sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

新潟でワイナリーに泊まる:1 新潟のお寿司

2023-12-30 | 一人旅たまに人と旅
10月に新潟のワイナリーに泊まってきた。
新潟は初めてでしたが、わたしは空港の近くに住んでるので飛行機に乗ると思ったより近い。
新潟空港から街が遠くないのも良かった。シャトルバスで20分ほどで街でした。

20年以上前、わたしがまだ結婚していて子供が小さくてマレーシアに住んでいた時、
オーストラリアによく旅行に行ったのですが、メルボルンから行ったワイナリーの素敵さが忘れらず、
あんなワイナリーに泊まりたいと20年も思い続けていたのです。
緑豊かに明るく広がる葡萄畑、ゆったりした建物、居心地よくセンスの良いテイスティングルーム、
温暖な気候の下、美しい庭に作られたテラス席で飲むワインと素晴らしいイタリア料理。

日本では関西、近畿のワイナリーは少しだけ行ったことがあるけど、あんな素敵な場所はなかった。
日本にはそんなワイナリーはないのかな?
宿泊施設があっておひとり様も受け入れてくれてて、料理が美味しくて景色のいいワイナリーは・・・
と思ってた時にネットでふと見かけたのが新潟のカーブドッチというワイナリーで、
夏にとても大変だったことを頑張って終えた直後だったので、自分へのご褒美にと、
そこのサイトで10月に1日だけ空いてた日をポチッと予約したのでした。

北陸地方は金沢しか行ったことがないので、初めての新潟に行くのも楽しみに。

猫がいるのでまた1泊だけで、朝出て翌日の夜に帰ることにしたので
基本はワイナリーでの宿泊(温泉付き!)とディナーが中心で、
その他のことはおまけくらいでいいや、
時間があったら新潟の街を少しぶらぶらできればそれで良いかなくらいの気持ちで行きました。

新潟空港に10:55着で迷うことなくスイスイとリムジン乗り場に着いて、11:05のバスに乗れた。
予定よりだいぶ早いバスに乗れて新潟駅にもずいぶん早く着く。
夜のディナーのために昼はごく軽くおにぎりくらいですまそうと思ってたんだけど
スマホの地図を見たら良さそうなお寿司屋さんがすぐそばに!
そうだ、時間あるしお昼にお寿司いいんじゃない、新潟のお酒と!まだ早いし!と思いついて
定休日じゃなくもう営業してることを確認して、次の停留所でバスを降りました。

知らない通りを歩くのはいつも楽しい。レトロな感じのお店や良さそうな酒屋さん。

ずいぶん通り過ぎてたので日差しの暑い中30分くらい歩いて、その評判の良いお寿司屋さんに行ったら
なんと!「本日貸切」の紙がドアに!!!がーん!悲しい・・・心折れてしばし立ち尽くす。

お昼はテキトーでいいやと思ってたことはすっかり忘れて、完全にお寿司の口になってたので
そこからお寿司屋さんを検索。
駅からのワイナリーへの送迎バスの時間があるので、駅までの通り道にある
こじんまりしとお寿司屋さんに決めて、また30分弱てくてく。だいぶ汗をかきました。

でも、ここがもう超好みで翌日また行こうかと悩むほど美味しかった!
小さいお店で、シンプルで気持ちの良いカウンターで、
まずはアテになるもの少々とビールを一杯いただいてから
ちょっといい方の握り盛り合わせと冷えた日本酒を。



麒麟山の大吟醸KAGAYAKI。これ一般に販売される直前だったらしい良いお酒で、
ワインと日本酒のいいところをとったみたいな美味しさで一瞬で機嫌が良くなりました。
そしてお寿司がまた最高。
今までで一番美味しいと思った金沢のお寿司屋さんの味に似てます。
やっぱりわたしは日本海の魚が好きなようで、せっかく瀬戸内に住んでいるけど
脂の乗りは控えめで実のしまった魚が好きなんだなぁとよくわかりました。
あまりに美味しかったので、一通り食べた後少し追加で握ってもらう。

