なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

非結核性抗酸菌症

2024年02月28日 | 呼吸器疾患

 1月27日、2月11日に記載した非結核性抗酸菌症と判断される86歳女性の経過。

 

 1月25日(木)に市内のクリニックからの紹介で86歳女性が受診した。食欲不振があり全体に衰弱しているという内容だった。患者さんは小柄でやせていた。

 問題は発熱があり、肺病変があった。胸部X線・CTで両側肺野にまず気管支拡張像があり、限局性の浸潤影・斑状・粒状影が多発している。

 当院には2014年に左橈骨尺骨開放骨折で整形外科に入院していた。その時に入院時検査として胸部単純X線が撮影されている。両側肺に陰影があった(整形外科医は気にしていなかった)。

 呼吸器外来に来てもらっている先生に相談して、基礎に非結核性抗酸菌症(NTM)が疑われる、ということだった。ただ、画像からは通常の細菌性肺炎の併発があるかどうか判別できない。

 まずは細菌性肺炎の治療で経過をみることになった。スルバシリン(ABPC/SBT)の投与を開始した。解熱して炎症反応も軽減した。経過からみて通常の細菌性肺炎があったことは間違いない。(喀痰検査ができなかった)

 白血球は24100→10600→8900、CRPは11.3→1.7→0.6と軽快した(1月25日、1月29日、2月1日)。2月7日(2週間後)に胸部CTを再検査した。初診時(1月25日)と比較して、陰影は軽減していた。

 食事摂取は思った通り、ちゃんと目の前に食事があれば食べられる。四肢の筋肉とくに下肢の筋肉は極端にやせ細っているが、リハビリも開始してトイレまで歩いて行ける。

 Tスポットを提出すると陰性だった。NTMの血液検査もあったと思い出して、キャピリアⓇMAC抗体 ELISAを提出した。

 

(その後) 

 キャビリアⓇMAC抗体ELISAは陽性だった。肺MAC症としては傍証にしかならないが、なにしろ喀痰が出ない。3%高張食塩水の吸入で頑張れば出るのだろうか。

 入院後のスルバシリン(ABPC/SBT)投与による解熱・炎症反応軽快は一般細菌による細菌性肺炎併発を示している。そしてその後は症状はほとんどなく、特に患者さんは困っていない。

 非喫煙・やせ型・中高年女性に多いとされる結節・気管支拡張型だと、経過観察も許されるようだ。入院時から相談している呼吸器外来の先生(大学病院感染症内科所属)に訊くと、「治療による副作用を考慮すると、僕ならそのまま経過を見ます」、といわれた。

 非結核性抗酸菌症の診断は下記の通りで、今回は胸部画像所見がNTMらしいのとキャピリアⓇMAC陽性だけなので確定していない。

表1 肺非結核性抗酸菌症の診断基準(日本結核病学会・日本呼吸器学会基準)
A. 臨床的基準(以下の2項目を満たす)
1. 胸部画像所見(HRCTを含む)で,結節性陰影,小結節性陰影や分枝状陰影の散布,均等性陰影,
空洞性陰影,気管支または細気管支拡張所見のいずれか(複数可)を示す。
但し,先行肺疾患による陰影が既にある場合は,この限りではない。
2. 他の疾患を除外できる。
B. 細菌学的基準(菌種の区別なく,以下のいずれか1項目を満たす)
1. 2 回以上の異なった喀痰検体での培養陽性
2. 1 回以上の気管支洗浄液での培養陽性
3. 経気管支肺生検または肺生検組織の場合は,抗酸菌症に合致する組織学的所見と同時に組織,ま
たは気管支洗浄液,または喀痰での1回以上の培養陽性。
4. 稀な菌種や環境から高頻度に分離される菌種の場合は,検体種類を問わず2回以上の培養陽性と
菌種同定検査を原則とし,専門家の見解を必要とする。
以上のA,Bを満たす。

 治療はCAM+EB+RFPで約2年間になり、完遂後の再発・再燃もある。副作用が比較的少ないCAM+フルオロキノロンもあるらしいが、治療としては好ましくないようだ(CAM耐性になりやすい)。

 

コメント
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