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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

前立腺炎

2020年04月11日 | Weblog

 金曜日に68歳男性が前日からの高熱で受診した。発熱以外の症状はないというが、尿が出にくい感じがするというのが、量の問題なのか、炎症の問題なのか。

 血液・尿検査をすると、白血球23300・CRP19.7と炎症反応が高値だった。尿検査はなかなか排尿がなく、結局導尿での提出になった。RBC>100/HPF、WBC>100/HPF、細菌(+)で尿路感染症の所見があった。

 CTで前立腺腫大があり、内部濃度がもやもやしている?様にも見える。血清PSAを追加すると、93.4ng/mlと上昇していた。前立腺肥大症による排尿困難からの尿路感染症の可能性もあるが、前立腺炎ではないか(癌+感染症の可能性もあるが)。

 抗菌薬治療後に血清PSA値が低下すれば炎症による上昇と判断される。悪寒はあるが、悪寒戦慄というほどではないそうだ。血液培養・尿培養提出後に、抗菌薬を開始とした。

 県の指示で、今年4月から自治医大卒の若い先生に来てもらっている(義務年限の自治体病院勤務)。担当してもらって、来週泌尿器科医(当院は非常勤医のみ)と相談することにした。

 

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心不全の増悪

2020年04月10日 | Weblog

 循環器科に通院している79歳男性が、咳・微熱で月曜に外来を受診した。ふだんの担当医ではないが、循環器科のトップの先生が胸部X線検査をして肺炎はないと判断した。内科系診察室にいたので、ちょっと見てと言われて当方も確認した(さっと見ただけだった。ちゃんと見なければ。)。

 この患者さんが水曜日の午前0時過ぎに呼吸困難で救急搬入された。当直は大学病院からバイトで来ている外科医(大学院生)だった。

 胸部X線・CTで両側胸水(葉間胸膜の肥厚も)・肺うっ血を認めた。当直医が新型コロナウイルス感染症も否定できない、と騒いて感染管理ナースが呼ばれたりした。個室に隔離されて入院となった。(当地域ではまだ新型コロナウイルス感染症の患者は発生していない。感染者の出ている都市部に行くこともない。)

 水曜日の朝に来て、画像を確認したが、心不全の増悪と思われた。もともと、陳旧性心筋梗塞((前壁・下壁)+心房細動がある。心電図は、V1-2でpoor R wave progressionがあり、Ⅱ・Ⅲ・aVFで異常Q波が残存している。処方はアゾセミド・スピロノラクトンにサムスカ(7.5㎎錠が半錠)・ビソプロロール0.6245㎎錠2錠など、けっこうフルで入っている。

 胸部聴診上はfineなcracklesが聴取された(翌日軽減)。急性間質性肺炎もちょっと考えた。まず心不全増悪として利尿薬フロセミド注で十分な排尿がみられた。

 すでにコロナウイルスPCR検査を出さないと済まない雰囲気になっていたので、その日に提出した(陰性確認として)。木曜日に陰性と判明した。(陽性率が60~70%らしいので偽陰性がありうるが、そもそも状況・経過からほとんど疑っていない)

 利尿薬投与で、胸部X線像で肺陰影が軽減していた(最初の月曜日のX線くらいに戻った)。間質性肺炎でもなく、うっ血・水腫でいいのだろう。

 木曜日に大学から呼吸器外来に来てもらっている先生に訊いてみると、水でしょうという。DOAC(エリキュース)を内服しているので血痰の有無(肺胞出血)、漢方薬など薬剤性肺炎をきたしやすい薬の有無を確認された。なるほど、そういう疾患が鑑別に上がるのか。

(胸部X線は左が月曜日、真ん中が水曜日、右が木曜日:胸部CTは水曜日)

 

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単球性白血病?