新潟ならではの南蛮海老の甘いこと!
ノドグロもこの辺りの脂が乗りすぎてない絶妙な感じが本当に好み。
あと初めて聞いた「泡立ち」の昆布締めですが、白身のお魚で(ヨロイイタチウオ?)
新潟にしかないと言われたけど美味しくて、また食べに来なくてはと心に誓いました。
炎天下30分歩いての「貸切」ショックからもすっかり立ち直って
上機嫌でワイナリーへ向かうことができました。よかった。笑
駅の近くでは、コメどころお酒どころ新潟なんだなーという感じの居酒屋などの景色も楽しい。

「そもそも」のところ

2023-12-29 | Weblog
パレスチナにどういう大義があるというんだ、というツイートを見て呆然。
いやいやいやいや、あるでしょうよ。
非道で残虐な無差別テロや戦闘行為は非難されるべきだけど、
そもそもの大義という話なら、むしろそれがイスラエルにあると言えるのかねぇ?
人の住んでる土地に乗り込み奪い壊し人々を追いやったイスラエルの方に大義があると言えるの…?
ユダヤ人の歴史は気の毒ですが、だからって2000年前のことを持ち出して好き勝手していいの?
お金と力を振りかざしてそんな理屈を通していいなら世界はメチャクチャになるでしょ。

ああもちろん、最初にも書いたけど、残虐非道な戦闘行為やテロ行為は
どちらがやっても私は非難する立場であります。

その上で、大義ということであれば、自分の生きてきた大事な土地や家族や生活や友達や人生を、
よその誰かに力で踏み躙り蹂躙してきたらそりゃ反抗するだろうし、
その場合の大義がどちらにあるかは、何も難しくないと思うけど?


イスラエルとパレスチナのどっちがより非道な戦闘をしてるかの競争にしてしまっては意味ない。
こういう状況(所謂泥沼)になったら、そこで相手を非難し合うのは不毛よね。
もっとそもそものところから解決しないといけないのでは?
そして「そもそも」を言うと、よくなかったのはイスラエルでしょ、どう考えても。

パレスチナ側のそもそもの要求は「我々がずっと住んでいた土地を奪ったり殺したりするのをやめて出ていけ」
イスラエル側のそもそもの要求は「2千年前に住んでた土地に戻り自分たちの国を作ることにしたので、
                元から住んでたお前らは出ていけ」

これ、どっちに大義がある?

そしてその「そもそも」の次は
パレスチナ側「奪われ支配され囲まれ追い出され殺された。命をかけて反撃するしかない!」
イスラエル側「奪って閉じ込めて殺し痛めつけたら反撃された。許さん!
       お金も武器も国際理解もこっちの味方だからもっと叩きのめそう」

豊かな食卓

2023-12-27 | お弁当や食べ物
わたしはお酒が好きで、それは、味や香りが好きなのも、
気持ちが華やいだりリラックスできることが好きということもあるけど、
特にワインにはワイン自体に物語や歴史があるし、
何より食卓が豊かでゆっくりとしたものになるから好きなのだと思う。

でもこれだけずっと胃に問題があるならもうそろそろ本気で飲み方を変えるべきかと思って
よく考えると、嫌なのはアルコールのない人生ではなく、豊かな食卓のない人生なわけで、
お酒をなくしても減らしてもそれなりに豊かな食卓を楽しむ方法はあるのだと気づいた。
お酒が飲めなくても豊かな人生を楽しんでる素敵な人はいくらでもいるもんね。

とはいえ、運よくお酒が飲めて、その美味しさやその物語や文化を楽しむことが好きすぎるわたしとしては、
やっぱりお酒とも長くおいしく付き合いたいので、あれこれ考える。やっぱりお酒のない人生は寂しい。
でも今の健康状態なら完全にやめる必要もなく、飲み方を変えていけばいいのよね。
そういうふうに思うようになったのは、ここ数ヶ月のことで、
ついつい無頼の方向へ行きたくなる衝動や、夜空の下で無敵な気分で自由になる気持ちなどは
これからはもう少し抑えるしかない。(つまんないやつだな、と思われても仕方ないけど)

そして、この1年で、飲みにいく回数は減ったし、一人で何軒もハシゴすることもなくなった。
家でもひとりで一度にワイン1本2本とか飲まないように加減してる。
あとは食事にも気をつけて、とにかく胃の調子をよくして、
からだに優しい食事と少々のお酒で今まで以上に豊かな食卓を作っていきたい。
相変わらず食べることしか考えてないけど、わたしにはとても大事だもん〜。

