世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【インフレ注意報発令】日銀金融緩和の副作用①

2012-03-16 01:00:11 | 日本

 2月中旬、それまでの金融マーケットに大きな変化を与える出来事がありました。14日の日銀による「金融緩和の強化について」の発表です。日銀は、当面、物価上昇率1%を目指し、実質的なゼロ金利政策を取るほか、資産買い入れ基金を10兆円増額して長期国債を買い入れることで、金融緩和を協力に推進する、としています

 端的に言えば、リーマンショックやPIIGS諸国の国債危機などに対応するために金融緩和を続けてきた欧米諸国の動きに日銀も(とうとう?)追従した、といったところでしょうか。

 この日銀の新たな金融政策発表を機に、為替市場では、それまでのトレンドが一転して円安・ドル高傾向になりました。その後、わが国の1月の月間経常収支が赤字となったことや、失業率の低下などアメリカで景気回復を窺わせるデータの公表が相次いでいることなどから、さらに円安・ドル高が進んでいます(2/14:1ドル77円台半ば→3/14:同83円台前半と約7%下落)。

 株式市場もこの流れを好感しているようです。円/ドルの下落で、わが国の輸出企業の業績が好転するとの思惑などから、日経平均は2/14の9,052円(終値)から3/14の10,050円(同)と、1ヶ月で10%以上も上昇してきました。おもに外国人が買いを主導し、それに日本の個人投資家が追随する、という、これまでもよく見られた展開です。

 こうした円安の流れや株価の上昇をもたらすきっかけを与えた今回の日銀の措置について、マスコミでは概ね好意的に報道されているように思えます。

 その反面、石油価格などの原材料価格がジワジワ上昇してきています。これは、度重なる欧米諸国の金融緩和で溢れたマネーが石油や小麦などの商品市場に流れ込んだ結果、これらの価格が高騰してきたことに加え、2月以降の円安でこれらの円建て価格が急上昇したことが大きな原因でしょう。

 最近の石油価格の急激な上昇の理由として「イラン情勢の緊迫化」ばかりがクローズアップされているように感じられます。まあたしかにそれもあるでしょうが、もっとも効いているのは目先の円安・ドル高であり、これをもたらした大きな要因のひとつがこの日銀による金融緩和ということもできるでしょう。現に、東京地区の1リットルあたりのガソリン価格の推移を見ると、2/13の145.5円から3/12の155.6円と、約1ヶ月で7%近く上昇しています。これは同じ期間の円の対ドル下落率とほぼ一致しています。

(続く)

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実質金利でわかる「円」の強さと「外貨」の危うさ②

2012-03-15 07:34:57 | 世界共通

(前回からの続き)

 一方、欧米諸国は実質金利がマイナスという異例の事態に陥っています。これは、不動産バブルの後始末やPIIGS諸国の国債危機に対処するため、中央銀行が金利を低めに誘導するとともに、国債等の資産買取や低利融資の拡大などの金融緩和策を実施して、通貨供給量を増やし続けているためでしょう。要するに市中に大量のマネーを供給し、インフレ状態にして、債務者の負担軽減を図ろうとしていると思われます。

 その結果もたらされたのが、この実質金利のマイナス現象でしょう。言い換えると、通貨の価値が受け取った瞬間から(わずかずつとはいえ)目減りしていく状態です。ならば、実質金利がマイナスの貯蓄なんかするよりも、(借金をしてでも)高金利の債券や実物資産に価値を移転させたほうがよい、ということになって、マネーがこれらにどんどん流れ込みます。現在、金(ゴールド)をはじめ、石油や小麦などの国際商品の価格が高騰していますが、上記のような金融政策の副作用として当然の現象でしょう。

 こうじた環境では、わが国と欧米諸国の実質金利差が拡大するため、為替レートはどうしても円高に振れる方向になっていくでしょう。欧米諸国の現状の経済状態を見れば、この構図はそう簡単に変わらないと思います。

