シネマと虎とグルメたち

犬童一心監督作品に「ジョゼと虎と魚たち」があった。オイラは「観た映画が面白くて、美味いもの食って阪神が快勝」を望んでる。

第三の男

2016年03月20日 | 映画
山田洋次監督の新作「家族はつらいよ」が公開されっるのに合わせて、先日「東京家族」がテレビ放映された。
小津安二郎監督の名作「東京物語」へのオマージュ・リメーク作品である。
僕はこの作品をあまり評価していないのだが、その中で老夫婦が昔見た「第三の男」を語る場面があって、映画ファンとしては嬉しかった。
そこで手持ちのDVDから「第三の男」を再見した。

アントン・カラスの奏でるチターのメロディが最初から流れ続け、その弦音が心を掻き立てるように鳴り響く。
ストーリー的にすごく凝っていると言うわけではないが、見せつけられる映像によってサスペンスの世界に否が応でも引き込まれていく。
何といっても撮影が素晴らしい。
夜のシーンが多いので暗闇にさし込む光がこれ以上ないという効果を生み出している。
ハリー・ライムが親友のマーティンスの前に姿を現す場面などは、分かっているのにドキリとする興奮を持たらす。
感心するのはその光のとらえ方と共に時々使用される斜めに切り取った画面だ。
傾いた画面が緊張感を生み出しているのだが、唸ってしまうのはそのような画面だけではなく、スクリーン上に展開される映像の構図だ。
絵画的であり、演劇的であり、藝術写真的であり、何よりも映画的な構図で迫ってくる。
ラストシーン。
墓地の中の枯葉の舞う長い一本道を女性は歩いてくるが、待ち受ける男には一瞥もくれず、まっすぐに正面を見据えたまま無視するがのごとく通り過ぎてフレームアウトする。
静かだった長いシーンが終わるとチターのメロディが響き渡る。
う~ん、いいわあ!
映画が娯楽として存在していながら芸術としての存在を見せつけた一つの到達点の様な作品である。
キャロル・リード渾身の一作で、彼の最高傑作だと思うし、映画史に残る作品だとも思う。

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