そして、そうやって、あれこれ考え、控えながら味わう方が、もっと良く味わえるようになるのかもと
どんどん胃が弱くなってきた自分のこれからの食卓がさらに豊かになるよう頑張るぞ。

映画:灼熱の魂

2023-12-26 | 映画


映画好きの友達も、知り合いも、知らない人もみんながすごい褒め方をしていたこの映画。
監督のドゥニ・ヴィルヌーブは「メッセージ」や「DUNE/デューン 砂の惑星」を撮った人で
どっちの映画も大好きなのだけど、「灼熱の魂」はチラッと予告を見て思って、
レバノン内戦に関する悲惨な人生の話か、これは疲れそうだなとぐずぐず見ないで逃げていた。
でもある予定のない休みの日の雨の朝、えいっと見ました。
最近、年をとってどんどん億劫なことが増えて映画を見るのも少し決心がいるのは困ったことだな。
そしてそれの感想を1、2年後に書くこののろさも、困ったものです。。。

この日は2本見て1本目はセンチメンタルでロマンチックなロードムービー「プアン」。
それはそれでいいところのある映画だったので、いい気持ちで「灼熱の魂」を見出したけど
冒頭の男の子が髪を刈られるシーンの、その子の踵の黒いマークと強い眼差しで
もうすっかりセンチメンタルな映画のことを忘れてぐううっと引き込まれました。
(このシーンの大事さはあとで再びわかる。)

公証人の事務所で、亡くなった母の遺言を聞かされる男女の双子が主人公。
母親は子供たちにも心を開いていないような謎めいた女性だったが、
存在を知らなかった兄と父あての手紙を残していて双子は母の故郷に向かうが・・・という話。

レバノンではない架空の場所がお話の舞台だけど、
原作の戯曲作者はレバノン生まれで、8歳の時にレバノン内戦から逃れて亡命生活になった人で
誰が見てもレバノンのことかと思うけど、それでも架空の場所とする意図のついては
政治についての映画だけど政治色を出したくないようなことを監督が言ってて、
この監督の他の映画を見ても確かに具体的な場所や時代の要素から離れようとする感じがあるので
多分「普遍」を求めるようなそういうところもこの監督の特色なんだろうな。
問題提起はするけど、現実へのストレートなメッセージ映画にはしたくないわけですね。

母親役のルブナ・アザバルは「モロッコ、彼女たちの朝」の主演女優さんで時々見かけます。
娘役の女優さんは、ルーニー・マーラに似てる。

基本的に映画に関してわたしはネタバレ全然平気派、むしろ歓迎派、
話が分かった上でハラハラせずに落ち着いて味わいたい派なんだけど
この映画だけは知らないで見てよかったと思うので、ここにも書かないように気をつけます。

映画を見終わった後に、
ルワンダのジェノサイド後の母娘の写真の写真展を見たこと思い出した。
これ以上言うとネタバレになるから言えないけど、
なんともなんとも重く難しい愛よ。過酷な人生よ。

ただあまりに衝撃的でどぎつい話なのでそこまでやらなくても、という気持ちはあった、映画として。
ドラマチックにしすぎると「普遍」が消えてしまうではないかと。
でも原作がある話だとわかって、それを、抑えた表現を使いながら絶妙なバランスに仕上げる手腕はすごい。
母の過去のシーンと、それを追う娘のシーンが交互にあるのだけどどちらも素晴らしく、
とにかく静かなシーンも不穏なシーンもショッキングなシーンも
全部コントロールされていて振り幅は広いのに一つの世界ができあがっている。
物語のしかけに気を取られがちだけど、それ以外もズバらしい映画でした。

そして、またわたしのミサンドリーも炸裂した。
映画見て落ち着いてわかるのは結局、男ってほんましょうもないですねということですかね。
民族紛争や宗教紛争見るたびに、これは結局ホモソーシャルな世界はあかんということだなと思う。
力、権力、暴力。
女にも怒りはあるけど大体ここまでは暴力的ではない。(そりゃ例外もあるでしょうが