 マスコミなどでは、わが国の輸出産業の価格競争力が落ちて利益が減るなどの理由から、円高=悪、と捉えられることが多いようですが、一方で、円高になると、輸入に頼らざるを得ない石油やガスなどの原材料を他国より有利な交易条件で調達することができるので、全国民にメリットがあることもまた事実です。実際、諸外国に比べてわが国の物価が安定しているのは円高の恩恵によるところが大きいでしょう。

 最近は、2月から始まった日銀の金融緩和策の影響や、1月の経常収支が赤字となったことなどを受けて、円/ドルがやや下落基調にありますが、この先輸出の緩やかな回復が見込まれることなどから、しばらくすれば経常収支も改善し、ふたたび円が強くなるものと予想しています。他方、欧米経済の先行きには引き続き不透明感があるため、当面、標記の通貨の序列に変化はないでしょう。

 数年後に経常収支はマイナスに転落し、円安や金利上昇で日本経済は衰退する、といったようなネガティブな予測もありますが、それよりもずーっと早い時点で、外貨のほうでヤバい事態(過剰流動性、インフレ激化、金利高騰…)が起こりそうです。わたしたちは、しばらくは発生の確率が低い日本経済崩壊のシナリオ作りに頭を悩ますより、まもなくやって来る外貨の危機にどう備えるか、について、官民を上げて真剣に考えるときにきていると思います。

(「実質金利でわかる「円」の強さと「外貨」の危うさ」おわり)

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実質金利でわかる「円」の強さと「外貨」の危うさ①

2012-03-12 08:24:25 | 世界共通

 円>ドル>ユーロ>新興国通貨

 現状の円、ドル、ユーロの三大通貨と新興国通貨の強さ(安全度)を比較するとこのようになるでしょう。金融市況が「リスク・オン」となると、安全度の高いほうから低いほうへ、つまり左から右に、「リスク・オフ」となると逆に右から左にマネーが流れる傾向にあるようです。

 このオン・オフの影響をもっとも大きく受けるのはブラジルやインド、韓国などの新興国の通貨です。(最近はとくにギリシャ情勢などのユーロ圏に関するニュースが多いですが、)何らかのニュースが伝わると、これら新興国通貨は大量に売買されて為替レートが大きく変動するため、各国は適切な為替管理や金融政策の舵取りに四苦八苦しているようです。

 さて、通貨の強弱を測る指標のひとつに長期金利があります。3月時点の日欧米国の10年物国債金利を低い順に並べてみると次のようになっています。

 日本0.99%、ドイツ1.80%、アメリカ1.98%、イギリス2.13%

 こうしてみると、日本の金利が一番低いことがわかります。一見すると、マネーが金利の低いほうから高いほうに流れ、円/外貨は下落していきそうに感じられますが、実際はそうなるとは限りません。これはあくまで名目上の金利の比較に過ぎません。

 それでは実質の金利はどうでしょうか。実質金利を計算するにはインフレ率を見る必要があります。2011年の各国のインフレ率は下記のとおりです。

 日本-0.28%、ドイツ2.24%、アメリカ2.47%、イギリス4.51%

 「実質金利=名目金利-インフレ率」で実質金利を求めると次のようになります。

 日本1.27%、ドイツ-0.44%、アメリカ-0.49%、イギリス-2.38%

 なんと、実質金利が「プラス」なのは日本だけで、欧米諸国は軒並み「マイナス」となっていることがわかります(長期金利は3/7時点の数値、インフレ率は2011年の数値で、両者に若干のタイムラグがあるため、正確な実質金利はさらに精査する必要がありますが、このトレンドに大きな変化はないでしょう)。

 日本は超低金利(都市銀行の普通預金金利は0.020%!)などとよく言われますが、こうした実質金利の比較で見れば、日本は実は高金利といえそうです(とは言っても1%くらいですが・・・)。円高の本質的な理由のひとつが、この円の実質金利の高さにあるともいえるでしょう。

