花好き・旅好き80代の北国女性の日記(ブログ開設18年目)

趣味はガーデニングと家庭菜園、外国旅行だったが、新型コロナ禍と膝の不調、円安が重なり外国は見合わせている。

映画『マーガレット・サッチャー』を観て

2012年03月16日 | TV・映画・音楽・美術

題名から分かる通り、1979年から1990年までの11年間、英国の首相の任にあったマーガレット・サッチャーを映画化したイギリス映画である。
サッチャー役を完璧に演じたメリル・ストリープが、この映画でアカデミー賞主演女優賞を得て話題になったので、上映初日を待って出かけた。メーキャップの出来栄えも去ることながら、メリル・ストリープが演じた言葉使いとその抑揚、演技には目を見張らされた。

映画では、既に認知症を患い、娘の介護に頼って生きているサッチャーの私生活を描きながら、若い頃の家庭の様子や政治家となった経緯、婚約時に夫になるデニスに告げた言葉(「食器を洗って、一生家庭内で過ごす女性にはならない」)などが次々と思い起こされ、折り込まれて行く。
そして男尊女卑思想が根強く、男性議員しかいなかった保守的なイギリス議会に、女性議員として初めて当選し、自己の政治信念を誰よりも強く打ち出す政治家になって行ったマーガレット・サッチャーという1人の女性の姿を浮き彫りにしようとする。
やがて首相に推され、経済政策、教育改革、フオークランド紛争での徹底抗戦などを強行に進めて行き、「鉄の女」と言われるようになる。
彼女は強い政治哲学に基づいて周りが反対する政策でも強行して行くのだが、そんな強引なやり方に周りの反発も強く、最後に打ち出した強権的経済政策で国民や所属政党の支持を失い辞任せざるを得なくなった事が画かれる。
最後まで彼女を支えたのは、ただ一人、夫のデニスだった。先だった夫に認知症の彼女は「あなたは幸せだった?」と問いかける。

私がこの映画を観て思ったことは、女性だったからこそ自分の利益などは考えず、様々な反対にあっても一途に考えを主張し、大ナタを振るう政治をやれたのではという事だった。
私もまた1960年代後半から仕事を始めたので、立場は大きく異なるが、妻、母の役割以外に経済的、社会的にも自立を目指した一女性としての考え方や生き方、それを阻もうとする様々な壁の前で苦悩し、決断、行動する彼女の姿には体験的に重なるものもあり、強く共感した。
当時はまだまだ働く女性を支援する社会的な仕組みは未熟だったので、自立を目指すと言っても家事・育児と仕事の両立は並大抵のことではなく、どうしても家庭生活に何らかの歪を来した人が多かったのではないだろうか。そんな訳でサッチャーと同じく「人生は満足できるものだった?」と家族と自分に問い直したいと思った。

また彼女の在任中、ヨーロッパで起こった経済共同体結成に参加することを拒否したためイギリスは孤立の道を進んだのだが、この間のギリシャ経済破綻に端を発したEUの深刻な経済問題を見ると、彼女の先を見通す目は、現在、イギリスだけでなく世界で再評価されているのではとも思った。

彼女が行った政治は、まだまだ先の人達が歴史の中で評価すると思うが、この映画は大きく動いて来た現代の世界史の一時期に確かな足跡を残したイギリス初の女性首相を、人間的な面で捉える事で多くの人達の共感を得たのではないかと思う。
多くの女性に見てもらいたい映画だと思った。

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2 コメント

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Unknown (ソナタ)
2012-03-19 13:13:57
あばたさん、こんにちは。
やはり週末に観て来たのですね。
私と同じ感想を持たれた様ですね。一人の女性の生き方として共感できましたね。
ただ、彼女が持ち込んだ新自由主義政策が世界にも日本にも波及して、民営化が進んだり、消費税が上がったりした事には批判も強いですね。
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Unknown (あばた)
2012-03-19 12:28:36
sonataさん、こんにちは♪
私も観てきました。
女性であると言うだけで味わうこととなる苦悶。
それでも理想に燃えて国を再建し、敵をよせ付けなかった鉄の女サッチャー、あらゆる困難に立ち向かった一人の女性の凛とした姿に共感しました。
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