2020年04月09日 | Weblog

 3月までいた内科の若い先生が肺炎で診ていた77歳男性は、血球減少(貧血と血小板減少)もあった。

 両側下肺野背側に浸潤影があり、随伴性胸水もあった。解熱して(といっても37.0℃前後で推移)炎症反応は順調に軽快していたが、酸素飽和度の回復が遅かった。

 時間をかけて経過をみていると改善が期待されるが、のんびり診ていられない事情があった。血球減少で通院してる内科医院から地域の基幹病院の血液内科外来に紹介されていた。

 当院入院後の末梢血像は、貧血(Hb6g/dl台)と血小板数減少(4.2~6.4万)があり、単球が50%を占めていた。

 外来で輸血を行ったらしい。そして今週末に外来で骨髄検査が予定されていた。先月末の時点では、酸素吸入3L/分で退院は難しかった。若い先生が、検査入院は可能かどうか問い合わせると、常勤医ではないので(大学病院からのバイト)できないと言われた。

 若い先生から引き継いで、利尿薬少量を追加して経過をみて、胸水も肺炎の陰影も軽減はしてきた。ただしリハビリも進んでおらず、退院しての外来受診は難しい。

 検査入院をお願いするとすれば、がんセンターの血液内科しかない。電話で事情をお話して診療情報提供書を送った。来週転院で3日間がんセンターに検査入院して(骨髄検査)、当院にまた戻ってくることになった。

 検査後に治療するのであればもっとかかるが、この患者さんは慢性腎臓病(血清クレアチニン2mg/dl)もあり、治療の適応はないと判断されたのだろうか。

 

 以前、外科に入院した高齢女性は末梢血検査で単球70%台と著明な単球増加を認めた。外科治療の必要もあったので、相談されて骨髄穿刺を行った(判断は外注になる)。慢性単球性白血病の急性増悪と診断されて、がんセンターに転院になった。

 たまたまその時の外科主治医が、外来でその患者さんを診察することがあり、「ずいぶん元気だったが、治療できているんだ」と驚いていた。

 

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わからない肺陰影

2020年04月08日 | Weblog

 透析を受けている40歳代前半の男性は、2月末にインフルエンザ(A型)になり、いったん症状軽快した後に、再度発熱が続いた。

 3月初めに透析担当医が胸部X線を行って異常なしとしていた。3月半ば近くに内科を受診した時に確認する、左肺に淡い陰影が散布していたので、胸部CTで確認した。インフルエンザ後の肺炎(細菌感染)として抗菌薬を投与して、解熱・炎症反応の軽快を認めた。(先天性食道閉鎖の術後で食道の位置が違う)

 それで終わりかと思ったが、また発熱が続いた。左肺の陰影が軽快していたが、今度は右肺(S6)に淡い陰影が出現した。どういう機序かわからなかったが、抗菌薬投与でまた軽快した(と思った)。

 4月になって、高熱で夜間に救急外来を受診した。胸部CTで右肺に淡い陰影が広がっていた。当直医が新型コロナウイルス感染症疑いとして、保健所にPCR検査の依頼をした(前月からの経緯はわからなかったらしい)。

 大学病院から呼吸器外来に来てもらっている先生に相談すると、何らかのびまん性肺疾患で気管支鏡による精査を勧められた。やはりPCR検査陰性を確認してからの紹介がよいと言われた。

 CR検査は陰性だった。感度は60~70%らしいので疑いは残るが、1か月以上の軽快増悪の経過が合わないのではないか。地域の基幹病院呼吸器内科に紹介したいと連絡したが、この時期なので画像をみてから、判断すると言われた。(事務に依頼してCDを直接病院にもっていってもらった)すぐに入院精査とするほどではないそうで、外来に紹介してほしいという。

 患者さんは高熱で受診した翌日には解熱して、元気そうだった。家庭内で悪化して、病院に入院すると軽快するというのは過敏性肺臓炎の経過だが、入院はしていない。発熱した時に白血球増加を認めるが、CRPがまったくといっていいくらい陰性なのもよくわからない。専門医に診断してもらうしかない。

 

 

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肺膿瘍

2020年04月07日 | Weblog

 先週の木曜日に、整形外科のリウマチ外来(大学病院から)に通院している87歳女性が発熱と呼吸困難で救急搬入された。

 胸部X線で左肺に広範な陰影を認めて、胸部CTで膿胸が疑われた。肺炎随伴性の胸水も否定はできなかったが、穿刺すると粘稠な淡黄色の液体が吸引された。白血球16600・CRP37.0と著明な炎症反応上昇がある。

 膿胸として地域の基幹病院呼吸器内科に連絡して、搬送とした。受診の返事には、胸腔ドレナージで乳白色の膿汁が排出されて、ABPC/SBTで治療すると記載してあった。たぶん改善してもすぐには退院できないので、転院で戻ってくるだろう。