 ある意味で「日本経済は、実質金利をプラスに保ちつつ、長い期間にわたって物価を安定的にコントロールしながら、着実に成長を続けている」という肯定的な見方をすることもできると思われます。わが国は、ノン・インフレ(緩やかなデフレ)でGDPを成長させてきていますから、たいしたものですね(実感は乏しいかもしれませんが・・・)。

(続く)

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日本の後追いをする世界・世界の最先端を行く日本②

2012-03-11 07:33:24 | 世界共通

前回からの続き)

 わが国に対する外国企業の投資行動を見てみても、日本の最先端ぶりが感じられることがあります。

 外国企業の日本市場からの撤退が相次いだり、外国から日本への投資が減っているのは、日本経済に将来性が見込めないからだ、とか、日本に非関税障壁が多すぎるからだ、などと彼ら(のみならずわが国の経済評論家)の一部は言います。違うのではないでしょうか。彼らはこの日本の市場で稼ぐ力がないから(悔し紛れに?)そう言うのでしょう。

 日本で勝つには新しい価値観を持つ商品を提供する必要があります。しかし日本の後追いをしている外国に拠点を持つ彼らは、日本企業がすでに開発し、すでに日本人の多くが手にしている商品やサービスの後追いコピー程度しか供給できません(HV車など、新たな価値を創造するのは多くの場合、日本企業です)。品質や安全面での要求レベルが世界一高い賢明なわが国の消費者に、価格以外の魅力が乏しい彼らの商品やサービスはなかなか受け入れられません。だからこそ、多くの外国企業が日本市場から負けて出て行くし、また新規参入に苦しむのでしょう。

 いま、わが国は、世界に先立って時代の変わり目に立っています。

 上述のような時代を先取ってきた歴史も、モノづくりやサービスも、そしてファッションや音楽、文化、サブカルチャーに至るまで、あらゆるジャンルで世界をリードし続けるわが国は、現在、新たな世界の創造に向けた胎動期にあるといえます。昨年の大震災と原子力発電所の事故が、否応なくわが国の背中を押しました。この国のすべての人々が、いま自分にできることは何かを自らに問い、そして自分の持ち場で力を尽くしています。

 これからわが国は、を旗印に、さまざまな試行錯誤を繰り返しながらも、世界が憧れて後追いしたくなるような新しい価値を次々に生み出していくことでしょう。これまでの歴史を見てもわかるように、これからも「日出る国」であるわが国は、後から日の出を迎える世界の国々のお手本であり続けるでしょう。それこそが時代の最先端国・日本の定めと思っています。

 3月11日、震災一周年の日に、「Cool Japan」(カッコいい日本)の将来に大いに期待を込めて。

(「日本の後追いをする世界・世界の最先端を行く日本」おわり)

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日本の後追いをする世界・世界の最先端を行く日本①

2012-03-10 13:21:41 | 世界共通

 わが国は世界史の最先端にいると思います。
 わが国の近・現代史の流れを振り返ると、将軍様を仰ぐ時代、開国そして富国強兵を図る時代、戦争による破滅と高度成長の時代、バブルに踊り、その後始末に苦労する時代、そして東日本大震災を経て新しい時代に向かう途上にある現在・・・となるでしょう。

 世界を見渡すと、不思議なことに、多くの国々が、これまでわが国が過去に経験してきた時代をいま、この瞬間に後追いで辿っていることがわかります。たとえばアジア諸国などは高度成長時代(わが国の1960~70年代)、中国などは高度成長からバブル期に入った時代(同1980年代)、そしてアメリカやヨーロッパはバブル崩壊後の景気低迷に苦しむ時代(同「失われた10年」)、といったところでしょうか。

 そのためわが国は、自分たちがすでに歩んできた道をいま歩む彼らの行く末をなんとなくイメージできます。きっと中国は、急速な経済成長の反作用として、激しい所得格差や環境破壊、バブル崩壊による混乱に直面する可能性が高いでしょう。アメリカやヨーロッパは、金融危機の深刻化と、それに対応する金融システムへの公的資金投入などが必要となり、財政赤字や資産デフレがさらに悪化して、長いリセッションに悩まされるのでしょう。

