トレーラーでは、子供が親を告訴する、自分を生んだ罪で、という過激なシーンが印象的で
そのせいで激しさばかり尖ったメッセージ優先映画かなと思ったけど、
冒頭数分の俯瞰の映像で、いやこれは良い映画だというのはわかった。ほんとに評判以上。
映画としての素晴らしさとメッセージの強さが両立しているのは(両立してないやつ多い)
見はじめてすぐにわかったんだけど、それにこれだけすごい中身があるのは中々ないのです。
ただ、話はひたすらつらい。眉間にシワの2時間です。
子どもが苦労する映画はしんどくて苦手で見たくないのよ、2時間つらい。
それでも見るべき素晴らしい映画。
全体的にドキュメンタリータッチながら、やや引きの目線で進むけど、
そうでもしないともっとつらくて見ていられないもんな。
とはいえラストはほのかな希望があります。みんな見て欲しい。
わずか12歳で、裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は、自分の両親だ。裁判長から、「何の罪で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えた。中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らないし、法的には社会に存在すらしていない。学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に劣悪な労働を強いられていた。唯一の支えだった大切な妹が11歳で強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出したゼインを待っていたのは、さらに過酷な“現実”だった。果たしてゼインの未来は―。(公式サイトより)
映画も素晴らしいけどもう何よりもう!主人公の子役うますぎて惚れました。
少年時代のリバー・フェニックス君にあったキリリとした強さと孤独のある子。すごいわ。
そしてこの子だけでなくなんと登場人物のほとんどが映画と似たような境遇の素人なのです。
主人公に訴えられる両親役、子供を自分の持ち物のように扱い家畜のように利用するだけで
安心も愛情も与えない身勝手な親の役の人たちも、映画の中の彼らと同様
彼ら自身が過酷な境遇の被害者なのです。
教育どころか国籍・戸籍もなく、存在のない親たちなので、そこに一抹の同情の余地はある。
とはいえ、子供を道具のように売り飛ばし、死に至らしめる
映画の中の親たちは、許したくないけどね。
一つ一つのシーンやエピソードにあれこれ書きたいことの多い映画なんだけど
(いやもう、それはたくさんあるのよ、あらゆる登場人物やあらゆるシーンについて
いろいろ話がしたい!あの遊園地!あの親子!あの脇役!あの雑踏!あの叫び!)
それは置いといて、個人的な後日談を書きます。
良すぎる映画を見ると飲まずにいられないけど、その夜は真っ直ぐ帰って、
その分の飲み代くらいを世界の子どもの福祉と教育のためにどこかに寄付をしようと
募金先をググって探して、かなりいろいろ探してからやっと決めて、
翌日郵便局でわずかな額ですが振り込みました。シリア緊急募金というものでした。
そしてここに感想も書きかけのまま忘れていって2ヶ月も経った後、ついこの間
ユニセフから電話がかかってきたのです。
さらに募金のお願いとかの勧誘電話かな、やだな、めんどくさいなーと思いながら
話しはじめたんだけど、話してるうちに、なんかいい感じになってきて、
最後はとても充実した会話をした気分になった。
電話はやはり2ヶ月前にわたしが振り込んだ、このシリア緊急募金にについてで、まず
募金のお礼の後、どういう経緯だったのかおしえていただけますか?と聞かれた。
それは、「存在のない子供たち」というレバノン映画を見たからです。
あまりに強く心に響いたので、何かしないと自分の気持ちが落ち着かないという
自分のため、自己満足のためかもしれないけど、寄付や募金を探してたのです。
でも最近は以前より、マンスリータイプのの継続的な寄付形態が多くて、
いろいろ探したんだけど、単発で、手数料がかからず簡単にできて
信用できる寄付先がそちらしかなかったからです。
ネットでのクレジット決算の寄付は、大体必ず何かに登録して
メールアドレスや年齢や性別や余分な個人情報をあげないといけないのが嫌だし、
お礼や個人的な報告はいらないので匿名に近い形でできるものを探したのです。
そして、このような支援には継続性が必要なのはよくわかるし、
それでマンスリー形式のものが増えているのは理解できるのだけど、
世の中の全部の問題に関わることはできないので個人的に寄付する分野は決めていて、
それ以外は単発の無記名の募金をしたいだけなんです。自分勝手な個人的都合ですが。
お礼も何もいらないので匿名でしたかったのです。
そちらのシリア緊急募金は、郵便局で払い込むと手数料ゼロでできて
個人情報も名前住所電話番号だけですむし、
気まぐれな募金に合う数少ないものだったのです。
というようなことを考えながら思い出しながらなんとか全部話すと、
じっくり聞いてくれたユニセフの人は、
実は今回のお電話はマンスリータイプのものをお願いする電話だったのですが、
お気持ちやスタンスがとても良くわかったので、今回お勧めはいたしません。
お礼だけ申し上げます、と言われて、なんだか通じたかなという気持ちでうれしくなった。
頑張ってくださいと電話を切りました。
恵まれて余裕のある生活をしている人間が、気まぐれに
自分の気持ちを落ち着かせるためにするだけのことでも、お金はお金だし、
みんなもっと募金はするといいのにと思う。
日本国内の震災募金はもちろんとして、例えば映画を見て、本を読んで、ニュースを見て
心が動かされて何かできることがしたいと思ったら気楽に募金したらいい。
映画なら映画の感動の分だけ振り込むといいと思います。
あれもこれもはできないし、自分の生活や楽しみを優先したいし、、
でもそんな無責任で安全なところからたまに思い出すだけのお気楽な人間でも、
やらないよりはやったほうがいい。ほんの少しでも。
ただ、その一方で、過去に見たルワンダの写真展示で寄付を拒否してたものがあって、
寄付すると人はそれで気が済んで忘れてしまう、それをしないで
ずっとモヤモヤした気持ちを持ち帰って欲しい、と書かれてたのがあって、
→「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」
その気持ちにもまた深く頷かずにいられないんだけど。。。