羽を休める鳥のように

きっとまた訪れる薄紫の夕暮れを待ちながら

すみれ色の夕景

2013年12月29日 | Weblog
毎年、大晦日は古本屋で仕事をしていたけれど、
今年はその古本屋がなくなってしまったのでさびしい。
新しい職場は明日まで。
古本屋の慣習がなくなり帰省のニュースをぼんやり見ていると
あした仕事に行くのをうっかり忘れそうだ。

うちには兄が作ったパソコンが三台あるけれど、
そのうちプリンタに接続してある一台の調子が悪く、
年賀状制作が遅くなった。
ようやく昨日、プリンタを自分の部屋のパソコンに繋げて
うまの詩を書き、テンプレートにおさめて作り始めた。
干支の詩を書き始めて三年目。十二支一周できるのかな。

図書館で伊藤比呂美さんの「犬心」を借りてきた。
「閉経記」で登場していた犬、カリフォルニアで暮らしたタケ。
この名前がシブイ、どうにも太宰治の乳母のタケさんを連想すると
ツイッターで呟いたら、「熊本文学隊」(伊籐さんは熊本が故郷)を
名乗る方がリツィートされてあっと言う間に数百人の人々へ拡散していった。

そんなわけで年末の土曜日曜。
ふだんあまり大きくあけないカーテンを全開してみたら
昼間は冬の光が降り注ぐ。夕刻近くには雲がすみれ色に染まる。
確実に夕陽が傾き空の色が変化していくのを見ながら
かつてここを書斎にしていた父を思い出した。
ここからは富士山も見えるって言ってたね。
まだ父の残したメモ書きなどがあるので懐かしい筆跡と
同じ夕景を見ている冬のある日。

ジャムのビン

2013年12月21日 | Weblog
とあるご婦人からかわいいチョコのセットをいただいた。
うさぎのあたまにはヒヨコがのっている。
             

このかたはとても品のいいおばあさまでいつも素敵な装いで長いドレスと、
帽子がとてもお似合いになる。マダム、という印象がある。
杖をついてお出かけになるときは必ず男の人が傍らに寄り添っている。
(息子さんなのかお孫さんなのか、、?わからない。)
夏にもリスの絵柄のお菓子を頂いた。
わたしは何のお役にもたっていないのではないかと焦ってお断りするのだけれど
けっきょくは有り難く頂戴してしまう。

お菓子といえば先日、森山大道写真展でフォト南部せんべいを売っていた。



お菓子を手にすると甘いものが大好きな母を思い出す。
うちにいる頃はお菓子ばかり食べてしまってご飯が食べられなくて
仕方ないので「今日のおやつ」とコドモっぽいけど決まった数しか母の所には
置かないようにした。
すると、、、ある日の夕方ふと見に行くと熱心にジャムのビンを抱えて舐めていたり、
そうかと思うとお砂糖の容器にスプーンを入れたりしていた。
思わずカッとなって「なにしてるの!?」と言ってしまったことを思い出す。
ゆっくり考えれば何だか可愛い笑い話だけれどそんな気持ちの余裕はなかったのだ。

明日はホームのクリスマスパーティーだ。
うれしそうにお菓子を食べる母を心底よろこんで見ることができる。

ターナーかカイユボット

2013年12月10日 | Weblog
休みの日の計画を考えるのはそこはかとなく愉しい。
どこかへ行くか、誰かと会うか、何かを買うか。
「片付けと掃除、、、しかも年末、、!」という
正しい囁きを片耳で聞きながら、
それでもやっぱり外へ行きたい。

上野へターナーを観に行くか、京橋へカイユボット発見に行くか、迷う。
ターナーはかなり混雑しているらしい。
半年前、東京藝術大学美術館で「夏目漱石の美術世界展」を観に行ったときには
若冲もミレイも、そしてターナーもあった。
この有り難い企画展でわたしはターナーを知ったのだ。
それでは今回は未知の芸術家カイユボットのそばに行くことにする。

