木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

非正規雇用とトヨタの関係

2015年11月11日 | Weblog

非正規雇用4割の衝撃「クローズアップ現代」
来年の3月末で番組打ち切りと言われるNHKの「クローズアップ現代」。
番組中に「やらせ」があったとして放送倫理委員会に厳しく指弾されはしたが、7時のニュースの後のこの30分の社会報道番組は一般国民に日本社会の問題点を突きつけるという意味で大きな存在意義があったと思う。
そのクローズアップ現代が今日火曜日に取り上げたのが非正規雇用の問題。

非正規労働者増大の背景にトヨタの影(週刊金曜日・7月24日号・武田知広(元大蔵省職員・経済ジャーナリスト)より
vwの排ガス基準不正問題などで、独り勝ち感のある自動車メーカートヨタだが、この日本で最も力のある大企業の賃金・雇用政策がほかの企業のいわばお手本になっている。
2002年から現在までの14年間にトヨタがベースアップしたのはたった6年。特に03年から05年までベースアップを全くしなかった罪は大きいと武田氏。04年に過去最高収益を上げているにも関わらずベースアップがなかったのだ。
また2015年は円安などによる好業績のため4000円という史上最高額のベースアップをしたとして話題になったが、4000円という額は賃金の1・1パーセントにすぎない。これは消費税アップ分に全く届いていない。従業員の側からみればアップどころか実質的には減収となっている。
ところが株主配当額をみると、この十数年間、毎年1000億から6000億円もの配当を支払っている。ベースアップがなかった年でも約3000億円の配当金を支払っている。まさにアメリカ型の「株主資本主義」の典型である。
トヨタ7万人の従業員に1000円のベースアップをするためにはわずか8億円ちょっとの支出でいいのだから、トヨタは株主には平気で数千億円も出すのに従業員には8億円の支出さえ渋ってきたということになる。
このトヨタの賃金政策が日本中の企業に波及した。トヨタのような好業績の企業がベースアップをしないのだから業績ががそれほど良くない企業はベースアップをしないし、悪いところは大手を振って賃金を下げることになる。
「雇用の流動化」を最も求めてきたのがトヨタ。
1999年労働者派遣法改正により一部業種を除外して派遣労働が全面解禁となった。2003年には除外となっていた製造業も解禁され、ほとんどの産業で派遣労働が可能になった。この恩恵を最も受けたのがトヨタ。
トヨタは以前から「期間工」という形で非正社員を製造工場に従事させるというやり方をしてきた。
景気がいい時には期間工の数を増やし、景気が悪くなると首にするのである。90年代から現在にかけてトヨタの期間工の数は最大一万人から最小ゼロと大きく変動している。
トヨタがこれまで出してきた収益や内部留保金はこの一万人の犠牲の上に成り立っている。この雇用による利益調整が03年の労働者派遣法改正によりさらにやりやすくなったのは言うまでもない。
企業にとって派遣労働という雇用調整ほど便利なものはない。しかしそれで悪化したのが国民の生活の安定である。
80年代後半には10パーセント台だった非正規雇用が90年代20パーセント台、2000年代にさらに上昇、4割という時代を迎えているのである。
言うまでもなく非正規雇用の増加は格差社会をもたらし、少子高齢化の大きな要因となり、結婚して子供を持つ青年男女の可能性を閉ざしてしまっている。
今日本社会に起きている企業による不祥事は人を物扱いしたこの20年の結果かと思う。
企業のグローバル化=アメリカ型資本主義というのは自国を限りなく空洞化させるものであると認識したい。
消費税増税はこうした企業の還付金に消えるだけである。トヨタに還付金はいらない。

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