 生活者の視点から見ても日本は世界の最前線にいます。

 わたしたちの身の回りは安全で良質な製品・商品やサービスであふれています(しかもその多くがメード・イン・ジャパンか、日本企業のマネジメントのもとで諸外国で作られたものです)。よく、成長著しいアジア諸国に比べて日本は伸び悩んでいる、といった見方をされることがありますが、ある意味でそれは当然でしょう。日本人はすでにありとあらゆるモノやサービスを手に入れているのに対し、発展途上国の多くの人々はゼロからこれらを買い揃えていくわけですから。日本を訪れる中国人観光客の日本製の炊飯器を熱心に買い求めているうしろ姿に「いつか(日本人のように)優れたモノに囲まれた生活をしたい!」という、切なる願いが感じられます。彼らのゴールは、いまの日本人には当たり前のライフスタイルと言っていいでしょう。

続く

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王朝国家・中国のカルマ②

2012-03-09 08:38:04 | アジア

(前回からの続き)

 その一方、経済発展を重視するあまり、平等の理念は軽視され、税制等を通じた所得再配分の仕組みや、年金・保険などのセイフティーネットの構築がおろそかにされました。その結果、発展の恩恵は特権階級や一部の企業家・都市市民に偏り、大半の人民、とくに地方の農民は貧しいままに留め置かれてしまいました。

 華やかな街では、ケタ違いの富裕層がゴージャスライフを謳歌する一方で、マトモな社会保障もなく、現状への不満と将来への不安を抱えながら、多くの人々が少ない賃金でその日暮らしに近い生活を余儀なくされているのでしょう。2010年の世界銀行の発表によれば、中国では1%の家庭が41%の富を所有しているとのこと。まさに異様な格差です。かつて共産党政府は(たしか)「プロレタリアート(労働者階級)独裁」をうたい文句にしていたはずなのに、なんとも皮肉なものです。

 このように、いまの中国では、上記の①のプロセスがすでに始まったように思えます。つまり、所得・貧富の格差拡大と、不正行為や賄賂の横行といった行政の腐敗です。中国の歴代の王朝は、初代皇帝から3代皇帝くらいまでの数十年間に最盛期を迎え、その後衰退し、滅亡する歴史をたどっています。さて、中華人民共和国はどうでしょうか。「共産党政権」というこの「王朝」も、建国後60年の現在が絶頂期なのかもしれません。

 個人的には、①を食い止められなかったこの王朝は、やがて②につながりかねない混乱に巻き込まれていくのでは、と心配しています。このカルマの車輪を止めるには、一刻も早く格差是正を目的とした諸政策を実行しなければならないでしょうが、これには既得権益を持つ勢力の反発があって困難を極めるでしょう・・・。
(この王朝は、さらに大気・土壌・水質汚染や水不足などの非常に深刻な環境問題も抱えています・・・)

 今年は中国の総書記が代わる年。
 日中関係のさらなる進展のためにも、新しい「皇帝」のもとで、かの国が平和に発展し、市民の生活レベルが等しく豊かになることを期待したいところですが、はたして・・・?

(「王朝国家・中国のカルマ」おわり)

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王朝国家・中国のカルマ①

2012-03-07 09:32:32 | アジア

 中国はつくづく「王朝国家」だと思います。

 中国4千年の歴史は王朝の栄枯盛衰の歴史でもあります。これまで数多くの王朝が生まれ、そして消えていきましたが、個々の王朝の誕生から滅亡にいたるまでの軌跡には1つの共通点があります。それは次のようなものです。

 ①貧富の差の拡大や朝廷・政府における腐敗の蔓延
 ②これらに対する民衆(とくに農民)の反乱が勃発
 ③反乱軍の指導者層が新たな王朝を設立し、格差是正や改革に取り組むも・・・失敗
 ④①に戻る

