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木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

米中二つの大国の病い

2010年04月11日 | Weblog
米軍兵士にとってのイラク戦争『ハート・ロッカー』。
今年の米アカデミー賞の作品賞を獲得した作品。
興行的に圧倒した3D作品『アバター』を抑えての受賞だった。
イラクで爆発物処理の任務につく兵士の物語だ。
宇宙服のような重い防護服を身につけて、街なかに仕掛けられた爆発物の遠隔操作線を切断していく。一歩間違うと木っ端微塵に体がバラバラになる危険な作業だ。
その作業をイラクの市民が遠巻きに見守る。米軍兵士からみれば、この市民のうちのの誰かがこの爆弾を仕掛けたのかもしれないという疑心にとらわれるだろう。
こんな戦争をアメリカはベトナムで、アフガンで、イラクで展開してきた。
敵の兵士というはっきりわかる相手ではなく、市民の中に紛れ込んだアメリカに敵意を持つテロリストと戦う消耗戦だ。
中国に侵略していった日本軍が、村々で残虐な行為を繰り返した焦燥感は、ベトナムやイラクやアフガンで過剰行為を犯してきた米軍兵士と共有されるものだろうと画面を見ながら思った。
爆弾処理という神経消耗戦に、任務終了期限をひたすら渇望しながら従事する米軍兵士の姿が最大の反戦の主張になっていた。
「自分は何をしてるんだ、いったいこれは何のためなんだ」、米軍兵士たちはきっと何もわからなくなり、そういう中で命を落としていくのだろう。
『中国の植物学者の娘達』と死刑執行。
06年に公開された映画だが、ミニシアターでの上映で鑑賞。
『中国の小さなお針子』のダイ・シージェ監督作品。
雲南省昆林の植物園に孤児の若い女性ミンが研修のためにやって来る。時代は1976年。
その植物園で研究に従事するチャン氏は、娘のアンに専制的に対しながら、助手に使っている。
新参のミンにも厳しい態度でのぞむ。
湖に浮かぶ植物園は対岸の町とは渡し舟を自ら漕いで渡るのだ。
アンにとって同世代のミンの存在は新鮮だった。
2人は次第にお互いに愛を感じるようになる。アンには軍人の兄がいる。
父親であるチャンはミンを息子の嫁にと思う。
2人がずうっと一緒にいるために「兄と結婚を」とアンは勧め、ミンはそれに従う。いかにも人生をまだ知らない若い娘の考えだ。
アンの兄とミンの新婚旅行はさんざんで、兄は遠い赴任先のチベットに去り、ミンは植物園に戻ってくる。
この時点から、父のチャンを2人は気にしなくなる。父は専制を失う。
そして決定的な場面を父は見てしまう。ミンを攻撃しようとする父をアンが後ろから攻撃し、父は倒れる。心臓に持病がある父は病院で亡くなった。
父は亡くなる直前、「自分の命を奪ったのは心臓の病ではなく、娘達の同性愛だ」と言い残す。
裁判にかけられた二人に出された判決は「死刑」だった。
ここで、つい最近、中国で薬物所持の罪で死刑を執行された日本人のことが頭に浮かんだ。
中国では薬物所持や使用の罪は重く、また汚職の罪も重い。
その罪に対して死刑が執行されてきた。
同性愛が死刑の対象になった事実があったのかは知らないが、中国での死刑執行には驚くことが多い。
しかし、日本もまた死刑制度維持国である。前政権では、この数年の間に年数名の単位で執行されてきた。
今回の日本人死刑執行に強く抗議できない日本がそこにある。
ダイ監督の主眼は、文化大革命によって失われた中国の青春だという。
ミンが植物園に来た時、お土産に持って来たインコだったかオウムだったかが覚えていたのは「毛沢東、万歳」だった。
コメント
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