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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

アルコール性肝硬変

2024年07月06日 | 消化器疾患

 アルコール性肝硬変で通院していた50歳代後半の男性が、6月始めに入っていた予約日に来院しなかった。以前にも予約日に来れなくて、翌週に来ることもあった。

 7月1日(月)に地域医療連携室から連絡が入った。患者さんの住所は隣町で、母親と二人暮らし。母親は2階にいる息子に食事を届けるだけで、関われない状態になっている。処方薬は飲んでおらず、飲酒を再開しているそうだ。

 その日は病院に来る気になったらしいので、母親がついて来るのは嫌がっていたが、いっしょに来た。予約は入っていないので、どうしましょうかといわれたが、「いつものように血中アンモニアを含めた肝機能検査を行って、診察します」と答えた。

 荒々しい口調で様子がおかしいので、事務の方で男性職員何人かが対応に当たっていた。それが気に入らなかったのか、検査も受診もしないで帰るという。(患者さんは身長185cmなので、かなりの迫力がある。受付の女性職員が恐怖を感じると、係の男性職員が対応に当たる)

 外来(再診と新患)を診ていると、外来看護師長がやって来て、「結局患者さんは帰りました」と報告があった。

 

 この患者さんは2019年に入院(転院)したのが最初だった。隣の県で運転代行(同僚と共同経営)の仕事をしていたが、経営がうまくいかず廃業していた。その後飲酒量が増えて、自宅で動けなくなっているのを同僚が発見して、その地域の基幹病院に救急搬送された。

 家族が当地への転院を希望して、当地域の基幹病院消化器内科に転院となった。転院時は、「肝硬変・肝不全(黄疸)、腎不全、肺炎、電解質異常の重篤な病態で、そのまま亡くなる可能性も危惧される」だったそうだ。

 それでも何とか回復して、腎不全用高カロリー輸液併用で食事摂取できるようになった。筋力低下でポータブルトイレへのがやっとという状態だったので、当院にリハビリ転院となった。

 当院に1か月ちょっと入院して、幸いに歩行可能となって退院した。その後は当院の外来に通院していた。近くの診療所を浮腫を訴えて受診して、利尿薬を処方された。それが誘因となって肝性脳症の悪化で入院することを2回繰り返した。その後は入院はなく、2か月に1回当院の外来に通院していた。禁酒もできていた。

 

 このまま治療中断・飲酒の継続が続くと、肝硬変・肝性脳症の悪化とそれに伴う併発症が進行すると見込まれる。それで動けなくなった時に、入院治療を開始するしか手はないようだ。(町役場には連絡がいっていて、介入はしている)

 

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胆管癌の疑い

2024年07月05日 | 消化器疾患

 7月1日(月)に81歳男性が受診した。受診した時は時に症状はなかった。

 2週間前、1週間前、2日間の夜間に38℃の発熱があった。悪寒もあったが、悪寒戦慄ではない。発熱は1日だけで翌日には解熱している。

 呼吸器症状や腹部症状はなかった。ただこの2週間くらいで体重が5kg減少しているという。食事摂取量が以前より低下している。診察しても特に異常は認めない。

 

 この患者さんは、昨年の11月に総胆管結石・急性胆管炎・急性胆嚢炎になった既往がある。外来で担当した先生が入院としたが、当院では対応できないので、翌日には消化器病センターのある専門病院に転院となった。(地域の基幹病院はその時は受け入れ不可だった)

 転院翌日に内視鏡的に膵胆管造影(ERCP)を行って、乳頭切開・総胆管結石除去術が行われた。5日間の入院で退院している。その後、2024年2月に同院の外科で腹腔鏡的胆嚢摘出術が行われた。

 

 この既往があるので、総胆管結石の再発が疑われた。ただし乳頭切開してあるので、小結石なら自然排石が期待され、そうそう再発はしない気もした。

 血液検査では白血球8100・CRP5.3と軽度の炎症反応上昇があり、肝機能障害(AST 63・ALT 97・ALP 548・γ-GTP  806・総ビリルビン1.4)もあった。胆道系酵素の上昇の方が目立つ形だった。

 腹部CT(単純)を行うと、肝内胆管が拡張して、総胆管が総肝管のあたりで狭窄あるいは閉塞している。先細りの変化で結石ではなく腫瘍(胆管癌)が疑われる。

 MPCPができるか担当の放射線技師さんに連絡すると、次に入れてくれるという。(その日は空いているのは午後4時以降だったが、配慮してくれた)MRCPでは、肝内胆管全体が拡張して、総肝管から上部総胆管にかけての狭窄(ほぼ閉塞)が描出された。

