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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

直腸穿孔

2024年09月06日 | 消化器疾患

 9月3日に記載した消化管穿孔の患者さんのその後。紹介した整形外科医(その日の当直医)のところに返事がきて、診断は直腸穿孔で人工肛門造設が行われたそうだ。

 腹部CTを見ると、直腸S状部に小さな遊離ガスが1個あり、その周囲の腸間膜にも小さな遊離ガスが2個あった。便の排出らしい像は指摘できない。これだとピンポイントの穿孔だったと思われる。

 以前にあったが、大きな穿孔だと便が腸管外に排出されて、みるみるショックに陥ってゆく。今回は穿孔が小さかったことで、発症が排便直後ではなく、受診時にバイタルが保たれていた理由なのだろう。(腹痛が発症したのは午前0時ごろで、その2時間くらい前に排便があった。)

 外科医はCT像を見て、手術前に穿孔部位を推定していたのだろうか。

 

 

 

大腸の解剖用語 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より ...

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消化管穿孔

2024年09月03日 | 消化器疾患

 9月3日早朝午前4時半に病院から電話がきた。2日(月)当直の整形外科医だった。腹痛で受診した患者さんのことで相談があるという。

 午前1時から腹痛が生じた70歳代半ばの男性が午前3時に自分で車を運転して受診した。連絡はなく直接の受診だった。

 腹部が硬かったというから、板状硬だったのだろう。腹部CTで腹腔内(肝表面と上腹部の腸間膜内と肝臓の陥凹部)に遊離ガス像を認めた(放射線技師が指摘してくれた)。

 「血液検査で異常がないが、どうしたものか」という。「消化管穿孔なので、外科手術が必要です」、と答えた。「地域の基幹病院外科に当たります」、ということになった。幸い受け入れてもらえて、救急搬送となった。

 救急搬入ではなく自分で受診したこと、炎症反応が陰性だったことから、紹介搬送していいのか、と思ったらしい。重症度は救急搬入か自分で受診かによらないし、炎症反応は発症直後には上昇しない。

 

 自分で車を運転して受診してきたこと(病状にまだ余裕がある)、遊離ガスの分布からは上部消化管(胃十二指腸)の穿孔だろう。先方の病院に到着するのが、午前5時半くらいになる。バイタルは安定しているので、日勤帯になってからの手術だろうか。

 

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絞扼性腸閉塞疑い

2024年09月02日 | 消化器疾患

 40歳代前半の女性が腹痛で外来を受診した。ふだんは高血圧症で市内の病院に通院している。なぜ当院を受診したかはわからない。

 午前7時に朝食をとっていて、午前8時半ごろに突然腹痛が生じたそうだ。(発症時のことをしつこく訊くと、突発らしい)体格のいい方で、腹部所見がとりにくい。最終生理は3日前に終了したそうだ。

 腹痛が生じてからは持続痛になっている。腹部全体が痛くて、歩くと響く。突発だと「破れる、捻じれる、詰まる」になる。圧痛は上腹部と下腹部にあり、局在がはっきりしない。

 反跳痛があり、筋性防御はたぶんないと思うが迷った。消化性潰瘍の既往はなく、体型的に胆嚢結石を疑ったが、どうも所見が違う。

 胸部X線・腹部X線で腹腔内遊離ガスがないのを確認して、バイタルは安定しているので、血液検査を確認してから造影CT予定とした。

 白血球18900・CRP0.9と超急性期の炎症像だった。肝機能検査は異常がなかった。肝胆道系ではない。

 造影CTを行うと、まず虫垂は正常だった。肝臓周囲と腸間膜に軽度に腹水がある。そして、子宮の背側に拡張した小腸が一塊になっていた。内ヘルニアからの絞扼性腸閉塞と思われた。

 消化器科医にもCTを診てもらって、それ以外は考えにくく、外科に搬送依頼ということになった。地域の基幹病院外科に連絡すると、受けてもらえたので、すぐに救急搬送した。

 

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急性虫垂炎

2024年08月28日 | 消化器疾患

 8月24日(土)は当直だった。当直帯になってすぐから午前0時近くまで断続的に受診があった。それでもいわゆる深夜帯の受診は救急搬入がなくて、その点では助かった。

 夜間に回転性めまいの患者さんが救急搬入された。搬入時には回転性の要素は治まっていたが、浮遊感が残り、そのまま帰宅にできなかった。一晩入院させようとしたが、COVID-19罹患9日目であることが判明した。

