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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

深部静脈血栓症

2020年07月21日 | Weblog

 腎臓内科(大学病院から週1回応援)に通院している57歳女性の経過が目についた。

 昨年9月半ばの休日に、左膝から下腿にかけての腫脹・疼痛で当院の救急外来を受診した。症状から外科(大学病院外科からのバイト)の扱いとなった。深部静脈血栓症が疑われて、造影CTが行われた。

 左総腸骨静脈から膝窩静脈までの深部静脈血栓症を認めた。呼吸器症状はなく、肺血栓塞栓症はなかった。抗凝固薬(DOAC、リクシアナ60mg/日)が開始されて、外科外来で経過をみて症状は軽快した。

 

 外科で血液検査・尿検査を毎回していたが、検査結果に異常が出ていた。通院している内科医院から、当院の腎臓内科に腎機能障害(急速進行性糸球体腎炎疑い)で紹介された。当院で行った検査結果(外来で患者さんにコピーを渡している)を見て、尿蛋白と尿潜血が陽性で、正常だった血清クレアチニンが2.26mg/dlまで上昇していたのに気づいたのだった。

 内科医院の紹介状によると、20歳代に全身性エリテマトーデスで大学病院で治療を受けて、完全寛解になっていた(当時の判断)。医院での病名はリウマチ性多発筋痛症(PMR)・高脂血症で、プレドニン3mg/日内服が処方されていた。(年齢が50歳代ではあるが、PMRの診断は?)

 

 外注検査の結果、MPO-ANCAが陽性で顕微鏡的多発血管炎(MPA)が疑われた。すぐに大学病院の腎臓内科に紹介となり、腎臓生検が行われた。ANCA関連腎炎・急速進行性糸球体腎炎の診断で、ステロイドパルス療法・プレドニン1mg/kg/日・シクロホスファミドパルス療法が行われて、症状は軽快した。

 大学病院退院時はプレドニン20mg/日で、現在は15mg/日に漸減されていた。ステロイド投与により、ステロイド糖尿病が発症してインスリン注射(持効型)とDPP4阻害薬の投与もされている。

 大学病院リウマチ科の検査で、抗RNP抗体陽性・抗SS-A抗体陽性・抗SS-B抗体陽性で、レイノー現象・間質性肺炎像もあり、混合性結合組織病+シェーグレン症候群が疑われたとある。

 

 専門的過ぎて、この辺はよくわからない。当方としてはただ、昨年9月の深部静脈血栓症が膠原病と関係していたのかなあと思ったのと、造影CTで静脈血栓症がきれいに描出されているなあと思っただけだ。(抗リン脂質抗体症候群についての言及はないが、検査しているのだろう)

 それまでなかった尿蛋白・尿潜血陽性や血清クレアチニン上昇(腎前性・腎後性ではない)があったら、すぐに腎臓内科に紹介しましょうという症例だった。 

 

 

 

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ストレス骨折

2020年07月20日 | Weblog

 内科再来に予約の78歳女性が受診した。いつもは歩いてくるが、車いすにすわっていた。地域医療連携室から、かかりつけの整形外科医の診療情報提供書が来ているという。

 昨年12月に受診した時には、その整形外科クリニックから、「構語障害で脳梗塞が疑われます」という診療情報提供書が来ていた。診察すると確かに構語障害があり、頭部MRIで左放線冠に新規のラクナ梗塞があった。

 一人暮らしなので、症状は軽度で日常生活にはさほど困っていないが入院にした。一般病棟から回復期リハビリ病棟に転棟して、3か月入院していた。

 ずいぶん前に夫と死別していて、お子さんはいない。頼りになる親族もいなかった。気候が良くなるまで、病院で過ごしたという社会的入院だった。(施設入所も考慮したが、生活保護があると施設が限られてしまう)

 

 今回は右股関節痛を訴えて、1週間前に整形外科クリニックを受診した。単純X線では骨折を指摘できなかった。症状から精査が必要と判断して、当院の放射線科(現在は常勤医はなく、週に3回読影の応援のみ)に股関節MRIを依頼していた。

 読影レポートは「右大腿骨のストレス骨折」となっていた。診療所情報提供書には、「本来ならば地域の基幹病院整形外科に紹介すべきですが、一人暮らしで交通手段もなく紹介しがたいので、対応に苦慮しています」とあった。

