羽を休める鳥のように

きっとまた訪れる薄紫の夕暮れを待ちながら

母の笑顔

2016年10月31日 | Weblog
何度も書いたような気がするけれど
わたしと母は仲が良いわけではなかった。
母は外に出ない人。友達もいないし習い事もしないし散歩にも行かない。
家の中へとばかり視線と思考が向いて些細なことをいつも気にしていた。
家族の動向をチェックしてメモを書き気に入らない事柄をいつも、
たいていは私に向かってあれこれ申し立てた。

でも旅行好きだった亡父に連れられて国内も北欧にも行った。
誰かの運転する車に乗せてもらうのが好きだった。
だからわたしはいつも母を気分転換に外に連れ出そうと試みた。

母の口からこぼれる不平不満はずっとずっと続いた。
聞き流すことができなくて口答えもできなくて辛かった。

だけど母はもういない。

憎いと思ったことはただの一度もなかったけれど、
悲しかったこと、大変だったこと、うっとうしかったことは、
数限りなくある。
それらとげとげしたものぜんぶやがて抽出されて
ほんのりあたたかい紅茶みたいに澄んでくるだろうか。


昨日に続いて写真をもう一枚。
笑ってる母も懐かしいけれど、
戸惑い気味の赤ん坊が微笑をさそうひとこま。






写真整理

2016年10月29日 | Weblog
スマホで気軽に撮った写真はスマホの中にたくさん埋もれている。
デジカメで撮った写真はパソコンにアップして、「フォトブック」に
年代ごとに整理したりする。
「ブック」と名のつく親近感でタイトルを考えキャプションを考え配置を工夫して
作り始めるとけっこう楽しいし、完成すると自慢したくなる。
でもよく考えるとだいぶ面倒な作業でもあるわけで、
楽しいけどめんどくさい。

三冊くらい作成した。
また作るつもり。
何しろいつもどこかへ出かけている。

それでスマホには写真アプリをいくつか入れてるんだけど、
そのうちのひとつがやけに親切というかしつこいというか、
「あれから120日経ちましたね」とか「2014年の思い出の写真です」とか
メッセージと写真を流してくる。

この写真をアルバムにしませんか、といってくれるので
たしかにそうだな、と思う。そして時々まとめてみる。

2014年の今頃何してた?というメッセージとともにこの写真。



なかなか来てくれない兄がようやく三鷹に到着したのはもう夕方だったけど
ドライブが好きな母を乗せて深大寺あたりをぐるりと走った。
純ちゃんとオッコちゃんと母の三人で。
母は暗くなってしまった窓の外を一生懸命見つめていた。
その頃よくメモ帳にこうしていろいろ書いていた。
わたしがホームに行った日は「オッコちゃんきてくれた、でもすぐに帰った」とか書いてある。
母のメモをきっと兄に見せたくて写真を撮ったのだろう。
撮っておいてよかった。

兄はなかなか来てくれなかったけれど兄の次男夫婦はかわいい曾孫を連れて
おばあちゃんに会いにきてくれた。

今日、「母」というアルバムをスマホアプリの中に作った。

散歩日和

2016年10月18日 | Weblog
厳しかった夏が終わり秋がきたのね、と空からの誘いを受けたある日。

まず三鷹市美術ギャラリーへ「塩谷定好展」を観に行く。
鳥取に生まれ故郷を愛して撮り続けた写真家だという。
山陰の風景や戦前のこどもたち、橋のある少し暗い光景が印象に残る。

それから行ってみたかった三鷹北口の「水中書店」へ。
こじんまりとした古書店ながら詩歌の本が充実している。

道浦母都子「季節の森の物語」を買う。

「ひと恋はばひとを殺(あや)むるこころとは風に乱るる夕菅の花」

クレミアソフト

2016年10月15日 | Weblog
四十九日も無事に終わり、次女と吉祥寺で「お疲れさまランチ」。
BIODYNAMIE(ビオディナミ)という一度聞いただけでは全くアタマに入らない店名なんだけど
これがまた大人気で休日だけあって客もいっぱい。
カウンターならすぐにご案内できます、と言われると娘がぽつり。
「お母さん、のぼれる?」「うん、のぼれる」(笑)
母はね、確かにカウンターの高い椅子がかなり苦手でした。
でもね、最近座れるようになったのよ。
一人で時々行くカフェの好きな定位置が窓を見られるカウンターでね、
そこでよっこらしょと落ち着くために座れるようになりました。

ところでこの店の人気はこのパスタ。
生ハムかけ放題。
「ストップ」というまで店員さんがトッピングしてくれる。
この写真は次女のパスタで、さすがにわたしは早々とストップをかけました。
美味しかったのがランチタイムのサービス(チラシ持参)のクレミアソフト。

今回、三人の子どもたちに相談できて嬉しかったことをここに書いたけれど、
とくに次女が打ち合わせから当日、今回の香典返し手配まで、
全面的に助けてくれた。

来月はまた、彼女と北陸に行きます。

ワインカラー

2016年10月01日 | Weblog
久しぶりに友人と会った。
残暑が未練がましく空気を湿らせていた。
天然カキ氷が人気らしくわたしは遠慮したけど
味見だけさせてもらった。
なるほど、美味しかった。

夏の日々、母のことはブログにもあまりアップしなかったし
友達にもほとんど言わなかった。
事後報告になり、ビックリさせてごめんね、という感じ。

気持ちの揺れを書き綴りそれで落ち着くこともある。
長女が事故にあったとき、「灰皿町」のブログに毎日書いていた。
あまりにも大きな出来事は重すぎて吐露する場所があるのは救いだったのかもしれない。

そういえばあのときも夏の終わりだった。
ずいぶんたくさんの月日が流れたものだ。

母の病院へと通いながら詩のような散文のようなものを
すこしだけ書いたりした。
会葬礼状もその後のあいさつ文もいろんなことを思い出しながら書いた。

10月になった。
ふっとマニキュアの箱を取り出してみる。
ひさしぶりに指先を秋の色、好きなワインカラーに染めてみた。