水曜日は外科の女性医師が当直だった。準夜帯から深夜帯にも救急外来受診があり、毎回よく「当たる」先生だ。
8時30分通常診療開始前に、心肺停止の81歳女性が救急搬入された。朝にゴミ出しに自宅の外に出て、倒れたそうだ。居合わせた人が呼びかけても反応がなく、救急要請をした。救急隊が到着するまで、心臓マッサージ(胸骨圧迫)をしてくれていた。
救急隊到着時、心肺停止で瞳孔散大・対光反射なしだった。心電図では心静止asystole。心肺蘇生を行って、点滴とアドレナリン1A静注もしていた。救急車内で心静止からPEA(無脈性電気活動)になった。
搬入後の血液ガスで低酸素血症だったが、すぐに気管挿管を行って正常化した。アドレナリン3Aを入れたところで自己心拍が再開した。12誘導心電図は正常洞調律でST-T変化や不整脈はなかった。救急室で行った心エコー所見も正常だった。
自発呼吸は戻らず、人工呼吸器を装着した。血圧が安定したところで、頭部~腹部のCT検査が行われたが(人工呼吸をしながら)、頭蓋内疾患(くも膜下出血・脳出血)はなかった。
通常は脳の問題か心臓の問題になるが、両者とも異常がないと(発症時の致死的不整脈は否定できないが)、心肺停止に陥った原因は不明になる。Dダイマーは上昇していたが、心肺停止後なのでなんともいえない。重症の肺血栓塞栓症では急変がありうるか。
胸部CTで右気胸があり、心肺蘇生の影響かもしれない。両側肺の背側にべったりとした浸潤影様の陰影があり、そのまま解釈すれば両側肺炎になる。心肺蘇生術の影響としがたい気もするが、突然倒れるまでには普通だったので違うのだろうか。(炎症反応も陰性だった)
家族と相談すると、できるだけの治療をしてほしいと希望された。地域の基幹病院救急科に連絡して、救急搬送となった。人工呼吸器を装着したままでの搬送で、内科の若い先生に救急車に同乗した。搬送後に病院の人工呼吸器を回収するため、救急車の後から病院車が追いかけることになった。
何年か前に中年男性が心肺停止で救急搬入されて、自己心拍が再開した。人工呼吸をして基幹病院に搬送して、その後低体温療法を受けて歩いて退院したという症例があった。搬送時に自発呼吸が出始めていて、見込みがありそうだった。今回は厳しそうだが、どこまで頑張れるのだろうか。