庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

アベノミクスは迷走中だが、賃金デフレの解消が動き始める。

2017-02-09 | 経済問題

超金融緩和による国内投資の促進と、インフレターゲット政策によって、消費者マインドを転換させて消費指向を増大させる狙いは、完全に空振りとなっている。

唯一の効果的な政策は、公共事業の土木工事の増加による「耐震性の向上」を狙った「国土強靭化」政策である。

これによって、建築業界では人手不足による賃金の上昇が引き起こされて、他の業種にも賃金上昇の気運を波及させる効果があった。

さらに安倍政権が鳴り物入りで始めた「官製春闘」で、大企業への要請によって、ベースアップがわずかでも復活し始めたので、賃金デフレに歯止めがかかった。

この動きをさらに加速することが、デフレ経済を脱却させる。

 

なぜ今までの政策がほとんど空振りで、日本経済の停滞が20年以上も続いているのか、似非経済学者やマスメディアに登場する有識者にはわかっていない。

それは、自由貿易によって「物の移動の自由」が活発になることが、経済発展に良いことだとの【思い込みの信仰心】が強すぎるためである。

貿易の自由化を極端に進めると、労働賃金の低水準の国に「生産拠点が移転」することは、この30年以上の経過を見れば明らかである。

それを、19世紀の理論である「リカードの国際的分業論」を、未だに念仏のように唱える人がいるが、今や19世紀のような物の移動の自由が、制限された時代ではなく、物流システムの飛躍的進化で、環境は大きく変わっているのだ。

 

このような認識が薄い歴代の政権と民間企業経営者たちは、【労働者の賃金を抑制】することで、生産コストを抑えて【国際的な価格競力】を維持しようとした。

これが「賃金デフレを引き起こす」要因となって、「非正規雇用社員」の増加を、経済合理性があると強弁して、人材派遣企業などが躍進してしまった。

また、「外国人研修生の増加」をはかって、低賃金労働の分野を広げて、その影響で【日本人労働者の賃金引き下げの悪影響】を増加させてきた。

また、地方政府が「低賃金の仕事」にしがみつく小企業を、なんとか生き伸びさせようとして、「最低保障賃金の引上げ」に抵抗してきた悪影響もある。

 

ここにきてやっと、賃金の抑制は消費購買力の減退を招き、【デフレ経済に停滞させる最大の原因】であると、安倍政権も気がついた。

民主党政権が政権公約にしていた「同一労働同一賃金」の基本政策も、安倍政権の三年目になって、取り組みを始めた。

「最低保障賃金の引上げ」は、民主党政権では全く怠慢だったが、2016年にはやっと引上げの動きにつながった。

この基本方向を、日本全体での合意された政策として、着実に実行していけば、賃金デフレの要因は解消される。

あとは、【自由貿易至上主義の誤った信者】たちを、政権の中枢から放逐して、民間企業経営者には、低賃金化のコストダウンは厳禁と通達することだ。(続)