 リウマチ外来の治療は、リマチル、プレドニン2mg/日、NSAID+トラムセットが処方されていた。症状と?炎症反応がふだんより上昇したことなどで、プレドニン10mgが追加となり、その後5㎎追加に漸減されていた。後から見ると、ゆっくりと肺疾患が進行していたのかもしれないが。

 

 今日は保健所の依頼で新型コロナウイルスのPCR検査を4名行う予定。ほとんど本人の希望というのも入っている。

 

 

 

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低カリウム血症

2020年04月06日 | Weblog

 内科医院の先生が、何故か地域の基幹病院ではなく、当院の内科外来に低カリウム血症の54歳女性を紹介してきた。内科専攻医の若い先生が外来で診て、低カリウム血症による脱力で3回入院した。

 原因不明のため、大学病院の腎臓内分泌を担当する内科に紹介していた。若い先生は3月いっぱいなので、大学病院から当院転院になる時は担当してほしいと依頼されていた。

 結局転院の話はなく、大学病院退院後は当院の内科外来通院になった。今月から、大学病院の腎臓内科の先生に手伝ってもらうことになった外来に通院することになる。

 大学病院では尿細管チャネル異常を鑑別にあげて検索したが、当てはまらなかった。利尿薬乱用や自己誘発性嘔吐(要するに自分で口に指を入れて吐く)を疑ったが(偽性バーター症候群)、そういう事実はなかった。

 しかし通常の食事摂取が1~2割にとどまり、嘔吐を契機に一気に食事摂取が減量した既往などから、拒食症患者の低カリウム血症が示唆されたそうだ。なんでも、摂食不良の患者では尿中カリウムが異常に排泄されるのだという。

 治療はカリウム製剤の補充を継続して、悪化した際には点滴静注での投与を行うしかないのだった。また入院することもありそうだ。

 

 「新型コロナウイルス感染症」(医療科学社)を購入したが、本というよりほとんどパンフレット。岩田健太郎先生編集の雑誌「J-IDEO」(中外医学社)の別冊が出るので、それを待つことにした。

呼吸器内科医が解説! 新型コロナウイルス感染症 ― COVID-19 ―

 

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「援助者必携 はじめての精神科」

2020年04月05日 | Weblog

 土日は「援助者必携 はじめての精神科 第3版」春日武彦著(医学書院)を読んでいた。これまで初版・第2版と購入してきたが、今回は全面改稿ということで、よりわかりやすい記載になっている。

 境界性パーソナリティ障害(BPD)を筆頭とする、困った人たちへの援助、困った人たちからのクレームにどう対処するかということが、実践的に(諦めも含めて)書かれている。

 医師・看護師を始め、MSWや苦情担当の事務職員の必読書だと思うが、当院でこの本を読んでいる人はいるのだろうか。

商品写真

 

 県内の新型コロナウイルス感染症の発生数は関東圏などに比べれば、まだ少ない。県内の感染症病床はまだ完全には埋まっていない。当院でのPCR検査はまだ3件に留まっている。しかし今後首都圏からの流入で一気に広がる可能性がある。

 先週の会議では、感染病床が埋まった時から移行期・蔓延期として一般病床に新型コロナウイルス感染症患者を入院させるとされた。

 各病院が院内の1病床を専用の病床に変更することにしているが、それだけでも他の疾患への対応力は低下する。1病床でもあふれた時は、医療崩壊でコントロールが付かない状態になる。

 

 

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GMカンファランス2019 第3回 国際医療福祉大学

2020年04月04日 | Weblog

GMカンファランス2019
第3回 国際医療福祉大学からの3症例 大平善之先生

26歳男性 右目とその周囲の痛み
・2日前の午後から右眼とその周囲の痛みが出現し、近医眼科では眼圧は正常であり、結膜炎の診断のもとに点眼薬を処方されたが改善しないため、当科を受診した。
・痛みは持続的で夜間覚醒と伴う。受診日の朝から悪心も出現した。光過敏や音過敏はない。
・既往歴、家族歴、生活歴に特記事項なし。
・体温36.7℃、血圧96/62mmHg、脈拍86/分
・右眼球結膜の充血を認め、右前額部に触れると深いな違和感を生じる
・頭頚部に皮疹、雑音や髄膜刺激徴候を認めない。眼球運動は正常。

