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【ユーロ圏最大の歪み:金融統合なのに財政不統合】ユーロ圏、金融・財政の統合を決断できるか④

2017-06-25 00:01:30 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 先述の「ユーロ圏共同債」構想ですが、フランス人(欧州委員会のモスコビシ委員)がこの導入の検討を口にすると、要するにフランス(およびフランスよりも支払い能力が弱い国々)は自分たちの分も含めた債務負担をドイツにもっと課したいんだね~なんて勘繰られてしまうところ。まあ図星でしょうが(?)、他方でコレ、ユーロ圏の本質的な欠陥を突いた問いかけという見方もできそうです。というのはこのスキーム、ユーロ圏の財政一本化を前提としたものだからです。

 よくいわれるように、ユーロ圏は「金融」(欧州中央銀行:ECB)および「通貨」(ユーロ)は一つになっているのに、これらと不可分であるはずの「財政」の統合はされていません。そのため、たとえばECBの金融政策(QEなど)は中途半端なものになってしまいます。これを必要とする国(ギリシャなどの重債務国)とそうでない国(ドイツなどの財政基盤が比較的強固な国)が出てきてしまい、結局はどっちつかずの規模で実行されるから、前者にとっては金利が高いまま、後者にとっては金利が不必要に低くなり過ぎ、といった事態になり、両者ともにストレスがたまることになるわけです・・・

 上記の関連では税制にも不統一が生じる点も指摘できると思います。一例としてアイルランドをあげると、同国は法人税率を引き下げてユーロ圏等の大企業を誘致してきました(実効税率は主要国最低クラスの12.5%、日本は約30%)。周囲の国々と比べて人口や経済・財政規模が小さな同国にとっては、たとえ税率は低くてもグロスの税収はそれなりの額に上ります。その一方でアイルランドに本拠を移した企業の多くは隣の英国や大陸欧州が発祥の地。当然ですがこれら諸国は、自国由来の各社には自国に納税してもらいたいところ・・・ですが各社およびその株主にとっては、同じユーロ圏に拠点を置くならば税金の安いところに、となるのは無理もありません。

 こうしてアイルランド財政の一定部分は他国からやって来た企業に支えられる一方、これら企業の出身国の人々はアイルランドに取られる分だけ、行政サービスを享受できていないことなります。このあたりも金融・通貨が同じなのに財政がバラバラという現状がもたらした歪みといえそうです。もっともアイルランドはさすが「ケルトの虎」と称されるだけあって?(って、「虎」だったのは欧州金融危機前までだし、本来の意味はちょっと違うけど)、この状態を自分が有利になるように上手に利用しているといった見方もできますが・・・

 上記例のような理不尽な(?)状況を抜本的に解消するには・・・やはり財政を統合するしかないでしょう。つまり、中銀をECBに一本化したように、税制や予算編成を含めたユーロ圏の歳入歳出を一手に引き受ける「ユーロ圏財政庁」のような組織を創設するということです。こうすればモスコビシ氏の希望通り、上記共同債としての役割を持つ財政庁債券を堂々と発行できるようになるわけです、が・・・

続く

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