20世紀後半の「先進国の修正資本主義経済」は、成功して豊かな社会が実現していて、アメリカ社会は世界の模範になっていた。
それが、新興国の台頭もあって、新自由主義経済が「世界経済を不安定化」させて、貧富の格差を拡大させる最大の原因となった。
アメリカ社会の格差拡大と治安の悪化が、トランプ新大統領を誕生させて、「これから不安定化したアメリカ社会を再生する」と、宣言している。
自由化以前の制度に戻す「保護貿易主義」とか、「アメリカ第一の鎖国的」との懸念が出ているが、トランプ流儀の資本主義経済をどのように打ち出していくのか、世界中が見守っている。
日本では自動車企業の海外生産に影響が出るだろうが、そのような一部の産業の問題ではなく、不安定化する世界経済と治安の悪化をどう食い止めるかの問題だ。
トランプ氏はビジネス界出身で、少なくとも不動産投資が不利になったり、事業家が混乱するようなことはしないであろう。
治安が乱れるような事態になれば、不動産投資が不利になるのは歴然としている。
だから、メキシコとの国境に万里の長城並みの壁を建設して、不法な越境者を締め出す政策の実行を急ぐはずだ。
テロ攻撃の危険性が高いことの防止策として、治安悪化国の入国者の審査を厳重にして、とにかく、アメリカの治安維持を最優先する。
国際的に多国の人材を活用する企業は、移動の自由を制限されることで、【企業活動の活力を奪う】と不満を言うが、それよりも治安維持を優先するだろう。
大多数の製造業や不動産業界にとっては、不安定国からの入国を制限したほうが、不安定な原因が減るからだ。
これを批判して、EU諸国をはじめとした、富裕層の多い国の識者たちが、入国制限や人の移動の管理を強化すると、経済活動の支障が出る、と言い張っている。
しかし、自国の治安維持には、足元からの不安定化に対する施策は、打つ手なしで、失業率の増加や低賃金労働者の不満を和らげることもできない。
まずは非難する前に、自国の雇用の確保と労働者の賃金水準を適正に保つことだ。
アメリカに対する批判は、移民の自由化の失敗を認めない、【欧州のエリート層の傲慢でしかない】と、トランプ大統領は不満が言いたいだろう。
日本では、治安維持が世界では最良であり、危険性のある国からの入国審査も厳重で、トランプ大統領は、日本の後を追いかける立場である。
そのトランプ氏に保護貿易のメリットを教える立場にはないが、日本のデフレ脱却には「アベノミクス」だけでは不足している、と説明するだろう。
雇用の創出は、政府の最重要な責任であり、底辺での働く人たちの賃金水準と、将来の福祉政策を確立する責務を負っている。
日本政府は、トランプ氏の保護主義の先を進んで、世界に模範を示すのだ。(続)