キーワード
・右眼とその周囲の痛み 不快な違和感
  ↓(SQに置き換えると)
・片側 頭痛 異常感覚

翌日、三叉神経第1枝領域に皮疹
Hutchinson徴候あり

その後の経過
・直ちに開始した1週間のアシクロビル全身投与および眼軟膏により症候は改善した。
・受診前の結膜炎および受診時の悪心は、それぞれ帯状疱疹の眼圧上昇を含む眼合併症によると考えられる。
最終診断
・眼部帯状疱疹とそれに伴う眼合併症

眼部帯状疱疹Hwrpes Zoster ophthalmicus
・約50%で眼合併症を引き起こし、最多は結膜炎(結膜充血、眼痛、流涙など)
・ぶどう膜炎、網膜炎を来すと視力に影響することあり
・三叉神経第一枝領域の帯状疱疹で、鼻根部、鼻尖部に皮疹→眼合併症の頻度が高くなる(Hutchinson徴候)(眼科コンサルトを要する)
・角膜病変や失明の確率を減少させるため、早期発見・治療が必要
・帯状疱疹では、障害されたデルマトームに一致する皮膚異常感覚(dysesthesia or paresthesia)が皮疹に3~5日先行しうる
(参考)痛みに関する言葉の定義
(日本ペインクリニック学会用語集 改訂第4版)
・不快な異常感覚:dysesthesia
・不快ではない異常感覚:paresthesia
・通常、痛みを感じないしげきによって生じる痛み:allodynia

Take Home Massage
皮膚異常感覚を伴う片側痛は、帯状疱疹を想起する

(質問)治療は帯状疱疹の皮疹が出るまで待つのか出てなくても
開始するのか
(回答)ケースバイケース。眼合併症があれば治療開始。胸部などは皮疹が出てから治療することも。皮疹が出たらすぐに受診、あるいは治療薬を処方して皮疹が出たら内服開始。
(生坂先生からコメント)三叉神経痛は第3枝領域に一番多い帯状疱疹は第1枝領域に多い

 

40歳女性 四肢のむくみと関節痛
・受診10日前に37℃台の微熱、頭痛があったが改善した。
・2日前の起床時に両手、両下腿のむくみを自覚し、1日前から37℃代の微熱、頭痛も伴うようになり受診した。
・両手は動かしにくく、動かすと痛みがある。既往歴に特記事項なし。
・約3週間前に2歳の子どもに感冒様症状があった。
・体温37.3℃
・両手指関節に自他動時痛を認める。
・顔面、四肢に明らかな皮疹は認めない。

キーワード
・手足 むくみ 手指の痛み
   ↓(SQに置き換えると)
・四肢 浮腫 多関節炎

関節炎の鑑別疾患
急性・多関節炎
・細菌性関節炎(感染性心内膜炎、淋菌性)
・ウイルス性
・慢性多発関節炎の初期

検査所見
・一般血液・生化学検査
WBC4800/µL、RBC372万/µL、Hb11.6g/dl、MCV95fl、血小板35.9万/µL、Fe54、フェリチン100ng/ml、CRP0.09
・自己抗体
C3 72mg/dL(86~160)、C4 9mg/dL(17~45)、補体価16.8CH50/ml(25.0~48.0)、抗核抗体陰性、抗CCP抗体陰性
・ウイルス抗体
ヒトパルボウイルスB19抗体 IgM陽性

その後の経過
・NSAIDsの内服による対症療法で、関節痛、四肢の浮腫、微熱は数日で改善し、指輪も容易に外せるようになった。

最終診断
成人ヒトパルボウイルスB19感染症

成人ヒトパルボウイルスB19感染症
・暴露後、約1週間でウイルス血症→発熱などの全身症状。17~18日後に皮疹、関節症状
・成人発症では顔面の皮疹を認めるのは20%以下
・成人では四肢の浮腫、関節痛などを認める場合が多い。手指、手、肘、足関節を対称性に侵す→関節症状が残存することあり

Take Home Massage
四肢のむくみ・関節痛の鑑別にヒトパルボウイルスB19感染症を含める
(小児との接触)

 