 ただ今日は付き添いの人がいた。親戚の方かと思ったが、近所のものですという。基幹病院の受診をお願いできませんかと訊いてみると、他に頼める人はいないので連れて行ってあげます、という。ありがとうございます。(移動だけなら介護タクシーでもいいが、受付などをする人がいないと受診は難しいから)

 整形外科クリニックにちょっと戻っていただいて、そちらから外来予約をとってもらうことにした(画像のCDも回してもらう)。

 手術適応があるかどうか病院の専門医に診てもらって、保存的に診るしかなければ当院入院で経過をみることにします、とクリニックに返事を書いた。

 

 ストレス骨折は、通常の骨折のように1回の外力によって発生するのではなく、繰り返し何度も骨に負荷が加わり、微細な損傷が蓄積して発生する骨折になる。

 スポーツや過労によって正常な強度の骨に発生するのが疲労骨折で、骨粗鬆症などで強度の低下した骨に発生するのは脆弱性骨折になる。安静だけで骨癒合が得られなければ手術が必要になる。

 MRIでは、右大腿骨頸部にT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を呈する帯状構造を認めた。

 

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Escherichia albertii

2020年07月19日 | Weblog

 便培養でEscherichia albertiiが検出されて、細菌検査室の技師さんはどうしていいか悩んでいた。相談がありますといって、訊きに来たが、初めて聞く菌でわからなかった。

  先々週の火曜日に内科医院から、腹痛・下痢の45歳男性が紹介されてきた。その2日前から下痢(水様便)が続いていた。その日は腹痛(左側腹部痛)で医院を受診して、体を折り曲げるようにしていたので、そのまま当院に紹介された。何故か、外科に紹介になっていた。

 外科医は感染性胃腸炎と判断して、点滴と血液検査・便培養検査を提出した。血液検査はまったく異常がなかった(白血球正常域でCRP陰性)。点滴して腹痛が軽快したので、整腸剤と腹痛時のブスコパン頓用を処方して帰宅になっている。

 腹部CTを行っていて、外科医は左側の小腸に炎症所見がありそうと記載していた。放射線科の読影レポートは異常を認めないとあった。臨床症状から判断するので、読みすぎかもしれないが、小腸内の消化液が増加しているような気はする(でもこの菌は大腸型?)。

 思い当たる食事はないと記載していた。その腸炎としての症状は本人だけで、周囲にはいない。その後は受診していないので、おそらく症状はしだいに治まったのだろう。

 

 そのEscherichia albertiiだが、2003年に発表された菌で、感染性腸炎(下痢)を来すのだった。大腸菌と誤認されることもある。2016年に検出された菌株を国立感染症研究所に送ると、遺伝子検査をするという案内があった(現在も受けているかは不明)。

 感染管理の指導で来てもらっている先生に訊くと、研究所に送ろうとすると、梱包の指示や臨床情報の提供など面倒なことになるということだった。興味があれば、検査会社でやってくれるところに送る方がいいそうだ。(以前に東南アジアから帰国した若い女性が発疹熱疑いで血清を研究所に送ったが、その後は何の連絡もなかった)

 抗菌薬も感受性は良好で、何でも効くような結果だった。臨床的には、感染性腸炎の起炎菌にはEscherichia albertiiという菌もあるということで、まったく問題はない。

(結局、ある大学病院の検査科で引き受けてくれるところがあり、菌株を提出した)

 

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関節炎にステロイド投与

2020年07月18日 | Weblog

 水曜日に内科の若い先生から発熱・関節痛の93歳男性のことで相談された。

 約3週間前に肺炎・心不全で入院していた。救急外来で診た循環器科医が、肺炎がメインということで内科に入院治療を依頼していた。

 年齢を考慮するとかなり厳しい病状だったが(心肺停止時はDNAR)、幸いに抗菌薬投与・利尿薬投与で軽快した。現在は嚥下調整食3を完食している。後は施設入所待ちになる。

 ところが1週間前から微熱・関節痛(少数関節炎相当)が出現した。両手関節、両膝関節の発赤・腫脹・熱感があり、特に右膝関節が目立つという。右膝関節穿刺をしていて、細菌(-)・白血球(3+)・針状結晶(-)・棒状結晶(-)の結果だった(通常の顕微鏡)。関節液培養は陰性。

 腎機能障害があるので、NSAIDs内服が出せず、湿布で経過をみていたが、症状は続いていた。どうしましょうか、という。症状は少数関節の関節炎で、他疾患は否定的だった。感染症が軽快したと思ったら、発熱・関節炎という経過は結晶誘発性関節炎らしい。たぶん偽痛風だろう。