殺すのも犯すのも圧倒的に男たちだもんね。

「灼熱の魂」のワンシーンで女ばかり集まってるところに主人公の女性が入っていくんだけど、
最初は和やかだったのに最後は厭われて非難されるところでも、
女しかいないと悲しくはあっても身の危険を感じるレベルは男がいる時と全く違う。
男が一人でもいると緊張感が違うし、男がいると実際すぐに暴力が生まれて人が死ぬんだよねぇ。

殺されるのもそりゃ嫌だけど、当たり前のように殺し犯し殴る側の
男という生き物でなくてよかったという気持ちは常にある。
映画見てるとやってる側はたいして悪いことしてるとも思ってないことが多いし、
なんなら面白がって女子どもも殺す。
暴力の連鎖というけど、連鎖させてるのは男ばっかり。

「旅行鞄のがらくた」

2023-12-25 | 本とか
「旅はいつも楽しいことばかりではない。切ない思いをかかえてしまうこともある。人の感情、記憶といったものは厄介なもので、いったん哀しみの周辺に気持ちが入り込むと、自分一人の力で、そこから這い上がることができない時もある。」

フォトエッセイというか、小さいものの写真と文章が多めのこういう本が好きだ。
そういう類の本で一番好きなのはミランダ・ジュライの「あなたを選んでくれたもの」なんだけど
それはフォトインタビュー集と呼ぶにはあまりに読む作品として文学として成立し過ぎている。(褒めてる)
それに比べると、伊集院静のこの本は、あっさりしたとても気楽な読み物である。
「翼の王国」というANAの機内誌の連載だったらしく
機内で旅の予感あるいは余韻の中で気持ちよく読めるものになっています。
「翼の王国」がすごく好きだったことは上のリンク先のブログに書いてあるけど、
この前ANAの国内線に乗ったらもう「翼の王国」は紙の機内誌としてはなくなってて
電子化でデジタル版を読むようになっていた。寂しいことだなぁ。
でもそこでの連載が、こうして紙の本になるのはまだ救いかな。

旅先から持ち帰った「ガラクタ」の写真とそれにまつわる話で、
冒頭に書いたような文章はあるけど、ひとつひとつにちゃんとした物語があるわけでもなく
なんというか文学の香りはあまりしません。あくまで気楽な読み物。

とはいえ、こういうガラクタを眺めるのはとても楽しい。
これは競馬の馬券で、でも武豊のサインがあって、武豊との関わりが少し書かれている。
ゴミになるようなこういう半券、映画や美術館や切符や、そして馬券を
捨てないで持っていることの、その意味は「ガラクタ」ではないのよね。
わたしにも、そして誰にでもそういうものってあるよね。

お風呂で読んでいたこの本を読み終えた翌日に作家が亡くなったことが記事になっていて驚きました。
伊集院静は昔、雑誌かエッセイかなにかで、女の人が年を取って、体もこころもだらしなく弛んできても
そのだらしなさも、かわいいじゃないかと思う、というようなことを書いていたのをずっと覚えてる。
ああ、また食べちゃった、まあいいか、というような、自分に甘い女の人のダメさもかわいいじゃないか、と。
だらしなさなんて、もう人生の敵!でしかなかった超ストイック志向わたしには驚きの言葉だった。
そこまで許しちゃうのか、かわいいと思えるのか、大人の男ってすごいなぁ。
そりゃ、モテるわ、この人、と思いましたですね。(そう言いながら彼の妻たちは美女だったけど)
いつの間にかわたしも少しは大人の女になって、
自分のでも人のでも、敵!と思ってたそういう緩さ、だらしのなさを、
かわいいではないかと思えるようになってきたようにと思う。
だからって、別にモテてないけど。笑

知らない街の知らない立ち飲み

2023-12-24 | Weblog
映画「キャバレー日記」を見た後、電車に乗る前に入った西九条の駅前の立ち飲みがすごくよかった。
500円のセットですが、普通のワンコインの3倍くらいの量のアテが出てきて、
しかもたくさんある中から選べる!なかなか美味しい。これだけでもう一杯のめるけど
お刺身を頼んで熱燗に移行。立ち飲みで安い日本酒の熱燗を飲むのも好きなんです。
この冬初めての熱燗でした。

