操作系がセット。

四つタイヤがついていればどれも一緒でしょ⋯ではありません。



・安全運転技術向上分科会はこんな感じ⋯実技編がYouTube動画見れます。

 減速G一定から運転を組み立てていくのが基本です。





安全運転技術向上分科会 その2

2022-10-10 13:27:58 | NEWTON BRAKE
7月に座学を行った後の実技走行⋯自動車学校で実現しました。

Newton brake練習会です。

今回はまず踏力一定を体験する/1時間目。目標に向かって止める/2時間目。

私と私の仲間三人とプラス一名(ゲスト参加)の5人がインストラクター。

この日の実技参加者が6名!なのでほぼマンツーマン。

3人ずつを乗せて、踏力一定の体感タクシーを私が担当。

完全停止とはこんな感じですよ、と一旦停止のラインの手前で止めて
クルマの揺れがなくなるまで待ちます。
次に左右の確認ができたら発進。

自動車学校なので直線と言っても出せて40〜50km/hが一瞬、
そこから0.2Gほどで一定の減速を続けると、同乗の参加者からお〜と声が聞こえてきます。

説明付きで一定の減速を体感すると、これか〜になるわけです。

ブレーキの掛け方を体感できたところで各自のクルマに戻って踏力一定に挑戦します。

事前に仲間のインストラクターと話したのは、特別クルマ好きでもなくごく普通と思える人たちは
一体どんな運転をするのだろうか⋯

これまで接してきた人たちはクルマ好き、運転好きだったのである程度イメージできるけど⋯
ということで掛ける言葉に注意しようと話し合って臨んだのですが。

蓋を開けてビックリ。

この日の参加者は全員、踏力一定ブレーキできてます、既にやってます。

細かなことは抜きにして不快なブレーキ使いは一人もいませんでした。

2時間目の目標に向かって止めるもほぼ全員できます。

大和市が俄然いい街に思えてきた瞬間です。
(インストラクター全員の声)

それと、あと少しこうするいいですよと声をかけるとサクサクできてしまうことにもビックリ。
凝り固まっている人は頭で考えても無意識動作が先行して思うようにいかないことが多いのですが、
あと少しの加減がその場でできる。

この方は自分の感覚ではいいと思っていたので気が付かなかったと⋯
整理し直しの感想を素直に話されていました。

ということで、和気あいあいの「大人の練習会」無事終了。

仲間のインストラクターも久々の練習会でいい刺激を得ることができました。

次の開催が⋯あるといいのですが。

バウンシング

2022-09-24 14:20:14 | 試乗レポート
ピッチングセンターをホイールベースの中から車両の後方に置く設計としました。

・・・CX-60の新車試乗会の折のマツダのエンジニアの説明です。

ピッチングセンターがホイールベースの中にあるということは、
前後サスペンションがシーソーのように逆相で伸び縮みすることを意味します。

この時ボディーが忙しい揺れ方をするので特に後席は落ち着かない乗り心地になります。

しかし運転席の下あたりにピッチングセンターがあると、ドライバーが気がつきにくいという盲点があります。

ピッチングセンターがホイールベースの外(後方又は前方)にあれば前後サスペンションは同相で動いて、
車体が地面と並行に揺れるバウンシング挙動をしていることになります。

後席も含めて快適なのは後者です。

ホイルベースの短いクルマはひょこひょこした忙しい揺れになる。

ホイールベースを長くすればゆっくり動いて快適な乗り心地になる。

一般的に言われている乗り心地のイメージですが、これだと半分正解。

この時にホイールベースが短くてもバウンシング挙動に仕上げられていれば上下動が多少忙しくても快適で、
逆にホイールベースが長くてもピッチング挙動の出るクルマは、頭が上下前後に揺さぶられるので快適とは言えません。

ピッチングセンターをどこに置くか、あるいは結果としてどの辺りにあるかで、
快適性に大きな差があることから後方に追いやったという訳です。

これは長時間の移動で頭がぼやけたり、疲れの差になって出てきます。

なのでどう仕上げれば良いかの、技術的な落とし込みに高いスキルが必要なのはいうまでもありません。

分かりやすい例としては欧州車(北米車も)のそれはバウンシング挙動。

日本車のそれはピッチング挙動の出ているクルマがまだまだあります。

最近手掛けたポルシェ997のようにリヤヘビーなクルマは、フロント/リヤのバネ上荷重に大きな差があるので、
上下する速さ(振動数)の違いから、前後サスペンションを同相で動かすのが難しく、ピッチング挙動が出やすいと言えます。

なのでポルシェ純正の足といえどもピッチング挙動が出ます。

その997をいかにしてバウンシング挙動に仕立てるか⋯

それもあってCX-60の話が頷けます。