科学技術がこれほど進んだ現代でも、かの国の人々がやっていることは数千年前から変わっていない、というあたりから学べることの奥は深いですよ・・・
先月、中国では金(ゴールド)の「爆買い」が復活したと、東方新報(日本で発行されている在日中国人向けの中国語の新聞)が報じました。中国黄金協会によると、今年第一四半期(1~3月)の金消費量は288.2トンに達し、コロナ禍のさなかにあった前年同期比で93.9ポイント増とほぼ倍増と、2019年の同期水準まで回復したそうです。そのあたり、金価格が世界的に高騰した昨年は中国でも金1グラムが600元(約1万円)と高値だったのが、最近は470元前後にまで安くなったことも要因になっているようで、金地金・金貨のみならず宝飾品とか工業用金の消費量も軒並み増加したとのこと。
さて、上記報道ですが、まあ上記の数字を冷静にみると、コロナ禍で落ち込んだ中国の金需要がそれ以前のトレンドに戻った、といったくらいで、「爆買い」というほど極端ではないかな、とは思います・・・が、ここからは中国人の金に対する信奉が引き続き厚い様子が窺えます。そのへんは、日本人などに比べて中国人は金ぴか派手好みだからというのもあるのでしょう・・・が、もっと本質的なところは、同紙が述べるように、「歴史的に見れば、王朝が誕生しては滅ぶ歴史を繰り返してきた中国において、金は不変かつ普遍的な価値を持つ通貨」だからと理解するべきでしょう。時の王朝なり支配層が変わるたび、それまでの通貨が一瞬にして無価値になるなか、その変遷に影響されず、数千年もの長期間にわたって価値を保ってこられたのは唯一、金だけ、ですからね。ここは、以前から中国を「王朝国家」とみなしているわたしとしても、うなずけるところです。ということは・・・中国人民は本能的に感じ取っているのでしょうね(?)、近い将来、「現王朝」もまた・・・
ともかく、中国ではいま(も昔も)こうして人々が金の確保に走っているわけですが、これ現王朝の支配層・・・に当たる中国共産党当局にとっては、ネガティブ・ポジティブの両面から捉えられることでしょう。まずネガティブ面ですが、国民が金を買うということは、上記のとおり、その通貨である「人民元」に対する不信任の表れだから、金人気をこのまま放置すると、それとは反比例に人民元の内外での信認が低下しかねない、といったこと。これは現在の中国の国際的な地位の動揺につながるので、同当局としては、人民元を守る見地から、上記の過熱化は防ぎたいところでしょう。実際、今月1日、中国人民銀行(中国の中央銀行)は反マネーロンダリング法の改正法案を公表し、違反行為の対象範囲を金融機関等のほか貴金属取引所や同ディーラー等にまで拡大する意向を示しましたが、それには上記の狙いもあるためと想像されます。
いっぽう、国民の金買いにはポジティブな面もあるでしょう。これによって中国国内に貯まる金が増えるわけですからね・・・