86歳女性。腹部不快感を訴えて受診していた。内視鏡検査や腹部エコーは異常がなかった。暑さのせいもあるのか、しだいに食欲がなくなり、、開業医を受診して3日間点滴をしてもらったという。点滴しても症状が改善しないので、先週金曜日にまた当院を受診した。歩く気力もなく、車いす乗っていた。検査で異常がなかったので、スルピリドを処方してみた。週末食欲がない時は、救急外来を受診して点滴を受けられるように手配しておいた。今日外来を受診したが、歩いて診察室に入ってきた。食欲が出たという。スルピリドをまた処方して2週間後に予約した。
80歳女性。軽度の急性腎盂腎炎で泌尿器科を受診した。外来での抗菌薬投与で治癒した。治癒した後も調子が悪く、体重が5Kg減少したという。泌尿器科医から相談されたので、内科外来に紹介してもらうことにした。食欲はあり、悪性疾患が隠れているような検査結果ではなかった。話を聞くと、うつ状態のように思われた。スルピリドを処方して経過をみたが、ほんのりと良くなっていた。
以前はよくスルピリド(ドグマチール)をうつ状態は心気症に処方していた。最近処方が少なくなっていたが、今入院しているうつ病の女性にも使っている。その患者さんはスルピリドだけでは足りないので、SSRI(ジェイゾロフト)を処方した。スルピリドのいいところは、少なくとも悪化することがないことと、たいていは症状がほんのりと改善することだ。ただし長期に投与すると錐体外路障害が起きるので、短期間の投与にとどめるか、速効性を期待してまず最初に処方してから、ちゃんとした抗うつ剤に切り替えるかだ。やたらに処方する薬ではないが、時々症例を限って使うと、うまくいくことが多い。