63歳女性 四肢の脱力
・2か月前の或る日から両肩の痛みが出現し、寝返り、着換え、トイレの便座に座るのが難しくなった。
・1か月前から両手に力が入りにくくなったため、整形外科、膠原病内科を受診したが、原因不明であり、当科を紹介受診した。
・来院時には痛みはなく、四肢に力が入れないと訴える。症状は起床時に悪化を認める。
・既往歴、生活歴、家族歴に特記事項なし。

(患者さんの動画)
両上肢の挙上、立ち上がりが痛い
座る時に中腰で止まっている(筋力低下ではない)
筋痛があると、筋力低下はなくても、痛いので力が入らない(結果、脱力になる)

・体温36.8℃、血圧108/62mmHg、脈拍72/分、酸素飽和度99%
・両上肢の挙上、椅子からの立ち上がり及び立位からの座位へ体位変換が困難
・等尺性負荷運動では筋力低下を認めない
・上下肢の深部腱反射は亢進、減弱、左右差なし バビンスキー反射は陰性

尿検査および一般血液・生化学
尿検査異常なし
WBC11300、Hb10.5g/dl、血小板51.3万、血沈123mm/時、CRP8.54mg/dl、AST 14、ALT 14、γ-GTP 20、CK 53、BUN 11、血清Cr 0.59、Na 140、K 4.3、Cl 102
特殊検査
抗核抗体<40倍、抗CCP抗体<0.6、MPO-ANCA<1.0、PR3-ANCA<1.0、C3 182mg/dl(86~160)、C4 43mg/dl(17~45)、補体価81CH/ml(<0.5)、プロカルシトニン0.0038ng/ml(<0.5)
(プレドニンン15mg/日後の患者さんの動画)
その後の経過
・プレドニン15mg/日内服を開始したところ翌日には症状改善傾向となり、3日目にはほぼ発症前のADLに戻った。
最終診断
リウマチ性多発筋痛症

リウマチ性多発筋痛症
・50歳以上、特に70~80歳代に多い
・突然~急性発症の頸部、肩、臀部(四肢近位部)の著明な痛みとこわばり(特に朝のこわばりは高率)
・治療:プレドニゾロン10~15mg/日
・50歳以下、進行性の経過、朝のこわばりの欠如、少量プレドニゾロンが奏効しないなどの非典型例では、悪性腫瘍を含めた他疾患を考慮する

Take Home Massage
脱力では「痛み」と鑑別する
高齢者の急性発症の四肢近位部痛はリウマチ性多発筋痛症を想起する

(生坂先生からのコメンント)
日本の高齢女性は痛みを訴えないことがある。脱力さえ訴えないことがある。痛いんだけど言わない。痛みではなく、貧血・体重減少の精査で受診する。痛みを訴えないのに、湿布を貼っている
(大平先生)
本症例も湿布を貼っていた。痛いかと訊くと、「気持ちがいいから」と答えた。

 大平先生の、回答者に対する突っ込み方や答えの引き出し方は生坂先生にそっくりだった。今年は学会が軒並み延期・Web配信への切り替えになっている。GMカンファランスもなくなるかな。

 

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B型肝炎

2020年04月03日 | Weblog

 2月に歯科医院に勤務しているが34歳女性が処置具を手に刺してしまった。HBワクチンは受けていなかった(HBs抗原・HBs抗体は陰性)。患者さんはB型肝炎で治療した既往があるらしい。

 歯科医院では、患者さんの感染症検査はしないと言っているそうだ。そして、受診検査費用とHBグロブリン注についてはお金を出すが、HBワクチンのお金は出さないとも言われてきていた。

 HBワクチンは自費でも受けましょうと勧めたが、お金は出したくないのでしないと言われた。後になって後悔しても遅いのでと、しつこく何度も勧めたが承諾しなかった。

 1か月目の検査に来るのが遅れて、1か月半経過したところで受診して検査を受けた。HBs抗原陰性・HBs抗体陽性になっていた。その間特に症状はなかった。

 感染したとしてHBs抗原はこんなに早く消失して、HBs抗体はこんなに早く出現するのだろうか。大学病院消化器内科の肝臓グループの先生が来た時に相談することにした。

 

 

 

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PMRのビデオ

2020年04月02日 | Weblog

 久しぶりにCareNeTVの「Dr.須藤のビジュアル診断学」を見返している。10年以上前の放送になるが、PMRの患者さんの治療前後のビデオが挿入されているのでわかりやすい。