 前回治療してもらった専門病院に紹介して翌日に受診してもらうことにした。胆管癌だと、年齢を考慮してステント留置だけになるかもしれない。

 

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レスパイト入院ではない

2024年06月30日 | 消化器疾患

 別の内科の先生が入院で診ている94歳女性。隣町の内科医院からレスパイト入院の申し込みがあった。

 レスパイト入院は病状としては特に問題はないが(治療目的ではない)、自宅で介護している家族の介護負担軽減のためだったり、やむを得ない事情(冠婚葬祭など)で遠出をする時に病院で預かるというものだ。大抵は3日から長くても1週間くらいの期間になる。(レスパイトrespite:休息、息抜き)

 申込書には食欲不振とあり、1~2週間続いているとあった。そうなるとレスパイト入院ではなく、検査治療目的の一般入院になる。6月14日に地域包括ケア病棟ではなく、急性期病棟に入院となった。

 胸腹部CTの結果、肺と肝臓に多発性の転移巣があり、原発は上行結腸癌が疑われた。胸水・腹水もある。これは進行結腸癌の終末期状態だった。

 

 末梢静脈からの点滴が困難でCVカテーテルが挿入されて、高カロリ―輸液が開始された。退院の当てはないので、入院継続となる。もし小康状態が続く時は療養型病床を持つ病院への紹介転院となるかもしれない。

 今月末に施設入所が予定されていたが、それは当然キャンセルになった。

 

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大腸憩室出血

2024年06月27日 | 消化器疾患

 6月25日に地域の基幹病院で消化器の研究会があったので出席した。その前日に感染管理の合同カンファランスで行ってきたので、2日間連続でおじゃますることになった。

 

 同院の若い先生が大腸憩室出血についてまとめて、文献検索も含めて発表された。司会をされていた同院のベテランの先生が、「大腸憩室出血は時間外に来ることも多く、消化器内科の勤務医にとっては非常にストレスのかかる疾患」、とおっしゃっていた。(当院は現在時間外の緊急内視鏡は行っていない。平日時間内でも紹介になる。)

 統計的には大腸憩室出血の7~8割は自然止血する。そうなると緊急内視鏡検査を行うか、待機的に内視鏡検査を行うかという問題になる。また多発性憩室で検査時に止血していたり、大腸が凝血塊で充満している時は出血源の同定困難、ということだった。

 ショックバイタルや輸血を要する病例では緊急の対応になるが、それ以外だとどう対応するか。腹部造影CTを行って、血管外漏出(extravasation)があれば、緊急内視鏡を行った方がいいという。

 止血はもっぱらクリップで行っているそうだ。EBL(endoscopic band ligation)はあまり行っていないという。行おうとすると、通常の内視鏡で出血源を同定して目印にクリップを付けて、いったん抜去してデバイスを付けての再挿入になる。

 以前は食道静脈瘤用のEVL(endoscopic variceal ligation)デバイスが使用されたが、現在は大腸憩室出血用のEBLデバイスが販売されている。

 フロアの開業医の先生から、「勤務医時代にはEBLで止血していた」、という発言があった。全例止血に成功したそうだ。司会の先生が詳しく内容を尋ねていた。

 

 当院で大腸憩室出血疑いの患者さんが来た時はどうするか。ショックバイタルの時はそのまま下部消化管出血として緊急搬送する。バイタルが安定している時は、腹部造影CTで出血の原因検索と造影剤の血管外漏出の有無を確認するかもしれないが、やはり搬送になるだろう。

 

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自己免疫性肝炎

2024年06月24日 | 消化器疾患

 6月17日に記載した著明な肝機能障害の55歳女性のその後。

 6月12日(水)に当院を受診して、翌13日(木)に医療センターの予約をとって紹介した。受診した日にそのまま入院になりましたという受診報告が来ていた。

 15年以上前から健診で肝機能障害を指摘されていた。受診時の検査でウイルス性肝炎でもなく、腹部エコーで脂肪肝でもないということで、自己免疫性肝炎(AIH)か原発性胆汁性胆管炎(PBC、エコー上は肝硬変疑い)が疑われた。

 外注検査を提出していたが、結果は抗核抗体陽性(≧1280倍)、抗ミトコンドリア抗体陰性。自己免疫性肝炎だった。

 