 外来担当の看護師さんには申し訳ないが、外来の処置室で朝まで点滴を継続して帰宅とした。午前7時半ごろに診に行くと、症状消失して、帰宅可能だった。

 

 これで終わりかと思ったが、午前8時15分に救急要請があった。前々日から心窩部痛があった30歳代半ばの女性が、前夜から右下腹部痛になっているという。37℃台の微熱もあった。

 経過から急性虫垂炎と思われたが、当院では外科手術ができない。外科手術の可能な地域の基幹病院に直接搬入してもらう方がいいかとも思ったが、当院で診断確定してから搬送することにした。(もっとも、満床で受け入れ困難となると遠方の病院との交渉になってしまう。)

 搬入された患者さんを診察すると、右下腹部に圧痛があり、筋性防御はないがpercussion tendernessはある。腹部手術の既往はなかった。最終生理からは、数日後が生理予定日だった。

 前々日の夜間から心窩部痛(違和感程度)・嘔気がり、前日(土)の午前中に市内の医院を受診していた。P-CAB、整腸剤と吐き気止め屯用が処方された。前日の夜間から右下腹部に腹痛が移動して持続していた。

 搬送を想定してコロナとインフルエンザの迅速検査を行い(陰性)、尿の妊娠反応を確認した(陰性)。白血球12800・CRP4.9と想定どおりの値が出た。

 腹部造影CTを行うと、虫垂の腫脹・壁肥厚があり、糞石もあった。周囲の脂肪織に炎症像がある。急性虫垂炎だった。ここまで典型的な症状の虫垂炎も逆に珍しいかもしれない。

 基幹病院の外科担当の先生に連絡した。これまでも何度かお世話になっている常勤の外科医で、すぐに引き受けてくれた。転送の救急車が午前10時半に出発した。

 

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アルコール肝硬変~中断後の受診

2024年08月25日 | 消化器疾患

 次の週末に夏休み分で出かける予定にしている。週の半ばにちょうど台風が東日本の方に曲がって来る。出かけるのをやめるか、そのままにするか迷っている。

 

 7月6日に記載したアルコール性肝硬変の50歳代後半の男性のその後。

 8月初めに、外来予約をとりたいと地域医療連携室から連絡が入っていて、来院できる日に予約を入れてもらっていた。8月21日(水)に普通に外来に来た。

 何しろ体格が大きいので粗野な雰囲気はあるが、これまでとそう変わらない。会話したところでは肝性脳症の進行とは言えなかった。

 ずっと治療を中断していたので、両下腿の浮腫が増加していた。両足底の感覚障害(鈍麻)は同様で、それがふらつきの原因になっている。

 肝機能は、AST 26・ALT 13・ALP 158・γ-GTP 23と正常域だが、血清総ビリルビンが9.5と上昇している(これまでも高値だが漸増)。血清アンモニアは84と高値だが、これまでと同程度だった。

 γ-GTPの値から見ても、直近では飲酒はしていないようだ。中断前まで処方していた肝硬変の薬剤を再開とした。

 

 あまり待たせるとまずいかと思って、少し早めに診察室に入ってもらう配慮をした。対応はこれまでと変わらず、拍子抜けする感じだった。また定期的に通院してくれるだろう。

 

 

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胃癌

2024年08月09日 | 消化器疾患

 8月6日(火)の午後7時過ぎに、90歳代前半の男性が心肺停止で救急搬入された。消化器科の外来に進行胃癌で通院していた。

 当直の内科の若い先生が心肺蘇生術を行ったが、反応はなく、死亡確認がなされた。死因は胃癌とした。

 

 この患者さんは昨年12月に心窩部痛で救急要請して、地域の基幹病院に搬入された。血液検査で貧血を認めて(おそらくCTで胃癌が疑われたと思われる)、上部消化管内視鏡検査を勧められた。

 通院が大変(?)ということで住居近くの内科クリニックを希望したため、そちらに紹介された。内視鏡検査で胃噴門部に進行胃癌を認めて、生検で胃癌(group Ⅴ、tub1+2)と診断された。

 今年1月に今後の症状が出た時の対応のため、クリニックから当院の消化器科外来に紹介された。1か月おきに経過をみていた。

 8月初めのCTでは胃癌はさらに進行して、胸水・腹水・浮腫を認めた。食事が何とかとれるので、そのまま経過観察して翌月の受診とされていた。結果論になるが、そろそろ病状悪化時の相談をしていた方がよかった。

