10年以上前に春画研究のとても興味深い本を読んでから、結構春画について読んだり
美術館での展示を見たり講義を聞いたりしてきたので、この映画は楽しみでした。
春画は日本画の美大生をやっていた40歳くらいの頃に、浮世絵が好きになってから
春画とテキスタイルに関する本を読んだらそれがすごく面白かったのが興味を持ったきっかけです。
その本は春画における布の表現についていろいろな考察がされてて、春画を見る目が変わりました。
2016年に京都の細見美術館での春画展は日曜美術館に出たのだったか、大混雑でしたが
まとまって見やすい展示になってて、とても面白かったし、図録もいい紙で、いい印刷だった。
2019年にはKYOTOGRAPHIEで春画を使った大きな作品を見たり、
2020年には日本で春画展を実現するまでのドキュメンタリー映画「春画と日本」を見たし
この映画もフィクションでも春画に関わった人たちの物語かなぁと思ってたら、
思ったよりずっと恋愛映画だった。笑
春画研究の先生の弟子になったヒロイン、お互い気持ちは通じるものの
中々結ばれることなく、先生の弟子の編集者や、元妻の姉などが入り乱れ・・・という話。
春画はここで描かれる恋愛の大きなモチーフだし、
春画への愛は主人公二人によって台詞でとてもよく語られているけど、
春画についての映画というよりやはり恋愛映画かな。
でも前半はリアルさがない話の進行についていけるか心配だったけど、
後半はいいテンポで中々グイグイ見せてくれて、恋愛映画だとしても面白かったです。
あと、たとえば、薄いモーブ色のワンピースのヒロインが黒塗りの車に乗るところで、
後ろを開いた淡いピンクの傘が風で左から右へ転がっていくシーンなどに感心しました。
細かい演出してるなぁ、と思ってちょっとうれしくなる。
あと、上に貼った予告編にもあるシーンで鼻から下をハンカチで隠したまま目だけの演技をするシーン、
安達祐実が大きな目だけでにやりとする演出も演技もいいですね。
ヒロインは時々すごくきれいなのに時々おへちゃに見えて、そこがいい女優さんだと思ったし
柄本佑は楽しそうに演じてたなぁ。
クライマックスの、元妻の姉役の安達祐実のシーンは、
これはそうくるだろうと思いはしたけどやや強引な筋運びで
でも陳腐な失敗、とはならずに、その設定の中で映画としては健闘したと思う。(偉そう(^_^;)
あと、パク・シネチャヌクの「お嬢さん」を思い出すシーンがあって
春画愛好家のイメージってこうなるんだなと思ったりした。
ただ、こういう映画を見るときいつも感じる観客問題は、やはりありました。
平日の午後だけど、いつになくひとり客の男性が多くて、わたしの前の列なんて
席を一つずつ開けながら座ってた人みんな男性だった。珍しい。
そしてエンドロールが始まった途端にそういう人たちはすぐに立ってさっさと映画館を出て行かれたわ。
普段から映画を見に来てる感じではなく、かといって多分春画研究者や愛好者でもなく
何か別のこと(エロ期待か?)を期待して見に来てる人たちなのかなと、ちょっと思ってしまう…
違ったらごめんなさい。でもそういうこと結構あるので。。。