sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:バティモン5

2024-06-15 | 映画


すごく良かった…
前作「レ・ミゼラブル」(小説とは直接関係ない現代の話)は小さな綻びから
どんどん分断が深く厳しくなっていきカタストロフィに至る話だったけど、今回の方が構図的にはシンプル。
権力者側に、間に立って事態を収集しようと右往左往する善意のある人物、みたいなのがいないから
権力者である市長 vs 排斥される移民たち、という単純な構図がわかりやすい。
保守反動強硬派レイシストの市長(本人はそう呼ばれてると言ってるだけで自覚がない奴)の
「正義」は誰が見ても独善的な失政に見えるし、
権力側の善き個人に感情移入しないでずむのでモヤモヤも少なく見ることができる。

でもモヤモヤが少ないからといって内容が薄いわけではなく、
冒頭の爆破シーンで息を呑んでからラストまで全部本当に巧い。
映像も脚本も素晴らしいのは予告編だけ見てもわかると思う。
人のカットの背景などとても美しいシーンも多いし、そして人物もそれぞれ上手く描かれてるなぁ。
正義を振りかざしそれぞれの人々の事情をかえり見ない白人市長に対して呆れや反発を持ちながら、
それでも打算と計略によりいつも市長の側にいる黒人の副市長。
移民の側にいながら市長のプロパガンダに利用され優遇されるのを受け入れるシリア移民父娘。
(キリスト教徒の白人なので。同じ移民でも扱いが違うのね・・・)
それぞれの立場でのとまどいなどは特に言葉では語らせてないのに要所要所で描いて見せる。

お話は、パリ郊外の荒れた地区で、老朽化し「10階建てのスラム」化した団地を一掃したい市長と、
満足できる条件なしには立ち退きたくない市民とのとの緊張が高まる中、
一つの火事をきっかけにこの建物は倒壊の恐れがあるということにして、市は全住民を即座に強制退去させる。
専門家の調査もなしに強行して予算も浮くしラッキーくらいに思ってる市長へ住民たちの怒りは燃え上がり…

「人を侮辱し続けるとどうなるか」と映画の中の青年は叫ぶけど、そりゃテロも起きるよね。
血の気が多くてすぐ暴力や極端な方法に走るマッチョな男にはうんざりだけど、
見ている人は彼に同情するだろうと思う。怒って当然だもん。
こういうことが市政のレベルではなく国のレベルで起こってるのがパレスチナだなと思う。
長年のイスラエルによる住民への嫌がらせはこの映画で描かれているよりさらに長く
意地が悪く巧妙でしかも理不尽だった…

映画の中では次期市長に立候補する移民側のヒロインの強さと優しさだけは希望だ。
主人公が女性であることで、微かに希望があるということでもあるかもしれない。
これからの世界は。

朝9時半から、しかも毎日はやってない、さらにもうすぐ終映になるという難しい上映だったけど
半休取って早起きして観て本当によかった!
最近ダメ映画で脳みそを休ませてたけど、やっぱり良い映画を見なくちゃねー。

ちなみに役者さんたち、この映画の副市長は同監督の前作「レ・ミゼラブル」で市長で、
そこで暴力的な警官だった人がこの映画では市長です。ややこしい。笑
ラストの終わり方の唐突さは前作と同じです。

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