ハイボールとビールと熱燗2合、ひとりで飲んでいる間に、
わたしの横に来たカップルの男子がすごい自然な感じで
ここのおすすめってなんですか?って聞きてきたので、わたしも初めての店のくせに
とりあえずこの3種盛りのセットが安くて選べて美味しくていいですよ!とすすめた。
それから地元の話や、見てきた映画のことなど話が弾んだけど
カップルの女子の方が大人しくあまり喋らないので、遠慮して早く帰りました。
古くからある店で、カウンターにいた男子は3代目だというけど
なるほど、三代続くだけのことはあるねぇ。

と、そういう話をしたらお友達が、
>このお店、友達のお店なんです。
>3代目は、たかしくんといって、息子の野球チーム仲間でした。
>奥に見えるのはママ友で今でも仲良くさせてもらってるママです。
>一番下の子だから、奥で優しい目で見守ってるね〜笑

世間は狭いなぁ。いい店だったのでまた機会があれば行こうと思ったけど
こうなると機会がなくてもわざわざ行くしかないですね。
たかしくん!と呼びに、また行こう。

よく知らない街でひとりで入るのは立ち飲みが多い。
よく知らない街のよく知らないカフェで美味しいコーヒーが飲めるかは難しいし
(一応元カフェ店主で基本外のコーヒーを信じてなくて外ではコーヒー飲まない)、
レストランで美味しく楽しい食事ができるかはさらに難しいし、
バーにカラオケがあったりするとテンションダダ下がりだし(静かでちゃんとしたお酒のあるバーが好き)
一番リスクが少ないのが立ち飲みと思うのです。
とりあえずビールかハイボールを頼んで店の感じを見て、あかん感じだったらそれで出て次に行けばいいし、
良さそうならじっくり飲めばいい。程々なら程々に飲む加減ができるのがいい。
そこでひとりで飲んでるときにたまたま横にきた知らない人がごく自然に、
おすすめってなんですか?とか聞いてきて、
わたしもごく自然に、初めてなんだけど、これおいしいよとか答えて、
そうするともっと居心地が良くなって、
でも長居はせずに気持ちよくいい加減のところで切り上げて帰れれば最高です。

知らない街を一人でうろうろするのは、ほんとに楽しいなぁ〜。

安治川トンネルと「泥の河」

2023-12-23 | 映画


シネ・ヌーヴォで映画「キャバレー日記」を見た(前日のブログ)帰り、行きは地下鉄に乗ったけど帰りはJRにした。
ちょっと遠いし雨もぱらぱら降ってたけど商店街の屋根があるし散歩がてら歩いてみました。
知らない商店街、歩くの好きですね。

賑やかな商店街は楽しいけどあんまりなくて、さびれたシャッター街の方が多い、日本。
でもさびれたシャッター街も初めての街なら面白い。なんでも初めてって面白いからね。
たまに開いてる店を楽しく眺めながらどんどん歩くと、商店街の終わりで川にぶつかりました。
Googleマップを見ると、鉄橋が川の上を走ってる横に人間の通る道があるように見えたけど
そこにあったのは、なんと川の下を通るトンネルでした。

安治川トンネル?と書いてある。なにこれ面白い。川の下なんて初めて。
ググったら日本で川の下を通っている歩行者トンネルはここだけのようです。そうなの?

昔は車も通るトンネルで、今は人と自転車が通る川の下のトンネルになってて、
自転車も乗れる大きなエレベーターがついてる。6畳?もっとある?自転車が何台も乗れる。
でもわたしはまずは階段を降りてみた。結構深くまでぐるぐるぐるぐると降ります。地下だなぁ。

トンネルから出るときは、長い上り階段はしんどいのでエレベーターに乗りました。

その話をTwitterでしたら友達がそれは「泥の河」の舞台だと教えてくれて
泥の河がどんな話かだけは知ってたけど本も読んでないし映画も見てなかったので
帰宅後すぐに配信で見たら、なんと本当にすごい名作だった!
「キャバレー日記」との振り幅が大きすぎるわ。笑