 自己免疫性肝炎の治療を最初から担当したのは随分前のことだ。トランスアミナーゼが200~300くらいの値だったような覚えがある。やってみて思わしくなければ、専門医に紹介するつもりでの治療だった。今なら診断を含めて最初から紹介する。

 現在外来に通院している患者さんは、大学病院などの専門医のいる病院で診断治療されて、その後の維持療法を継続している方たちだ。

 治療のプレドニン導入は0.6mg/kg/日以上で、中等症以上では0.8mg/kg/日となっているようだ。今回はもう少し多い量で使用したのだろうか。

 

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黄疸で受診

2024年06月14日 | 消化器疾患

 6月12日(水)は内科外来(再来+新患)に出ていた。午前11時ごろに黄疸の55歳女性が受診した。外来の看護師さんが、今日は消化器科医が不在になるので、と内科の方に持ってきた。

 今月始めから倦怠感があり、皮膚の黄染・かゆみ、尿の濃染もあった。(便の色も薄くなったといっていた)発熱はなく、腹痛もない。

 一見して確かに黄疸があり、肝臓が触知された(3横指)。浮腫はない。意識は清明で普通に会話できる。その日は一人で車で来院していた。

 15年前から健診で肝機能障害を指摘されていた(AST・ALTが50~80。γ-GTPが150~200)。体格はやせ型で、脂肪肝を来すようには見えない。ウイルス肝炎か、原発性胆汁性肝炎(PBC)・自己免疫性肝炎(AIH)が疑われた。

 血液検査では炎症反応はわずかに陽性(0.9)で末梢血では異常がなかった。血小板は28.7万と正常域だった。HBs抗原・HCV抗体は陰性だった。肝機能はAST 1549・ALT 1263・LDH 1222・ALP 400・γ-GTP 289・総ビリルビン9.5と著明な肝障害を認めた。

 腹部エコーでは肝表面の凹凸と内部エコーの粗雑さを認めた。胆道系の拡張はなかった。

 経過からは慢性肝疾患があり、それが増悪したか、何か別の原因が加わったものということになる。PBC・AIH疑いで抗核抗体(ANA)と抗ミトコンドリア抗体を提出したが、外注検査なのですぐには出ない。(NASHも否定できないか)

 早めに肝臓専門医に紹介する必要がある。問い合わせると、大学病院は最短で2週間後の外来予約になるという(直接電話で依頼すれば、もっと早くなるかもしれないが)。

 癌ではないので、がんセンターには紹介できない。医療センターに問い合わせると、幸いに翌日消化器内科の予約枠がとれるといことだった。患者さんに説明して、紹介することにした。

 

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術後変化?胆汁漏出?

2024年06月05日 | 消化器疾患

 5月22日に記載した胆石性急性胆嚢炎の82歳男性のその後。

 5月20日に地域の基幹病院外科に転院搬送させてもらった。当初は全身状態が悪く、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を行って、カテーテル挿入のままで当院に戻すということだった。

 その後病状が改善したということで、5月27日に腹腔鏡下胆嚢摘出術(ラパ胆)が行われた。総胆管結石を疑って術中に胆管造影を行ったが、胆泥程度で結石はないということだった。

 ベット確保のため5月31日に当院に戻ることになった。術後4日目で炎症反応がまだ高値なので、抗菌薬を1週間程度継続するようにという指示があった。

 腹部症状はなかったが、嚥下障害で経口摂取できなかった。聴覚言語療法士と相談して、週末(金)なので点滴で経過をみて、月曜日から嚥下訓練を開始することになった(昼のみ嚥下調整食3で)。

 6月2日の午後に軽度の腹痛があり、同日の午後10時ごろに急に叫ぶような腹痛が出現した。腹痛時のアセトアミノフェン1000mg点滴静注(アセリオ)を行ったが、症状が4時間続いた。

 病棟看護師さんがその次の指示であるペンタゾシン注を行うかと思っていたところ腹痛は自制可となった、(バイタルは安定していたので夜間に報告は来なかった)

 6月3日(月)に報告を受けて、病室に行くと、苦痛表情はなかった。むしろ転院してきた時は会話も難しかったが、その時は症状についての会話ができた。

 発熱はなく、腹部症状も明らかな腹膜刺激症状はなかった。入院後の血液検査を入れていたが、炎症反応は高値だった。

 急遽胸腹部CTを行った。肝表面と胆嚢床に空気と液体貯留があり、それらは繋がっている。術後なので術後変化なのか、胆汁が術部から漏れて炎症を来しているのか判断がつかなかった。