 

 癌終末期で自宅療養される場合は、家族と相談して急変時DNR(DNAR)となることが多い。それでも、急変して救急要請すると、救急隊が心肺蘇生術を行って搬入となる。

 家族がDNR合意の書類を救急隊に見せたとしても、救急隊が(死亡確認のため)病院に搬送だけするということにはならない。本気度の薄い形だけの心肺蘇生術を行っての搬入になる。(制度上やらないわけにはいかないそうだ)

 最近は市内に往診クリニックができたので、在宅での看取りが増えるかもしれないが。

 

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膵癌

2024年07月16日 | 消化器疾患

 7月11日(木)に食後の下腹部痛・腹部膨満感で70歳代前半の女性が内科外来を受診した。便秘もある。

 外来担当の先生が腹部CT(単純)を撮影すると、膵頭部(体部寄り)に腫瘤を認めた。造影CTが追加された。膵癌だった。

 膵癌の腫瘍マーカーは血清CA19-9が12000以上と出て、CEAも273と上昇していた。画像上は臓器転移はなさそうだが、この値だと転移が疑われる。

 この患者さんは糖尿病外来に通院している。経口血糖降下薬に持効型インスリンのBOTだった。3月から7月にかけてHbA1cが1%上昇していた。このくらいだと、膵癌発症による糖尿病の悪化を考えるのは難しいか。

 5月末に便秘と腹部膨満感を訴えたので、下部消化管内視鏡が行われている。結果は異常なしで、便秘薬が追加になっていた。これも症状的にはそういう対応になるか。

 

 

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胆嚢結石症

2024年07月11日 | 消化器疾患

 7月9日(火)は当直だった。日付が変わった10日午前0時過ぎに、当直の看護師さんから「直来」ですと連絡が来た。

 コロナになってから、時間外の受診は病院に連絡を入れてから来院することが増えたが、直接病院に来る患者さんもいる。心窩部痛での受診だった。発熱はなかった。

 3日前から夕食後(午後7時ごろに食べて午後10時ごろ)に心窩部痛が出現していた。長い時は3時間痛んでいたという。その日は痛みの程度が強く長引くので受診した。夕食に唐揚げを食べたそうだ。

 肥満があるが、横臥すると腹部は平坦だった。心窩部に圧痛とpercussin tendernessを認める。既往に高血圧症・糖尿病があり、林寛之先生の法則に則って、(明らかな圧痛なので違うとは思ったが)まず心電図をとった。有意なST-T変化はなかった。

 職場の健診を2月に受けていて、上部消化管内視鏡検査も含まれていた。結果は逆流性食道炎と萎縮性胃炎と記載されている。NSAIDs内服などがなければ胃潰瘍・十二指腸潰瘍ではだろう。健診に腹部エコーは含まれていない。

 体型と胃の疾患が否定的なので、胆石が疑われた。診察室で腹部エコーを当てたが、胆嚢頸部がうまく描出できない。見える範囲では異常を認めないが、X線で確認することにした。

 腹部単純X線で遊離ガスはなく、胆石と判断される陰影が写っていた。CTで確認すると、胆嚢内に結石が1個きれいに描出された。胆嚢壁が若干肥厚しているように見えたが、エコーでは胆嚢壁肥厚はなく、debrisもなかった。

 

 点滴室に戻ってそのつもりで腹部エコーで見たが、胆嚢結石をうまく描出できない。これにはがっかりした。

 点滴を入れていたので、アセリオ(アセトアミノフェン1000mg)の点滴静注を開始した。画像検査が終わったところで、来院時より若干疼痛が軽減してはいた。アセリオが半分くらい入ったところで、痛みが軽減してきた。すでに午前1時半近くになっていたので、そのまま外来で経過をみることにした。(付き添いの同僚の方には、朝まで病院で預かります、と伝えて帰ってもらった)

 疼痛が続く時は、ボルタレン座薬50mgかソセゴン注のつもりでいたが、連絡はなかった。患者さんはいびきをかいて寝ていたようだ。午前8時に見に行くと、腹痛は消失していた。

