なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

COPDの増悪だけではなかった

2018年04月15日 | Weblog

 昨日の日直の時に、COPDで通院している80歳男性が10日前からの喘鳴の悪化で受診した。初めて診る方だが、名前は聞き覚えがある気がした。

 自ら以前に肺炎が併発して増悪したので、今回もそうではないかと言っていた。喫煙は続けていて、悪化してからはやめている(苦しくて吸えない)。聴診するまでもなく、喘鳴がある。その時点では、肺炎の有無を胸部X線と血液検査で確認して、治療は抗菌薬と一時的なステロイド使用を想定していた。両側下腿に軽度に浮腫があったが、その時はあまり気にしなかった。

 酸素飽和度が91~94%(室内気)くらいあるので、車いすで行って胸部X線を行ってから点滴・採血を行うことにした。肺炎の有無を見るためのX線だったが、両側に胸水がある。14年前に肺結核の既往があり、左上葉に瘢痕があった。時々胸部X線がとられていて、前回は今年1月、前々回は昨年7月だった。

 胸部CTで確認すると、左上葉に径7~8cmの腫瘤があった。あるのがわかった上で、これまでの胸部X線を並べて比較すると、左上葉の瘢痕陰影が漸増して、肺尖部が不鮮明になってきていた。

 結核の再発再燃でこのような腫瘤形成にはならないと思われ(たぶん)、まず肺癌だろう。胸水は癌性胸膜炎?。ただ今回は以前なかった心房細動を呈していて(昨年の心電図は洞調律でいつからAFかは不明)、心房細動・心不全の胸水かもしれない(BNP300)。喘鳴も肺気腫に伴う喘息症状+心臓喘息?。

 これが肺癌でも、年齢・腫瘍の広がり・肺気腫で常時喘鳴があることなどから、治療の対象にはならないと思われたが、一度は専門医に診てもらった上で方針を決定するのが好ましい。

 地域の基幹病院に連絡してみると、ちょうど日直が呼吸器内科の先生だった。病状を説明すると、う~んという感じだったが、診てもらえるこになった。病院には家族の車で来ていたが、酸素吸入も開始していたので、救急搬送にさせてもらった。吸入とステロイドの点滴静注をしたが、まだ喘鳴が続いていた。

 ベット事情が厳しい病院なので、肺癌で治療の適応なしとされて、そのまま戻される可能性も考えていたが、入院で受けてくれたようだ。診断がついて、病状が小康状態となったところで、当院転院になるのだろう。

 COPDの増悪、肺癌・癌性胸膜炎、心房細動・心不全、結核再燃・結核性胸膜炎?・・・。応用問題だった。

 

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