CareNeTV

Dr.須藤のビジュアル診断学
第8回PMRと類似症例

80歳男性 発熱・右肩痛
現病歴:
・8日前より発熱37.8℃あり
・3日前近医を受診。LVFXが処方された。当日採血施行。
・症状改善なく、検査にてCRP15.1、WBC10000。尿一般検査:潜血・蛋白・糖は陰性。
「発熱、咳嗽、関節痛」の原因精査のため紹介された。
身体所見:
・BP180/98、P78/分、体温38.0℃
・眼瞼結膜 貧血・黄疸なし
・浅側頭動脈は両側触知し圧痛なし
・咽頭発赤なし、頸部リンパ節腫脹なし
・心音:清、呼吸音:右下肺野にわずかにwheezeのみ
・四肢:右上肢挙上困難、下肢浮腫なし、関節腫脹なし
(ビデオ供覧)
・半年前まではテニスを楽しむほど活動的で、妻とよく散歩に出かけていた。
・3か月くらい前に両足のつけ根あたりに痛みを自覚するようになり、妻との散歩を休むようになった。また歩行時に代替の疲れを自覚するおうになっていた。
・3週間くらい前から右肩の痛み、挙上困難あり、トイレで立ち上がる時に手で支えなければならない。寝返りが不自由になっていた。
・1週間前より右肩・上肢痛に津和得て発熱を伴うようになった。
検査所見:
・WBC9590、Hb12.7、Ht39.8、血小板37.3万
・CRP13.25mg/dl、ESR109mm/時
・血液生化学・尿検査異常なし
・血液培養2セット陰性
・抗核抗体陰性、RAテスト陰性
・甲状腺機能正常域、筋原性酵素正常域
・心エコー疣贅なし、TR中等度、EF66%
・腹部エコー異常なし
・上部消化管内視鏡:胃亜全摘出後
・便潜血陰性

臨床経過
・各種検査より感染症、悪性腫瘍は否定的と考え、リウマチ性多発筋痛症の診断でPSL15㎎/日を開始。開始当日夕方より劇的に筋痛の軽減を認め、翌日よりすみやかに発熱は焼失。
・PSL15㎎開始翌日
「先生はあんなこといってたけど、半信半疑だった。でも朝飲んで夕方にはウソみたいに痛みがはなくなって驚いた。痛みは10から2くらいまでよくなった。」
・PSL15mg開始3日目
「首を回すのが楽になった。良くなって初めてわかった。(以前は首を動かさず状態全体を回旋していた)

 

赤沈>100mm/時となる疾患
・悪性腫瘍(多発性骨髄腫)
・結核
・亜急性甲状腺炎
・感染性心内膜炎
・骨髄炎
・リウマチ性多発筋痛症・側頭動脈炎
・血管炎症候群

リウマチ性多発筋痛症(PMR)の臨床像
高齢者に多く、50歳以下はまれ
頸部・肩・腰部・股関節・大腿・時に体幹に筋痛
典型的には突然の発症
筋痛は対称性で肩から始まる
夜間痛のため起き上がり、着衣困難
体重減少、食欲不振、うつ病
他覚的には関節炎の所見は認めない
著明な赤沈亢進
少量ステロイド(PSL10-20mg/日)が著効する

PMRの診断・治療上の注意
Key word
高齢者が「全身が痛い」と訴えてきた(頸部・肩・腰・大腿)
・貧血、体重減少
・赤沈の著明亢進(50mm/時以上)
・抗核抗体・RA陰性
側頭動脈炎の合併
・眼症状の出現に注意する
・失明は不可逆的で治療は反対側の失明予防
悪性腫瘍、感染症の否定が重要
PSL15㎎であっても免疫抑制による合併症がありうる
・帯状疱疹などのウイルス感染、結核

一見PMR症例
 思い込みは危険!
 どこか違う、何かが変!