原作は宮本輝で、昭和31年の大阪が舞台。映画自体は1981年(昭和56年)の作品。
宮本輝は素晴らしい小説を書くのに、少し前に芥川賞の選考で
台湾生まれの作家・温又柔(おん・ゆうじゅう)さんの作品に対して
>「これは、当事者たちには深刻なアイデンティティーと向き合うテーマかもしれないが、日本人の読み手にとっては対岸の火事であって、同調しにくい。なるほど、そういう問題も起こるのであろうという程度で、他人事を延々と読まされて退屈だった」(「文藝春秋」2017年9月号より)
なんてことを言ってて、とてもがっかりしたことを覚えている。
自分とは違う世界のさまざまな人生やその喜びや悲しみを対岸の火事と言い放っては
文学なんて成立しないのではない?
そもそも世界のできごとを、自分に無関係なものと思うのは傲慢なことでしょう。
全てに関わることはできないけど、世界は全部自分に繋がっているということを
忘れてはいけないのでは?と思うけどね。

とはいえ、この映画を見る限り宮本輝の原作も素晴らしいのだろうな。
まあそういうことはよくある。素晴らしい創作をする人が無邪気に差別をするというようなこと。

さて、監督は小栗康平でこれが処女作なの?それはすごいな。
小栗監督は「FOUJITA」のときにトークを聴きに行ったことがあります。(→ブログ)
予想外に、とても魅了されました。すごく賢い人だなぁ。
寡作の監督ですが、まだまだ作ってほしいものです。

「泥の河」のお話は(Wikipediaより)
昭和31年の大阪。河口近くの小さな食堂の子の信雄は父の晋平、母の貞子と暮らしている。ある日、信雄は喜一という少年に出会う。喜一は食堂の対岸に停泊する宿舟の子で、信雄と同じ9歳、姉の銀子は11歳で、二人とも学校には行っていない。母親は生活のため舟で客を取っているという噂があるが、信雄には理解できない。

絵に描いたような戦後の子供、信雄が主人公だけど、信雄の父親役の田村高廣がいいねぇ。
常に目がキラキラしてるのよね。戦争の傷もあり過去の女の傷もあり、
生き残って帰ってきたのにこれでいいのかという思い。
そして子供と楽しく遊んでやるときも、うつろな表情をするときも、いつも瞳はキラッとしてる。
藤田朋子演じる母親が惚れているのもわかるわ。
信雄の友達、船の子きっちゃんの母親役の加賀まりこがまたハマり役ですね。
加賀まりこの若い頃はもう可愛すぎて見るたびにびっくりするんだけど
そういう時期はもう過ぎて、少し疲れてくたびれて少しだらしなくなって
それでもまだ美しく色気のある、若くはない女の役に、
この加賀まりこほどぴったりな女優はないのでは?
いや、この時代の女優さんには、そういう役のできる人は他にも案外いたかもしれないな。

そして冒頭のシーンの、川の景色がすごく美しい。
いわゆるきれいな場所ではなく、川の両側にはバラックが立ち並んでいたり
小さい町工場があったり材木がうかんでいたりするような、
貧しい人たちの住んでいる地区なのだろうけど、とても美しい映像です。

そして確かに安治川が舞台のようだけど、映画の撮影は、名古屋市の中川運河で行われたそうです。
でもやっぱり大阪の安治川に見えるな。笑

この昭和の感じをわたしは少しじかに知ってると思う。
10歳くらいまで映画に出てくるような感じの長屋に住んでいて、
映画に出てくる感じの子供たちと路地を走り回って遊んでいた。
きっちゃんのような子が隣に住んでいた。
映画が昭和31年の話で、わたしは40年生まれだから、
昭和30年代の残り香は小学校に入ることにはなくなったかもしれないけど
記憶の奥に少し思い出すのよね。

映画:キャバレー日記

2023-12-21 | 映画
わたしの周りの変態な人たちの中でも、最も着実にコツコツと我が道を歩む友達(褒めてる)が、
西九条の映画館シネ・ヌーヴォのクラウドファンディングで、
名画発掘シリーズ リクエスト特集第三弾(好きな映画を上映できる!)というのに参加して、
選んだ映画が上映されるということで、その映画のチケットを1枚いただきました。
これ、なんだか面白い企画で、一人映画祭のもっともミニマムな形と考えると、
なんかいろんな遊びの可能性が浮かぶよね。

でもプログラム見るとヌーヴォっぽいセレクトになっててそれなりにまとまりがあります。
チケットをもらったので見に行くけど、
これが今年わたしが映画館で見る最後の1本になるのはどうかな…という映画だった…
「キャバレー日記」1982年の日活ロマンポルノ!

