腎臓内科(大学病院から週1回応援)に通院している57歳女性の経過が目についた。
昨年9月半ばの休日に、左膝から下腿にかけての腫脹・疼痛で当院の救急外来を受診した。症状から外科(大学病院外科からのバイト)の扱いとなった。深部静脈血栓症が疑われて、造影CTが行われた。
左総腸骨静脈から膝窩静脈までの深部静脈血栓症を認めた。呼吸器症状はなく、肺血栓塞栓症はなかった。抗凝固薬(DOAC、リクシアナ60mg/日)が開始されて、外科外来で経過をみて症状は軽快した。
外科で血液検査・尿検査を毎回していたが、検査結果に異常が出ていた。通院している内科医院から、当院の腎臓内科に腎機能障害(急速進行性糸球体腎炎疑い)で紹介された。当院で行った検査結果(外来で患者さんにコピーを渡している)を見て、尿蛋白と尿潜血が陽性で、正常だった血清クレアチニンが2.26mg/dlまで上昇していたのに気づいたのだった。
内科医院の紹介状によると、20歳代に全身性エリテマトーデスで大学病院で治療を受けて、完全寛解になっていた(当時の判断)。医院での病名はリウマチ性多発筋痛症(PMR)・高脂血症で、プレドニン3mg/日内服が処方されていた。(年齢が50歳代ではあるが、PMRの診断は?)
外注検査の結果、MPO-ANCAが陽性で顕微鏡的多発血管炎(MPA)が疑われた。すぐに大学病院の腎臓内科に紹介となり、腎臓生検が行われた。ANCA関連腎炎・急速進行性糸球体腎炎の診断で、ステロイドパルス療法・プレドニン1mg/kg/日・シクロホスファミドパルス療法が行われて、症状は軽快した。
大学病院退院時はプレドニン20mg/日で、現在は15mg/日に漸減されていた。ステロイド投与により、ステロイド糖尿病が発症してインスリン注射(持効型)とDPP4阻害薬の投与もされている。
大学病院リウマチ科の検査で、抗RNP抗体陽性・抗SS-A抗体陽性・抗SS-B抗体陽性で、レイノー現象・間質性肺炎像もあり、混合性結合組織病+シェーグレン症候群が疑われたとある。
専門的過ぎて、この辺はよくわからない。当方としてはただ、昨年9月の深部静脈血栓症が膠原病と関係していたのかなあと思ったのと、造影CTで静脈血栓症がきれいに描出されているなあと思っただけだ。(抗リン脂質抗体症候群についての言及はないが、検査しているのだろう)
それまでなかった尿蛋白・尿潜血陽性や血清クレアチニン上昇(腎前性・腎後性ではない)があったら、すぐに腎臓内科に紹介しましょうという症例だった。