地下鉄で一本で行けるのも嬉しいブリジストン美術館へ。

 

カイユボットは印象派を代表する画家のひとりだという。
ひっそりとした静かなたたずまいである。

片隅の椅子

2013年12月07日 | Weblog
先日のことだけれど、「エリア会」という名の集まりがあって
「残業手当てがでます」というので代々木のオリンピックセンターに行った。
エリア、というだけあって管轄地域各地からかなりの人々が集まってきた。
仕事柄、中高年?の男性が圧倒的に多く女性は僅かしかいない。

早めについたので賑わうロビーの片隅にイスを見つけて
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読んでいた。
(持ち歩く本にはカバーをかけている)
ふと気がつくと、寄り集まって歓談する人々の輪から離れて
ひっそりと本に目を落としている男性もいることがわかった。
一人はやはりイスに腰掛けて、もう一人は、座るべき場所がなく
柱に寄りかかって読書中。
あ~なに読んでるんだろうー?
自分のことは棚に上げて気になったりして・・・。

そんなわたしも第二部の「慰労会」立食パーティーでは
気の合う女性をうまいこと見つけて三人でよく食べた。
やっぱりこういうところで一人黙々とばくばくと食べているのはカッコ悪い。

この仕事について半年が経った。
知り合った女性は功績が認められ、先ほど壇上で紹介されていたひと。
別の場所で働く先輩。
名刺を交換し話を聞いた。
翌日、彼女から電話をいただいたので、
話の続きを聞くことにした。
偶然にも職場が近かったのだ。

こうしてまたすこし一歩を踏み出してみる。

道を曲がると出会う

2013年12月01日 | Weblog
日曜日だけど仕事。
それはぜんぜんかまわない。
ただ、「あれま!?」という事があったので、
少々つまらない気分でのろのろと帰り始めていた。

駅へと向かう。なんとなく曲がる。
あ、そうだ、この道には「猫の手書店」という古本屋があった。
にわかに元気になる。
本屋の前に行くと「30%引き。本日まで!」と張り紙があり
ますますわくわくしてくる。

最初、文庫本や猫の本を見ていたが奥まったところに
「文庫になっていない単行本、新しいのもあります」というコーナーを
発見。どうしてこんな奧に宝物を・・・?隠しておくのか?
そこでまず松浦寿輝さんの「川の光 外伝」を見つけて驚き、
すぐに取り出してみる。川の光、外伝がでたのは知らなかった。
出会えてよかった・・・・。
梨木香歩さんの新しいエッセイ、藤野可織さんの「爪と目」。
なるほど新しい本もあってしかもきれい。
中村文則さんの「惑いの森」、これも知らなかったが昨年の刊行。
そしてふと下の棚を見たら村上春樹さんのあの「色彩を持たない多崎つくると
彼の巡礼の年」があった。
春樹さんの本はほとんど読んできたと思うし、新刊がでるのはもちろん嬉しく
楽しみだった。
けれどあの「騒ぎ」のような時期にはどうものれなかった。
いずれすこし落ち着いたら必ず読もう、と思っていた。

あれもこれも買いたくなるコーナーからようやくこの三冊を抱いて
レジに持っていった。

わたしは読みたい本はたいてい図書館で借りる。あるいは古本屋で「あーっ」と思ったら買う。
もしくはネットで検索する。どうしても欲しい本は図書カードで購入する、
というつましい暮らしなので好きな作家の本をいっぺんに三冊も、
それも全部で1480円で買えたので帰りの中央線から夕焼けを眺めながら
なんだかにっこり気分。

道を曲がるといいことがある。
急がないで歩くと何かに出会う。
今日はそういう日。
ひたすらに何かに突き進むだけが道じゃない。
「あれま」とガッカリしたときにはゆっくりどこかへ歩を進めればいいんだと思った。