久しぶりに映画館で見る古い邦画、久しぶりに行くシネ・ヌーヴォが日活ロマンポルノ…笑
根岸吉太郎監督、荒井晴彦脚本。
(荒井晴彦といえば最近話題になった映画「福田村事件」(友達が出てる)の脚本もしてますね)
コメディタッチの軽いお色気映画かと思ったら、結構ちゃんとポルノだった…笑
「軍隊式管理のキャバレーの日常を哀感たっぷりに描いた」と解説されてるけど
主人公の伊藤克信がなんか不思議な人物造形で、見えてるところにしか人格がないような
マンガチックというか、よくわからないキャラクターを不思議な演技で演じてて面白かった。
冒頭の風鈴売りのおじさんと画面を横切る主人公のシーンとかすごく良くて、
いいシーンも多かったけど、後半はいろいろ驚いてそれどころじゃなかった。
なにより、昭和のキャバレーってこんなとこだったの!?という驚き!
店は昭和のクラブやラウンジの雰囲気で小さいテーブルに向き合う小さなソファという席が
特に仕切りもなく並んでて、
客はそれぞれの席で飲みながら、店の女の子を脱がせたりさわったりしながら
手や口や本番で接客してもらう仕組みなんだけど、席には仕切りがないから乱行パーティみたい。
そして店の男性たちはマイクの掛け声や音楽でディスコみたいに場全体を盛り上げる。
行ったことないけど、映画や本で知るわたしのイメージでは、
キャバレーって踊り子とかがいるとこと思ってて仕切りもなく本番するのはびっくりしたので
ググって見たけど、やっぱりいわゆるキャバレーは舞台があって踊れる場所で
この映画で見たキャバレーはピンクキャバレーという種類のようでした。
のちのピンサロというのになるみたい。ピンサロが何かもよくわかってないけど
なんとなく納得はした。
というようなこともあり、また内容的にも今日的ポリコレや風営法問題などからも
あまりあれこれ語ることは差し控えますが(笑)
当時の風俗を知る映画として、自分では見ないような映画を見られたのはよかったです。

映画:ドライブ・マイ・カー

2023-12-16 | 映画


映画「恋人たち」はすごくよかったのに普段書いてるもののあまりのネトウヨさにぎょっとした橋口亮輔と、
「寝ても覚めても」「ハッピーアワー」そしてこの「ドライブマイカー」の濱口龍介、
いつもどっちがどっちだったかわかんなくなる。
「ドライブマイカー」見る前に、えっと、どっちだっけ?とまた悩んだ。
濱口監督ですね、ごめんなさい・・・

原作の村上春樹「女のいない男たち」は文庫本がうちになぜか3冊あり、
読んだことを忘れてまた買うということを2度もしたらしい。
ちなみに村上春樹は嫌いじゃないです。
でてる本を全部読むほど好きでもないけど若い頃はだいぶ好きだった。

映画を見る前にとその「女のいない男たち」を再読したんだけど、
5年ほど前に読んだ時はわりと素通りするような感じで読んで、
特に大きな読後感もなかった気がするのに、今どの話を読んでも、すごく染み込んでわかる…
今回は読んでても何かいちいち自分に言われてるような気がしてたんたけど、
映画を見ると作中のチェーホフの戯曲の中身まで、またいちいち自分に言われてることのように感じました。
この5年でいろいろあったのねわたし・・・
いやぁ、思うこと考えることが多くて、いくつになっても人生は悩み多きものですな。

映画は素晴らしいです。こういう映画が好きだ!としみじみ思った。

ただ、しみじみ好きではあるけど、例えば「ROMA」をみた時のような、
すごい傑作を見た!という興奮がわたしにはなくて、
周りの人はその興奮を持って褒めてるのが、なんか羨ましい。
そんなふうに感動できなかったのは原作を先に読んでたのが理由の一つかもしれない。
映画は原作からはいくつか改変があって、2つ3つの短編が組み合わさってるのに
それがどれも原作を損なってない。さすが濱口監督。
キャスティングも、特に顔の整っているわけではないはずの性格俳優の主人公を
西島秀俊という美しい男が演じてるけど、これも全然悪くないというか、いやとても良い。

