「アベノミクスの第一の矢」は、超金融緩和によって企業が借り入れる金利が低いことを利用して、国内への投資を活発にすることを狙いとした。
その投資増加による需要増によって、市場価格が上昇して【デフレ状態】から離脱ができて、物価上昇率が2%前後になって推移する。
ところが物価上昇率2%の状態になっても、働く人の収入が増えなければ、消費需要は増えることはない。
むしろ、物価上昇分が消費購買力を削ぐので、2%以上の消費減小になることは、理の当然である。
いくら無知な安倍内閣でも、勤労者の給料が増えることは必要だと言い出して、経団連や中堅以上の企業にはベースアップを実施して欲しいと懇願している。
さすがに、大企業経営陣も、ここにきて「ベースアップ」は出来ないと拒否したら、社会的に制裁を被るおそれもあるので、とにかく、交渉には応じる。
ところが、大企業労組のベースアップ要求額は、3500~4500円/月で平均賃金の1~1.5%程度の少額である。
これでは、物価上昇率目標の2%を下回るので、ベースアップが満額回答でも、生活水準は低下するのである。
忘れっぽい「マスメディア」の論調は、リーマンショック時以降はベースアップ要求がゼロであった時期と比較して、久々の「ベースアップ要求」であり、企業側も交渉のテーブルにつく意思表明をしたことを、無邪気にほめている。
忘れてもらってはいけない第一は、2014年4月から消費税が3%増税になることである。
この分をベースアップ要求額に入れなければ、収入減少と同じで1%以上の賃下げ状態が4月以降の全勤労者の生活にのしかかってくるのだ。
マスメディアの責任は、要求金額が間違っていると労組を叱咤するべきなのだ。
もっと忘れてもらっては困るのが、「オイルショック時に労組のベースアップの要求基準」が何であったか、である。
当時は原油価格が急上昇して、諸物価の値上がりで、便乗値上げも含めて物価上昇率は23%に達し、第二次オイルショック後も15%上昇した。
勤労者の生活を守るのが、民間労組の最大責務であるから、当然、ベースアップ金額は、『物価上昇率にプラスアルファ』であった。
経営側の回答は満額ではなくても、生活水準を守るレベルの回答を引き出した。