 膝関節と手関節のX線を確認すると、少なくとも右膝関節内には石灰化像がある。除外診断だから確定はできないが、なにしろ関節液培養までやっているので、化膿性ではない(単関節炎ではないので化膿性は否定的だが)。

 NSAIDsが使用できないので、ステロイドで治療することにした。プレドニン15mg/日を開始して、3日おきくらいに漸減する。金曜日には一番症状が目立つ右膝関節炎も軽快していた。土曜日からは(土日月)プレドニン10mg/日に漸減して、月曜日に関節所見と検査所見を確認して、軽快してればそこからは2.5㎎ずつ漸減していく。

 偽痛風に対するステロイド投与はガイドラインがない。今回は15mg→10mg→7,5mg→5mg→2.5mgと3日おきに漸減でやってみる。

 

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アデノウイルス咽頭炎

2020年07月17日 | Weblog

 木曜日の午後に、感染管理ナース(ICN)から報告がきた。高熱(40℃)と咽頭痛の18歳女性が救急搬入されることになった。発熱外来担当の内科の先生が、新型コロナウイルスの抗原検査(エスプライン)を提出すると言ってきたという。

 県内の新型コロナウイルス感染者は少ないが、最近専門学校生や大学生などの若い人たちに散発していて、小さなクラスターが発生している。

 当地域では感染者は発生していない。先週の土曜日に、患者が発生している県庁所在地の飲食店に行っていたそうだ。感染者との濃厚接触ではない。

 高熱・咽頭痛だと、溶連菌かアデノウイルスで、EBウイルス一応あるかなあ、と思った。要するに咽頭型の鑑別になる。当院では発熱外来担当医が、新型コロナウイルス感染を疑った時は、医師の采配で抗原検査をしていいことになっている(病歴・問診による検査の推奨項目はあるが)。

 会議が2つ続いて夕方までかかった。ひとつは管理者・院長を交えた会議だったので、内科の若い先生が相談の連絡を寄こしたが、それにも対応できなかった。やっと終わって、どうなったかと確認した。

 まず定番の、溶連菌とアデノウイルスの迅速検査、さらにインフルエンザウイルス迅速検査も提出していた。結果は、溶連菌とインフルエンザウイルスの方は陰性で、アデノウイルスが陽性と出た。

 アデノウイルスによる咽頭炎と判断されて、新型コロナウイルスの抗原検査はしていなかった。それでも胸部CTで、肺炎の有無を確認するところまで行っていた。

 白血球15900・CRP12.2で、アデノウイルス感染ではまるで細菌感染のような検査所見が出ることはあるが、細菌感染?にはなる。入院して、点滴とアセトアミノフェンで経過をみることになっていた。新型コロナウイルス感染初期の検査値(白血球正常~低下、CRP5程度までの軽度上昇)ではない。

 

 県内で新型コロナウイルス感染のクラスターが出て、さらに感染者が増えそうだ。感染症科のある県内有数の病院のベットがいっぱいになると、当院にも入院依頼が来るかもしれないと、コロナウイルス対策本部長の先生から言われた。

 担当者としては来たら診るだけだが、さてどうなるか。

 

 

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AST活動

2020年07月16日 | Weblog

 抗菌薬適正使用加算をとるために、抗菌薬適正使用チーム(antimicrobial stewardship team:AST)を立ち上げている。

 といっても、感染症専門医も呼吸器専門医もいない病院なので、外部の専門医の指導を受けながら、見よう見まねでやっているのが現状だ。

 特定抗菌薬使用としてカルバペネム系と抗MRSA薬を届け出制にしているので、それらの抗菌薬が使用されると薬剤師から報告がくる。また検査室から血液培養が陽性だった、大腸菌ESBLなどが検出されたと報告がくると、これに対して担当医がどのように治療しているかを確認している。

 週1回診療応援に来ている感染症専門医に確認してもらって、アドバイスをASTとして患者さんの画面に記事入力(要は普通のカルテ記載)していた。少なくとも週1回は、活動実績を記載しなければならない。

 治療に参加して責任を持つというわけではなく、あくまでアドバイスになる。したがって、「お勧めします」・「可能ならば」という表現にして、担当医の気分を害さないように配慮している。

 医局会で、「加算のために(正しくは診療向上のためだが、そこは伏せて)ASTとしてカルテ上にコメントを入れさせていただきます。よかったら参考にして下さい。」と説明している。

 