 時代が変わっても、王朝が変わっても、まるで判を押したようにこのプロセスが繰り返されています。これは最後の王朝とされる清が滅んだあとも同様に思えます。

 1949年に発足した現在の中華人民共和国は、まさに上記のプロセスを経て誕生しました。そして建国当初は、共産主義の理念に基づき、階級格差のない平等な社会を築こうとしたはずです。

 しかし、計画経済にありがちな生産性の低さや、度重なる権力闘争などにより、経済・社会が停滞したため、小平時代に改革開放政策が提唱され、以後、市場原理に基づく資本主義のやり方が次々に導入されました。その結果、中国は、おもにわが国の企業などの外資の主導によって高い経済成長を成し遂げ、マクロ経済的にはGDP世界第2位、巨額の外貨準備を積み上げるほどの国となりました。

(続く)

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意外にしぶとい日本国債③

2012-03-05 12:47:54 | 日本

(前回からの続き)

 もちろん日本経済や財政にも大きな問題があることは事実です。経済成長率は高いとは言えないし、財政赤字は対GDP比で2倍に達しています。これだけを見れば、円も日本国債も危なそうに思えます。実際、これらの日本の問題点だけをことさら強調して危機を訴える議論も多いと感じます。

 ですが、一国の財政や通貨のリスクの度合いは他国のそれらとの相対比較によって決まるものです。デフォルトの連鎖のような深刻な危機が今この瞬間にも発生しかねないガラス細工のようなユーロ諸国やアメリカと比べると、日本の金融システムはずっとしっかりしています(日本の金融機関はバブルの苦い教訓を生かして?危険なサブプライム債券等の取引にあまり手を出さなかったようですが、本当によかったと思います)。

 さらに、経常収支が黒字を保っていること、政府が国内から低利で資金調達できる余裕があること(国民が潤沢な貯蓄を有していること)、そして何よりも、あらゆる分野で世界に冠たる産業分野を有していることなど、相対的・総合的な観点から見て、日本経済の安定度はまだまだ堅固であるといえるでしょう。こうしたことから、日本国債を大量に売却するメリットは見出せず、したがって、日本国債の暴落はほぼありえない、と思うのです。

 では万一のことを想定してみましょう。

 ヘッジファンドの売りなどをきっかけとして日本国債と円は暴落、長期金利が急騰、日本経済危うし-。これまで述べてきたように、こうした局面は非常に考えにくいですが、多少ムリでもそうなってしまったと仮定してみます。

 そのときこそ、日本政府・日銀の出番となるでしょう。円を防衛するため、円買い・ドル売りオペレーションを展開するのです。日本政府には1兆ドルにも及ぶ巨額の外貨準備があります。そのほとんどがドル建てのようです。これらのドル(の一部)を売却して円を買い支えれば、相当な規模の円売りにも十分対抗できるでしょう。

 いかがでしょうか。
 弱いようで実はしぶとい。わが国にはそんなところがいろいろありますよね。日本国債もそのひとつと思っています。

(「意外にしぶとい日本国債」おわり)

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意外にしぶとい日本国債②

2012-03-04 10:34:22 | 日本

(前回からの続き)

 では、基軸通貨・ドルはどうでしょうか。ユーロ圏の経済危機が深まるにつれ、ユーロからドルに資金がシフトした結果、ドルや米国債の価値が高まってきているのは事実でしょう。さらに2月中旬、日銀が10兆円におよぶ資産買入増額などの金融緩和策を開始した結果、円のマネタリーベースが拡大するとの予想から、それまでの円高トレンドが一転し、円からドルへの資金のフローも起きているようです。しばらくはドルが他通貨に対して強くなる傾向が続きそうです。

 しかし、アメリカの経済や財政状態をみれば、長い目で見てドルを買い増したくなるインセンティブも乏しいのではないでしょうか。最近は失業率の低下や個人消費の回復などを窺わせるデータ公表が続いていますが、住宅バブル崩壊にともなう「逆資産効果」でもたらされたデフレは依然として極めて深刻です。住宅価格が下げ止まるどころか、バブル期の水準に再上昇でもしない限り、本当の経済回復にはほど遠く、いずれは一層の金融緩和、つまりQE3に追い込まれる可能性が高いと見ています。

