木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

切実な魂の叫び『ボヴァリー夫人』

2022年06月01日 | Weblog

「土地はだれのものか」
法政大学名誉教授で弁護士でもある五十嵐敬喜氏の著書読了。

人口減少時代の所有と利用という副題がついている。
放置された土地と家屋が荒れ放題になっているのは地方だけとは限らない。これからは大都市周辺に高度経済成長以降建てられた集合住宅や分譲住宅も例外ではなくなる。
減築をしてリノベーションするということも始まってはいるが、そこに立ちはだかるのが私的所有の壁である。そこで五十嵐氏が提案するのが「土地の総有」。公有でもなく私有でもなく総有。そこに住んでいる人たちが知恵をしぼって土地の活用のあり方を考える。住民自治の考え方だ。
元々土地とはそういうものだ。欧米などはそうした考え方に近い。
都市圏ではちまちました戸別住宅やマンションの部屋を私有するのではなく総有。だから基本貸家の考え方。戦後政府が勧めた「持ち家政策」の転換だ。こういう考え方だと自分が住まなくなった後のことや財産管理をしなくて済む。これらは住宅管理会社に任せる。
地方の山村などはこういうわけにはいかないからそれこそ農協や地方自治体などがかかわることになるだろうが。

『ボヴァリー夫人』既婚女性の恋愛。
この有名な小説を私はまだ読んでいなかった。中村真一郎というかなり前の作家が激賞していたので今のうちに読んでおこうと思ったのだ。文庫だが新版なので文字も大きく読みやすい。
まだ前半だが、シャルルという開業医の妻エンマは善良だがやや愚鈍な夫に飽き足らず、若いレオンに惹かれる。レオンもまたエンマに惹かれる。
よくあるストーリーだが作者フローベールの細密な心理描写が冴えていて読ませる。
フローベールは病弱で仕事に就けないでいたのだが、こんな小説を書いたのだからこれでよかったのだろう。
暇な既婚女性の遊びではなく、飢えた魂の必然として読むべき。

コメント
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