 今週の月曜日に、循環器科の先生から尿路感染症の治療についてアドバイスを求められた。たまにしかないことなので、ここは丁重?に対応する。

 心房細動・心不全の89歳男性が、心不全の増悪で5月半ばに循環器科に入院していた。心不全自体はそれなりに軽快している。泌尿器科で前立腺癌・骨転移の治療(ホルモン療法)を受けていた。

 尿カテーテルが留置されていて(尿閉)、無熱時に提出されて尿培養で、大腸菌ESBL・Providencia rettgeri・MRSEが検出されていた。当院では留置カテーテル尿からの尿培養提出は尿カテーテルの途中のところから提出されることが多い。正確には尿バック内の菌になる。

 今回は38℃台の発熱があり、尿路感染症だと思うが、抗菌薬はどれを使ったらいいか、ということだった。肺炎はないようで、他の発熱を来すような疾患も(たぶん)ない。発熱以外のバイタルは安定している。

 

 ASTのコメントとして、「尿路感染症の可能性があります。留置尿カテーテル挿入中のため(カテーテル内・バック内には定着菌あり)、現在の尿カテーテルを抜去して、新規に挿入したカテーテルからの尿(膀胱内の尿)の培養提出をお勧めします。

 尿路感染症は除外診断のため、可能であれば、血液培養2セット提出など他の発熱を来す疾患の検索をお願いします。

 前回の尿培養の結果を参考にすると、大腸菌ESBLが検出されており、カルバペネム(メロペネム)で開始して、培養結果での抗菌薬調整もやむを得ないと思います。MRSEは定着菌と判断され、早急なVCM併用は不要と判断されます。」とした。

 

 メロペネム開始で解熱して、炎症反応も軽快していた。提出した尿培養からは、大腸菌ESBL・Providencia rettgeriが検出されていた。大腸菌ESBLをセフメタゾールで治療するとかっこいいのかもしれないが、そこまでは言えない(自分の患者さんならやってみるが)。

 感染管理加算や抗菌薬適正使用加算をとるような病院でもないが、まあとれなくなるまで頑張ってみよう、とチーム内で話した。(市内の私立病院は感染管理加算が認められなくなったそうだ)

 

  

 

 

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慢性閉塞性肺疾患

2020年07月15日 | Weblog

 昨日地域の基幹病院循環器内科から、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の92歳男性が転院してきた。呼吸器内科ではなく循環器内科で診ていたのは、主治医が当直の時にでも診て、そのまま担当していたのだろうか。

 66歳の長男と二人暮らしだった。その長男の話では、今回悪化する前から、自宅でトイレに行こうとするだけでかなりの息切れがあったという。1週間前に肺炎発症によるCOPD増悪で救急搬送されていた。両側肺背側に肺炎があった。

 入院後は、抗菌薬(セフトリアキソン)の投与とステロイドの投与で軽快しました、とある。ただ先週木曜日(入院3日目)には当院に転院依頼の連絡がきていたことになる。ちょっと早すぎるとは思うが、年齢を考慮すると、またすぐには退院にもっていけず長引きそうな点でも、超急性期病院よりは当院の方が合っている。

 介護タクシーで転院してきて、酸素0.8L/分というそんな刻んだ量で投与できるのかという量だった。看護師さんが酸素飽和度(SpO2)を測定すると、70%台だった。すぐに酸素を1L/分にしても80%にしかならない。

 血液ガスを検査すると、PaO2が55.0mmHg、PaCO2が40.0mmHgだった(O2投与1L/分)。酸素2L/分に上げてSpO2が92~94%になった。

 明らかな高二酸化炭素血症はないので、酸素を高用量にしても大丈夫かとは思うが、上げて血液ガスを再検してみないとわからない。高二酸化炭素血症の時に準じて、SpO2が94%を越さない酸素投与量で経過をみることにした。(その後は酸素1.5L/分で安定)

 こちらが数値をみて慌てただけで、横臥している患者さんは何ということもない。ふだんから低酸素血症で経過していたのだろう。

 年齢を考慮すると身長がある方だが、筋力は低下していた。両下肢の筋肉は歩行訓練をするには心もとない細さだ。リハビリをしても、介助で車いす移乗程度で終わってしまうか。

 酸素吸入はおそらく中止できないので、自宅退院とすれば在宅酸素療法(HOT)導入になる。家庭の介護力を考えると、施設入所になるかもしれないが、在宅酸素療法で引き受ける施設はかなり限られている。肺炎による増悪を断続的に繰り返すようだと、療養型病床のある病院で入院継続もありうる。

 

 息子さんには在宅介護よりは施設入所になりそうで、療養型病床で入院継続になるかもしれない、とお話した。年齢的に増悪時には気管挿管・人工呼吸はしないことで同意してもらった。NPPVについては大人の事情で保留とした。

 息子さんのシャツのポケットにタバコが入っていた。タバコを1日60本吸っているという。父親と同じ病気になる(もうなっている?)ので禁煙した方がいいですよとお話したが、やめる気はなさそうだ。

 

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急性胆嚢炎、血球減少は炎症で改善する?

