上映時間の都合が丁度よかったので前情報ゼロで見た映画だけど、とても印象的な作品だった。
カナダの映画です。ケベックの森が美しく印象的で、それだけでも元は取れるけどそれ以上で、
見てみると自由、尊厳、安楽死、愛、いろんな要素のある良い映画でした。
カナダの湖を囲む森の景色がとてもとても良い。こういうところで焚き火をしながら過ごしたいなー。
世間から自由になると決めて森の奥に隠遁した男が、
闖入者の女性と情熱ではなく労りの中で生まれる情愛。
相手の個性や外見や性質でさえなく、ただ一緒にいるうちにじわりと伝わるものがあり
馴染むものがあり、たまたま巡り合って一緒にいるというだけのことで温まるものがあり。
年を取ると、面倒な執着や欲求や不満がこんな風になくなって、
目の前にいる優しい人とお互いの優しさだけをシンプルに愛しながら一緒に暮らせるのかな。
還暦がアラ還なら、80歳前後はアラ傘と言うのでしょうか?
映画で、アラ傘のベッドシーンを初めて見たけど、
(若い美男美女のシーンは映画ではよく見るし、見てて気持ちいいけど)
優しくて暖かくてすごく素敵なシーンだった。
セックスはリビドーだけじゃないし、年なんて関係ないねぇとしみじみした。
自分の人生をその年まで生きることを許されず人生のほとんどを檻に閉じ込められ
性的虐待に疑問を抱くことも知らずに生きてきた女性と、
何もかも捨てて自由と孤独を選んだ男性が、いつか心を寄せあっていくのも自然で
温かくて涙が出ました。
この80代のベッドシーンも良かったけど
二人が湖ではしゃいぐシーン、彼女が泳ぎを教わるシーンもよかったなぁ。
カナダの森の奥の湖が素敵すぎる。
フィンランででもいいんだけどわたしもこんなところに隠遁したい!
この二人が印象的なのであれこれ思い出すけど、映画を見終わった感想は恋愛映画では全然ないです。
登場人物の年齢は関係なく、恋愛というより情愛だし、それが中心というわけでもない。
年をとっても自分の尊厳を守る人たちの人生の話。
カナダ・ケベック州、人里離れた深い森。湖のほとりにたたずむ小屋で、年老いた3人の男性が愛犬たちと一緒に静かな暮らしを営んでいた。それぞれの理由で社会に背を向け、世捨て人となった彼らの前に、思いがけない来訪者が現れる。その80歳の女性ジェルトルードは、少女時代に不当な措置によって精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられていたのだった。世捨て人たちに受け入れられたジェルトルードは、マリー・デネージュという新たな名前で新たな人生を踏み出し、澄みきった空気を吸い込みながら、日に日に活力を取り戻していく。しかし、その穏やかで温かな森の日常を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られていくのだった……。
新しい出逢いと湖畔での穏やかな共同生活。80代の男女を主人公に迎え、人生の晩年をいかに生きるかというテーマを詩情豊かに綴る、愛と再生の物語が誕生した。
(公式サイトより)
安楽死の話は考えさせられるかもしれないけど、わたしはこの人たちに共感するところが多い。
これできる人は少ないと思うけど、望む人はそれでいいように思う。
ヒロインはカナダのドヌーブと呼ばれた女優さんでこれが遺作になったそう。
こんないい映画が遺作になってよかったのではないかと思います。
出てくる年寄りはみんなすごくいい。
途中でちょっと嫌なやつになる感じのトムもギターで弾き語りするシーンがすごく良くて
彼は彼なりに生きて死ぬんだなぁと思うと嫌いになれない。(下に動画を貼っておきます)
彼らと世の中をつなぐ役の若い男子もすごくいいんだけど
彼と関わりを持つ女性ラフだけは好きじゃないし彼女の絡むラストもなんだかなー。
世間やその虚飾から遠く離れた森の中で小さく暮らしながら心は広い自由を翔ける人と犬、
その小さな世界を壊さないように助ける心優しい男子まではいいのに
世間的な野心満々でマーケティングセンスをそこに持ち込んで乗り込んでくる
この無神経なラフがなんとも生臭い。映画的にはこういう人物が必要だったんだろうけど
この人まで包み込んでしまう優しいラストを、少し受け入れにくい狭量なわたしでした。
監督の挨拶と映画本編少し