 FRBは2014年いっぱいまでゼロ金利政策を継続する可能性を示唆しましたが、これもアメリカ経済がたいへん厳しい状況にあると認識しているからでしょう。金利が少しでも上がれば住宅購入層の借金返済が一層困難になり、消費が低迷し、ますます景気悪化、となってしまうからです。

 また、度重なる景気対策などで財政赤字は拡大の一途です。今後、二大住宅公社の破綻、大きな自治体の破綻、ユーロ諸国のデフォルトや欧州金融機関の破綻などが起こりえると予測されます。そうなると、これらの債券等を多く保有し、関連のCDS(債券元本等を補償する保険のようなもの)を大量に引き受けているアメリカの主要金融機関が経営危機に陥るでしょう。アメリカ政府は金融システムを守るため、これらの金融機関に公的資金を投入せざるを得なくなります。ただでさえ巨額の財政赤字を抱えているのに、さらに膨大な量の米国債を上乗せ発行して救済資金を集める必要が出てくるでしょう。その結果、一層のドルの散布と価値の希薄化、そして米国債の価格低下(金利上昇)がもたらされるおそれがあります。

(続く)

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意外にしぶとい日本国債①

2012-03-03 15:11:35 | 日本

 日本国債が暴落、金利高騰で日本経済が破綻!?

 近頃、こうしたセンセーショナルな予想やシナリオがマスメディアで目につくようになっています。こうしたことは実際にありうるのでしょうか。結論から言えば、その可能性は限りなく低いと思っています。順を追ってみてみましょう。
 
 日本国債の90%以上は日本人によって保有されています。したがって、かりに欧米勢などが日本国債の売りを仕掛けたとしても、日本人、とくに最大の保有者である日本の機関投資家(金融機関)が追随して売りに向かわなければ、暴落ということにはなりえません。よく言われることですが、これが日本国債の価格が安定していることのいちばん大きな理由でしょう。

 ところで日本の機関投資家が日本国債の売却を急激に進めるような自体が本当に起こるでしょうか。それを考えるには、日本国債、つまり円を売って何を買うのかを想像してみるとよいでしょう。

 世界の為替市場のなかで円は3番目に取引高の大きな通貨です。1番目はドル、2番目はユーロです。だから円・日本国債を売却するとなると、ほとんどの場合、ドル・米国債かユーロ・ユーロ諸国債を買うことになるでしょう。ではドルやユーロは円を大量に売ってまで買いたくなるほど安全で魅力的といえるでしょうか。

 まずユーロですが、中・長期的に見れば買いづらいでしょう。ギリシャへの資金支援が固まり、危機が遠のいたとの見方から、現時点(3月上旬)では、ユーロ/円は少しだけ上昇していますが、財政再建や成長戦略構築などの根本的な政策実行は先送りされており、ギリシャを含むPIIGS諸国の国債価格は今後下がる可能性が高いと思われます。

 そして欧州中央銀行(ECB)が昨年末以降、3年間・年利1%の5千億ユーロにもおよぶ大量の資金を金融市場に供給しています。2月末にはその第2弾が開始される見込みです。たしかにこうした潤沢な流動性供給により、欧州諸国の国債市場に資金が回って国債価格が上昇(金利低下)し、当面の金融危機は回避されるでしょう。しかし、その反作用として、通貨供給量が増加してインフレのリスクが高まっていくとともに、円・ドル/ユーロはジワジワと強含みになっていくと予想しています。

 こうしたなかで、ユーロ建ての資産は、(たとえばAAA格を維持しているドイツ国債にしても、)ユーロが対円で下落していくトレンドにあれば、日本人にとっては多くの円を売ってまで購入するメリットは少ないでしょう。(ユーロ圏支援の名目のもと、日本政府のユーロ買い(EFSF債の購入など)はほどほどにしてもらいたいものです。)

(続く)

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