映画『わが青春尽きるとも』ー伊藤千代子の生涯ーを見る。
この人のことは知らなかった。諏訪の出身で作家の平林たい子とは諏訪高女で同級だった。
歌人の土屋文明の教え子でもあった。幼いころ父母を亡くし、叔父・叔母夫婦の養女として育つ。
女学校卒業後、尋常高等小学校の教師になるも向学心に燃え、東京女子大に進む。叔父夫婦は学費を出してくれた。当時の娘たちが今でいう小学校を出た12,3歳位で製糸工場や女中奉公に出る中恵まれた少女時代である。
この東京女子大で社会科学のサークルでマルクス主義に出会う。現在の東京女子大のイメージとは違うが、この時代高等教育を受ける環境に恵まれた青年達から社会主義・共産主義は広がったのである。活動の中で千代子は浅野晃という青年と出会い結婚。
しかし時代はこうした無産主義運動を許さず、天皇制軍国主義の流れの中で千代子も「治安維持法」で逮捕されてしまう。映画は刑務所での千代子の戦いを中心に進む。同じような状況で逮捕・収監されている女子活動家のリーダー的存在として同志と励ましあいながら理不尽な特高の仕打ちに耐える千代子が描かれる。
この女子刑務所の様子が描かれるところがこの映画の特色だ。
女性たちは耐えるが、男達は陥落していく。自分を導いてくれた夫の浅野も陥落する。大体男たちは出産をするための身体を持っている女性より「血と痛みに弱い」。
夫浅野の転向はショックだったがそれでも千代子は思想を曲げない。しかし体は弱り、瀕死で病院に運ばれるがそこで命尽きる。
敗戦で特高は廃止されたが、それを思想的に引き継いでいるのが公安警察である。あからさまな拷問などはしないが、長時間の取り調べで自白に追い込む手口はいまだに警察や検察の常道である。
そして肉体的に罪なき人を苦しめているのが今は入国管理局だ。