79歳女性 後頸部痛
・3週間前より発熱、咳嗽
・1週間前より足の筋肉が痛い
・3日前より後頸部痛があり、痛みのため首が回せない
・起床時には首から頭にかけて硬くなり自分では起き上がれず
・体温37.8℃、痛みで頸部回旋ができず。頸部圧痛軽度。
・WBC8280、赤沈83mm/時、CRP11.54
・頸椎単純X線:C5/6の軽度の椎間板炎?ヘルニア?
・MRI:軽度脊柱管狭窄
・入院4日目に左浅側頭動脈の軽度圧痛
・入院6日目より左足関節炎ありNSAIDs開始
・入院8日目側頭動脈生検施行
・入院12日目病理では側頭動脈炎の所見なし
・NSAIDsにて症状改善

環軸関節偽痛風Crowned dens syndrome
・頸椎CTにてC1/2関節(環軸横靭帯)に石灰化
・両膝関節半月板、手関節などで石灰化あり偽痛風と診断

68歳女性 全身が痛い
・2日か月前から体幹からはうぶの痛みを自覚し、寝返りや起き上がりに困難を自覚
・38℃の発熱あり、5kgの体重減少
・来院時には頸部、廃部、両肩の痛み
・診察上は関節炎の所見なし、筋肉の圧痛なし
・WBC4700、Hb8.5、Ht26.1、赤沈147mm/時、CRP4.16
・当初はリウマチ性多発筋痛症の可能性を考えた

臨床経過
・胸部単純X線 転移性骨腫瘍疑い
・腹部US・CT・上部消化管内視、鏡異常なし
・便潜血陰性
・乳腺・甲状腺エコー異常なし
・骨スキャン 全身骨の転移性腫瘍疑い
・乳腺外科医にコンサルト
詳細な触診にて腋窩に小リンパ節腫脹あり

Occult breast cancer
・単純X線にて全身骨の転移性腫瘍
・原発巣検索では乳腺に腫瘤を認めなかったが、腋窩リンパ節より乳癌と診断

73歳男性 肩痛、頸部痛、嚥下痛
・4日前の起床時より両肩の痛み
・3日前から首筋、嚥下痛、背部痛
・前夜には両肩痛、頸部痛が安静時にもあり動かせないほどとなった
・激痛のため安静が困難で顔をしかめる
・嚥下痛も自覚
・両肩、背部に圧痛なし
・WBC10800、ESR65mm/時、CRP10.61
・胸部X線異常なし

咽後膿瘍Retropharyngeal abscess
・詳細な診察にて頸部右側に圧痛
・耳鼻咽喉科入院にて切開排膿

PMR類似症例
・79歳女性 後頸部痛
→環軸関節偽痛風Crowned dens syndrome
・68歳女性 全身痛、赤沈亢進
→乳癌(occult breast cancer)の多発骨転移
・80歳男性 全身痛
→腸球菌菌血症 ペースメーカーリード感染
・70歳男性 不明熱、近位筋痛、筋力低下
→前立腺炎
・70歳男性 右肩痛、頸部痛
→咽後膿瘍Retropharyngeal abscess
・45歳男性 不明熱、赤沈>100
→亜急性甲状腺炎

・いずれの症例も「全身痛、focus不明の発熱、赤沈著明亢進」などから当初PMRを疑ったがのちに否定された
感染症、悪性腫瘍を否定することは非常に重要である

51歳女性 発熱
・入院10日前より発熱、左頸部リンパ節腫脹あり2か所の医療機関で抗生剤が投与されたが高熱が持続
・咽頭炎の診断で耳鼻科に入院となり抗生剤が投与されていたが無効のあめ総合内科に依頼
・39-40℃以上の発熱。両側頸部、腋窩、鼠経リンパ節腫脹。心音清。肝脾腫なし。
・白血球9000、CRP7.11、ESR35mm/時、ANA・RAは陰性、HIV・EBV・CMVは陰性。
・各種培養、画像検査で異常を認めず、ツ反陰性。
経過
・病歴から仔猫の飼育歴あり、猫ひっかき病が疑われたためAZMを投与した→無効
・組織急性壊死性リンパ節炎(菊池病)を疑い左顎したリンパ節生検を志向→反応性炎症のみ
・トキソプラズマ抗体陰性
・菊池病に準じてPSL60㎎より漸減を開始したところすみやかに解熱したが、10㎎まで減量したところで再度発熱
Double Quotidian Fever
 マラリア?
 粟粒結核?
 皮疹に気づいた(サーモンピンク疹)
診断:成人Still病
(血清フェリチン正常域だった)

 

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