2020年07月14日 | Weblog

 6月初旬に地域の基幹病院呼吸器内科から、に87歳女性がリハビリ・施設待ちで転院してきた。

 5月に左肺炎・胸膜炎で入院して治療により軽快した。認知症があり、高齢の夫と二人暮らし。家族は、在宅介護は困難のため施設入所を希望していた。といっても子供たちは訳ありで、息子3人娘1人がいるが、ほとんど関わっていない。

 転院の時に二男が来ていたが、何年振りかでかかわったそうだ。長男は遠方在住で、三男・長女はまったく連絡していない(できない)状態だった。

 

 施設待ちでいいかというと、別の問題もあった。汎血球減少症があり、骨髄異形成症候群(MDS)が疑われるという。ただし高齢・認知症ということで骨髄検査はしていない。経過観察で貧血に進行があれば輸血で対応が必要なので、療養型病床への入院継続も必要になるかもしれない。

 実際に、当院に来てからも貧血の進行があり、6月と7月にそれぞれ2日間濃厚赤血球2単位ずつを輸血していた。断続的な輸血が必要になると、外来通院できる(外来で輸血できる)施設に入所か、輸血の対応を依頼できる療養型病床のある病院への転院を目指すしかない。

 

 昨日の昼ごろから心窩部痛があった。自制可で圧痛は軽度にあるかというくらい。心電図でST低下があるので(慢性心房細動でDOAC内服あり)、むしろ心筋梗塞(下壁梗塞)を心配して心電図を再検したくらいだった。

 夜間に病棟から電話が来て、心窩部痛がひどいのでどうしましょうかという。発熱はなかった。アセリオ注(2番目はソセゴン注の指示)で対応してもらうことにした。先方の病院から送られてきたCT画像で、胆嚢内に胆砂があったなあと思った。胆石胆嚢炎が疑われるので、午前中に腹部エコー・腹部CTで検査することにした。

 午前中に病棟で診察すると、胆嚢炎の所見がある。さっそく腹部エコーを行うと、胆嚢が腫大して壁が肥厚していた。胆嚢結石(小結石と胆砂)があり、さらに胆嚢内はdebrisが充満していた。

 腹部CTで確認すると、胆嚢の所見は同様で胆道系の拡張はなかった。炎症反応の上昇と肝機能障害がある。胆嚢結石・急性胆嚢炎の治療として、緊急手術か胆嚢ドレナージ(PTBGD)を要する。

 外科の先生に相談したが、内科疾患がいろいろあるので、いったんPTBGDを行うにしても、緊急手術になる可能性がある。現在当院外科は麻酔科常勤医も不在となって、待機手術しか組めなくなっている。紹介にしてほしいという。

 基幹病院外科に連絡すると受けてくれたので、救急搬送とした。家族で連絡できる唯一の存在である二男は仕事で他県に出かけていた。夕方なら先方の病院に行けるというが、病院から電話が行くので連絡できるようにしてほしいと依頼した。

 

 それにしても、汎血球減少があり、白血球1100~1300(好中球30~48%)・Hb6.7~7.1g/dl・血小板7.4~11.3万だった。Hbは輸血後なので10.9g/dlに改善しているが、炎症に反応して白血球と血小板もそれぞれ3800(好中球91.0%)・血小板19.7万と上昇していた。

 炎症があると反応する力(チカラ)はあるんだ、と変に感心してしまった。

 

 

 

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脳幹梗塞

2020年07月13日 | Weblog

 先々週、地域の基幹病院脳神経内科から病気の問い合わせがきていた。

 当院内科に通院している72歳男性が、6月末に脳梗塞で入院した。プレドニゾロンを内服しているが、患者さん本人に訊いても、どんな病気で治療しているかわからないので、投与の理由を教えてほしい、という照会だった。

