(前回からの続き)
前述のように9月、サウジアラビアの大型石油施設が何者かに襲撃され、同国は突如、日量で4割もの原油減産に追い込まれたにもかかわらず、直後に原油価格が達した高値は1バレル60ドル台前半(程度?)であり、その後は徐々に下がって現在は同50ドル台半ばと、あれほどの大事件だったのもかかわらず、石油市場は比較的落ち着いている印象です。それはマーケットが、原油の需給はこの先、よほどのことでもない限りひっ迫は考えにくく、むしろ緩んでいく方向だろう、と観測していることの反映と思われます。で、その緩和見通しの第一の根拠となるのが、世界最大の石油消費国アメリカのシェール革命にあるといえるでしょう。
2018年、アメリカはサウジやロシアを抜いて、じつに45年ぶりに原油生産量で世界一になりました。これに貢献したのはいうまでもなく、この10年で生産量が約2倍になったとされるシェールオイル。すでに同国の全生産量の約7割を占めるほどです。そのためにアメリカの石油の対外依存度は急速に下がっているばかりか、2020年代にはついに原油の純輸出国になりそうだとのこと。であれば―――つい数年前まではアメリカが大量に買い付けていた諸国の原油が同国に引き取られなくなれば―――石油が世界的にダブ付き気味になるのは自然でしょう。これほど多くの量をアメリカに代わっていったい誰が買うというのか、ということです。
でそのシェールオイル、アメリカが生産量のみならず埋蔵量でも世界一なのだとか。ですがこれ、ロシアや中国などにも大量にあるとされ、今後の開発動向等によっては中国などでもアメリカ並みのシェール革命が起こるかもしれません(?)。そして非シェールつまり従来タイプの原油のほうも世界各地での探索とか技術の進展などで可採埋蔵量が増えてきていて、そのせいか「石油はあと40年ほどで枯渇する」(?)との見通しが延々と?続いているような状況です。そのような中、多くの産油国は、石油しか売り物がないため、ちょっとでもその値段が上がればチャンスとばかりに生産量や販売量を増やそうとするから、たとえ価格が上がっても、少し時間が経てばこれらが市場に出てきて、価格はまた下がっていく、となるでしょう。
要するに、冷静にみれば現在そして未来にわたり、石油の埋蔵量・生産量はそれなりにあって、だからその需給がひっ迫することはそうはないし、その価格も今後、大きく上がる可能性は高くはない・・・というよりむしろ少しずつ下がっていく、というトレンドにあると考えられます。とりわけそれは、車社会であり、ガソリンこそが最重要の物資であるアメリカの現状において強く感じられるところです。