 胆石の疼痛が続いているので、手術適応になる。現在当院では外科手術はできないので、地域の基幹病院外科の外来に紹介して判断を仰ぐことなる。

 この患者さんは隣県から当地に仕事で来ている。職場の寮で寝泊まりをしていた。手術の話をすると、受けるなら地元の病院で、という。高血圧症・糖尿病の処方は地元の病院から出ているので、行ったり来たりしているのだろう。

 診療情報提供書とCT画像をCDに入れて持たせた。今週末は3連休になり、その日の夕食後もまた痛む可能性があるので、早めに地元の病院を受診するよう勧めた。

 

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クワシオルコル

2024年07月09日 | 消化器疾患

 7月4日(木)に地域の基幹病院消化器内科から53歳男性がリハビリ目的で転院してきた。診療情報提供書の病名は「クワシオルコル」となっていた。

 クワシオルコルkwashiorkorは蛋白質の欠乏によって発症する栄養障害だ。この言葉はアフリカなどの発展途上国の小児を連想させる。

 5月29日に体動困難で先方の病院に救急搬入されていた。浮腫と大量の腹水貯留があり、低蛋白血症(低アルブミン血症)を認めた。

 中学卒業後に実家の仕事の手伝いや、工場勤務・搬送の仕事などをしていた。5年前に母親が亡くなったのを契機に仕事を辞めて自宅(実家)に引きこもるようになった、と記載されている。姉と同居していたが、ほとんど顔を合わせない状態だった。

 母親の死亡による精神的ショックというよりは、認知力の低下によってその時期に仕事が務まらなくなってきた可能性がある。

 姉の用意した食事も食べていたようだが、主にはカップ麺を食べていた。搬入時は血清蛋白4.50g/dL(血清アルブミン2.14g/dL)だった。Hb7.5g/dLの貧血、血清カリウム2.8の低カリウムもあった。

 利尿薬で浮腫・腹水が軽快して体重は18㎏減少した(水が抜けた分)。普通食を食べて、栄養状態も改善していた。亜鉛などの微量元素・葉酸欠乏もあり、内服薬で補充していた。

 精神科医が介入して軽度知的障害とされたそうだ。頭部MRIで「両側海馬・前頭葉・頭頂葉の著明な萎縮」が指摘された。「若年性認知症(若年性アルツハイマー)」の可能性も示唆されたが、これまでの知的能力が判定できないため、診断にはいたっていない、とあった。

 「自宅退院しても介護できる人がいないため、障害者施設への提案しております。施設入所までは長期の待機期間が想定され、そのまでの間、食事の調整・リハビリをお願いします。」。

 といっても施設入所の手続きは何もしていないので、これからになる。地域包括ケア病棟に入院したが、入院期間は60日間以内で、それでは短すぎて難しい。一応姉と二人暮らしではあるので、いったん自宅退院して、一定期間後の再入院も可能性もあると家族には伝えた。

 高齢者ではないので、施設入所のためにはそれなりの病名が必要になる。若年性アルツハイマー病と確定していいのだろうか。歩行はできるが、ふらつきが目立ち、見守りを要する。MRIでみると小脳の萎縮もあるようだ。

 脳神経内科外来に来てもらっている非常勤の脳神経内科医と相談することにした。

 

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症状と所見が合わない

2024年07月08日 | 消化器疾患

 7月5日(金)の昼前に発熱・体動困難の74歳男性が救急搬入された。その日救急当番は非常勤の外科医だった。

 3日前から微熱があり、その日は38℃の発熱で動けなくなったそうだ。胸が苦しいと訴えたが、腹痛は訴えなかった。この患者さんは右肺に腫瘤影があり、肺癌疑いで大学病院に紹介・精査になる予定だった。

 

 胸腹部CTで右肺の主腫瘤影と胸水を認めたが、腹部にfree airがあり、後腹膜まで広がっていた。胃の専攻ではなさそうで、いので、腸管の穿孔と判断される。穿孔性腹膜炎?。

 担当した外科医は腹部所見からfree airではないのではといっていた。その日の当番だった内科医が少なくとも後腹膜にはfree airが出ているので、地域の基幹病院外科に救急搬送した。

 腹痛を訴えなかったのと、圧痛として把握されなかったくらい腹部所見に乏しいのが不思議だった。消化器科医の相談すると、腸管気腫症なのではないかという。ただし4月に撮られたCTで見る限り腸管気腫症は認めない。

 

 これまでも腸管気腫症でfree airを認めた症例があり、当院外科(当時)に入院したことがある。どう対応していたのか、確認することにした。

 

 

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