 手術をしてもらった基幹病院外科に連絡すると、術後変化ではといわれた。しかし昨夜の症状が説明できないのと、術後1週間では手術時の気体は吸収されているのではとも思った。

 CT画像と患者さんを直接診てもらって、問題なければ当院に戻してもらうことになった。午前中の搬送だったが、その後午後5時まで連絡がなかった。病棟看護師さんと、たぶん転院になったのだろうと判断することにした。

 問題がないとしても、数日経過を診ていただいてから戻してもらうとありがたい。

 

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急性虫垂炎

2024年06月01日 | 消化器疾患

 5月29日(水)は当直だった。午後6時半ごろに腹痛の息子を受診させたいと、その父親から連絡がきた。38℃の発熱もあるそうだ。手術が必要な疾患かもしれないと思ったが、来てもらうことにした。

 患者さんは50歳男性で、2日前の27日午後8時から腹痛が生じている。最初は心窩部痛だったが、しだいに右下腹部痛になっていた。虫垂炎を疑う経過だった。

 前日も当日も日中仕事をしていたが、受診当日は歩いても腹部に響く状態だった。訴えも訊くと答えるという感じで、我慢強いというより遠慮がちな方だった。

 右下腹部全体に圧痛があり、percussion tenderenessもある。筋性防御もあるように思われる。点滴と採血を行った。

 白血球11200・CRP9.2と炎症反応が上昇していた。肝機能障害・腎機能障害はなかった。Hb14.2とその日は食事摂取できなかった割に脱水状態ではなかった。水分はとっていた。

 腹部造影CTで腫大した壁肥厚した虫垂を認めたが、破裂したわけではないようだ。周囲の脂肪織に炎症像を伴う。小腸内の消化液が目立つので、麻痺しているのかもしれない。

 当院は外科常勤医はいないので、地域の基幹病院の外科系の先生に連絡した。受けてもらえたので、すぐに救急搬送した。

 

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肝膿瘍

2024年05月30日 | 消化器疾患

 5月28日(火)にリハビリ病棟に入院している82歳女性が急に39℃の発熱を呈した。

 3月29日に脳出血(左後頭葉)が発症して地域の基幹病院に入院した。4月11日には当院にリハビリ目的で転院してきたが、まだ出血は残っていた。(経過は左→右)

 

 リハビリを開始して、特に問題なく経過していたので、担当医は「青天の霹靂」と表現していた。発熱以外の症状には乏しかった。肺炎疑いで胸部CTを行うと、肺炎はなく、思いがけず肝臓に低濃度の病変があった。白血球13600・CRP13.3と炎症反応が上昇していたが、肝機能は正常域だった。

 胸腹部造影CTを行うと、右葉後区(S7・S8)に肝膿瘍を認めた。胆道系の異常は認めない。

 どうしましょうかと相談された。抗菌薬投与でいけるのかもしれないが、基本的には肝膿瘍の治療はドレナージになる。

 その先生は以前別の肝膿瘍の患者さんを基幹病院に紹介していた。今回は肝臓担当の先生が退職してしまった関係で、受けられませんということだった。結局、消化器病センターのある病院に連絡して転院となった。

 

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消化管穿孔・急性腹膜炎

2024年05月28日 | 消化器疾患

 5月26日(日)の当直は小児科医だった。翌27日の午前7時過ぎに、前日からの腹痛が続く、71歳男性が救急搬入された。おそらく日勤帯で内科に引き継ぐ心積もりだったのだろう。

 前日の夕食後(午後7時ごろ)に急に上腹部~臍部痛が生じて、症状が続いていた。一晩我慢して月曜日の朝になってからの救急要請だった。

 診察では筋性防御ありと記載していたので腹膜炎と判断されたようだ。腹部単純X線(立位・臥位)を撮影して、血液検査の結果が出たところで、月曜日の午前中の救急当番だった内科医に申し送りとなった。

 腹部単純X線では明らかなfree airを指摘できない。腹部CT(単純で入れたが、造影も追加)を行うと、free airを指摘できた。中等量の腹水貯留もあった。

 胃潰瘍の既往がある方だったが、胃穿孔はよくわからなかった。当院は現在外科常勤医は不在なので搬送になる。一番近い地域の基幹病院外科で受けてくれたので、すぐに搬送できてよかった。

 おそらく予定手術が入っているところに、緊急手術が入るので大変だと思うが、夜間よりはいい?。それにしても患者さんはよく一晩我慢したものだ。

 

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