そんなふうに褒めるところしかないのに、すでに原作を味わっていたので、
その世界が再現されてることへの驚きより先に、まずすんなりと映画に入り込めてしまったのが、
うわーっという感動が起こらなかった原因かも?
すでに知っていることをなぞったモノを見ているような感じだったので。
なのに全く退屈もせずダレもせずに3時間近く見入ってしまえたのが、本当にすごいんだけども。

と、あんまり褒めてるように聞こえないかもしれないけど、この映画すごく好きなんですよ。
ただ、これだけの傑作を見たのに自分の中に興奮がないことが自分で不思議で、
あれこれ考えてしまうのです。

話の展開が面白くて感じないのではなく、淡々としてるのにまったく退屈するシーンがなく見てしまうというすごさ。
長いけどもう一回見たいくらいです。

>舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう――。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻の姿をオーディションで見つけるが…。
喪失感と“打ち明けられることのなかった秘密”に苛まれてきた家福。みさきと過ごし、お互いの過去を明かすなかで、家福はそれまで目を背けてきたあることに気づかされていく。(公式サイトより)

映画:ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう

2023-12-15 | 映画


ジョージアの映画はたくさん見たわけじゃないけど、今まで見たものはハズレがないので
150分の長さに負けずに見に行ってしまう。そしてやっぱりジョージア映画だなぁと満足する。
本当にしみじみと全てのシーンが良い。

すごくテンポがゆっくりで、物語に関係ない通りすがりの人を延々映したり、
小さい人や車が動くだけの遠景の風景を長々と映したり、
そりゃ150分かかるわ!というのんびり具合だけど、
ほとんど動かない上に話に関係ないシーンを長々と挟まれても、
色と構図と光とタイミングと意味のちゃんとした裏支えがあると
映画としてカラフルになって深みが出ますね。

お話は荒唐無稽というかちょっとヘンテコで、舞台はジョージアの古都クタイシ。
とある男女が偶然に2度すれ違ったことで好意を持ち。初めて会う約束をしたのに
その夜に呪いにかかって容姿が変わってしまい約束の場所に行ってもお互い相手がわからず
待ちぼうけで出会えず、お互いに気づかないままちかくにいて・・・という話。
でもミステリーでもサスペンスでもファンタジーでもない、なんだかとぼけた味わいの話です。
呪いとか、木が話しかけたりとか、ファンタジー?寓話の世界?と思ってもどうも違うし、
容姿が変わった二人も最初こそ驚いてショックを受けるものの
なんか淡々とその容姿で日常を生きていくし、全体的にオフビートなユーモアがある。

あと、野良犬たちもいい味だった。野良犬の多い街なのかな?
映画作る人たちも出てきて、その人たちが重要な役割を果たすんだけど
不思議な設定の中で、その辺の人たちは割とリアルで面白い。
全体的には牧歌的な人生讃歌のように見えるゆったりした映画なのに
途中何箇所かで唐突に入るナレーションが、現代の世界の惨状への苦しみであったり
回収されない伏線がいくつもあったりして、
(あるインタビューで監督はそういう点はいくらでも説明できます、と言いつつ
結局そこでも何も説明してなかった。笑)
映画の世界に整合性を求める人にはもやもやする映画かもしれない。
予告編にある足元だけを映したシーンも、すごく印象的だけど
主人公たちの顔が映されないと、微妙なフラストレーションがたまりもする。
でもわたしはすごく好きでした。
全部、なんとなくとぼけた味わいと思って、ぼんやり受け入れればいい。

そしてあまりによかったのでパンフレットって2年に一度くらいしか買わないのに、これは買ってしまった。
映画に出てくるハチャプリというジョージアの丸くて薄いのレシピもついてて、
前に「デリシュー」ってフランス映画でデリシュというすごい美味しいもののレシピがサイトにあったんだけど
ハチャプリの方が簡単そうで、作ってみたい。
フォッカチャっぽいパンだけどヨーグルトをたくさん使うのよね。美味しそうです!
映画の中でこのハチャプリをラップやビニール袋でなく布に包んで持ち歩くのも、すごく好き。