保護貿易主義の復活だと大騒ぎをしている「マスメディアの論調」は、成果の潮流が自由貿易を経済発展の必須要素であるかのように、固定観念に固まっている。
日本の高度経済成長気には、弱体の産業を守ることが国是として、日本中の世論は保護貿易を守るべき制度としてきたのである。
1980年代までの間には、各産業域での弱小な事業者を保護するために、関税による障壁を設けたり、法律や制度による「非関税障壁」を設けて、弱小な事業者の近代化や事業者の競争力を高めて行く政策を講じてきた。
これを、時の政府と中央官庁で一体となって、日本全体のバランスをとりながら、産業の競争力を強化してきたのである。
今のトランプ大統領が【日本がやってきた保護政策】を、しっかりと勉強して、有能な側近に具体的な政策を立案させるのに、泣いて喜ぶ成功事例が多い。
いつの段階からか判然としないが、1980年代末期の「不動産バブルの崩壊」によって、日本が大不況に陥りかけた時期に、「アメリカ発の新自由主義経済」が、流行の波に乗り始めて日本に上陸した。
不況からの脱出には、【規制緩和を徹底的に実施】して、【民間企業の活力を自由に発揮させる】のが、経済の再生には不可欠だ、とした。
それに輪をかけて、冷戦の終結によって、「自由貿易の方向への転換」が、加速し始めた。
日本の保護貿易政策を、アメリカの国益追求によって、開国を迫ったのである。
世界第二の経済大国になっていた日本は、弱小な産業は「貿易自由化」によって、国際競争力を外圧によって押し上げるか、できなければ消滅もよしとした。
アメリカが貿易自由化の波を加速して、「北米自由貿易協定NAFTA」を締結したのも、このころの「新自由主義経済」の論者のイデオロギーに従ったのだ。
その結果は、アメリカはトランプ大統領が指摘するまでもなく、製造業の大半が【国際競争力を失った】ことで、大量の低賃金労働者層が増加して、中産階級が弱体化する中で、国の豊かさを失っていった。
日本も同様に、生産拠点の海外展開が加速していき、国内に残った産業でも、【非正規雇用労働者の拡大】によって、低賃金化が潮流になっていく。
その結果のしわ寄せは、社会不安と将来への展望が持てなくなった低所得層と、【若年層の晩婚化、非婚化、子供を持たない世帯の増加】で、消費不足経済が慢性的に広がっていき、日本の人口減少社会への転落が、明確になっている。
「アベノミクス」のような見当違いの金融政策では、消費の回復もなく、次世代産業の育成も全く成果を生む様相にはならない。
やっと「賃金デフレが大きな原因」であると気が付いて、最低賃金の引上げや、「官製春闘」の掛け声で、とにかく「賃金デフレからの離脱」を図っている。
次の課題は、保護貿易政策への回帰であり、トランプ氏とウマが合うだろう。(続)