 当院内科にはリウマチ性多発筋痛症(PMR)と糖尿病で通院している。リウマチ性多発筋痛症は説明しても、患者さんは正確な病名を覚えていない。いないが、大抵は「リウマチなんとかという病気」で通院している、と言う人が多い。

 この患者さんは理解力もあり、きちんとしている方なので、そのくらいは言えるはずだがと思いながら、診療情報提供書を提出(FAX)した。

 

 3年前の8月末から両肩・上腕・腰部・大腿部の痛みで動きが悪くなった。糖尿病で通院していた内科クリニックから10月初めに、「全身倦怠感・多発関節炎」として当院に紹介された。動けないので、入院精査を希望しています、ということだった。

 体重は1か月で5kg減少して、微熱も続いていた。しゃがんだ姿勢から立ち上がるのが一番ひどいということだった。症状を聞いただけで、リウマチ性多発筋痛症が想起された。

 白血球10000・CRP14.5・血沈92mm/時と炎症反応が上昇していた。鑑別として、抗CCP抗体・抗核抗体の提出や血液培養2セット採取を行ったが、異常はなかった。

 1か月以上経過(我慢)していて、炎症反応も高値だったので、プレドニゾロン15mg/日で開始した。症状と炎症反応の改善は順調だった。

 問題は糖尿病で、プレドニゾロン開始前の血糖が、SU薬・DPP4阻害薬・メトホルミン・SGLT2阻害薬でHbA1c7.6%だった。プレドニゾロンを開始すると、相当な高血糖になると予想された。

 インスリン強化療法を開始した。患者さんは、インスリン自己注射も血糖自己測定もすぐにマスターしてちゃんと治療できた。これは治療する方としては大変助かる。

 その後外来通院になった。プレドニゾロン5mg/日まで漸減して、治療開始から2年経過した。症状はなく、炎症反応も陰性化しているので、プレドニゾロンを漸減中止することにした。

 ところが予想に反して、プレドニゾロン4mg/日で再燃した。初発の時よりは症状と炎症反応上昇が軽度なので、プレドニゾロン10mg/日に戻して、再度漸減を開始した。

 再発量よりわずかに上乗せしたところまで漸減して、そこで漸減を中止することになる。漸減してもプレドニン5mg/日までの予定だった。現在プレドニゾロン6mg/日。

 

 今日当院の回復期リハビリ病棟に転院してきた(神経内科の扱い)。先方で撮影した頭部MRI画像を見ると、右橋に脳幹としては結構な大きさの梗塞巣が描出されていた。

 患者さんは自力歩行はできるので、画像の割には被害?が少なかったことになる。長男夫婦と妻と同居で家庭環境には問題がない。ちょうど明日は内科外来の予約があり、PMRと糖尿病の治療薬は内科で調整する。

 長いリハビリにはならないようなので、抗血小板薬も内科で処方する形で外来治療になるだろう。脳梗塞の発症は残念だった。

 

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S状結腸癌の腸重積

2020年07月12日 | Weblog

 金曜日の朝、消化器科医に最近の内視鏡検査の件数はどうですか、と訊いた。木曜日は上下部内視鏡が17件で当院としては多かったという。S状結腸癌の腸重積もあった、という話が出た。

 S状結腸の腸重積は見たことがない。消化器科医は、これまで数例あってと涼しい顔だった。頻度は見当がつかないのでなんともいえないが、そんなに頻繁にあることではない。

 患者さんは、泌尿器科クリニックに高血圧症と前立腺肥大症で通院していた。それぞれ処方は1剤ずつでシンプルなものだった。数日前から水様便がひどく、止痢剤(ロペミン)を処方を投与したが改善しないので診てほしいと、紹介されてきた。

 腹部単純X線で結腸ガスが、結腸そのままの形で貯留している。下腹部にはガス像がなく、ぽっかりと空いていた。腹部CTで直腸内に腸管が入り込んでいる。

 緊急で大腸内視鏡検査が行われて、S状結腸癌が先進部となって直腸内に入り込んでいた。その先に進むのは困難で、内視鏡的に整復を試みるのは危険と判断された。

 外科手術の可能性もあり、基幹病院消化器内科に紹介していた。

 患者さんは、これまでも腸が出てきていたと言っていたそうだ。通常ならば脱肛だが、腸重積が出没していたのだろう。今回は嵌頓したままで戻らないかもしれない。

 患者さんが下痢と表現したのは、狭窄部を通過した便汁が少量頻回に流れてきていたもので(便意が続いていた)、実際は便秘(排便困難)の症状になる。

 

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