この監督ヨルゴス・ランティモスが天才なのは知ってたけど、改めて天才。
あーびっくりした。わたしの今年のびっくりオブザイヤーだ。
「哀れなるものたち」をなんかちょっと変だけど女性の自由や成長や自立の物語と思って感動した人が
同じ監督のこれを見てもついていけるのかな?
「哀れなるものたち」とその前の
「女王陛下のお気に入り」はこの監督にしてはわかりやすく筋の通った物語で
その前の作品
「ロブスター」「聖なる鹿殺し」に見られる、何か限界を超えてる感じが
足りなかったことに、今作をみて気がついた。
いやぁ、久しぶりに怖さにドキドキした。
怖いのに見てしまう、美しく揺らぐ世界のカラフルな悪夢って、
タイプは違うけど「ツイン・ピークス」を初めて見た時の衝撃を思い出したな。
暴力やグロ表現(まあまああるけど)ではなく、人の心の奥の恐ろしさ、というものでさえなく、
なんかもっと見ている人の倫理はもちろん論理や認知や何かを壊すような映画。
めちゃくちゃ疲れたし、2度と見たくないのは「鹿殺し」と同じだけど、
舌を巻いて感嘆したのも「鹿殺し」と同じ。
映画は3章に分かれていて、3つの別々のお話の別々の役を、同じ役者が演じます。
役者たちはもちろん素晴らしいけど、違う役を演じていても
エマストーンとウィレムデフォーはどちらも顔が強すぎてちょっと違いを感じにくいところがある。
でもジェシー・プレモンスは絶妙な別人具合になってるのが本当に素晴らしかった。
素晴らしく気持ち悪かった(褒めてる)
他にやはり別人役で出てくる一人は
「ドライブアウェイドールズ」で大好きだったマーガレット・クアリー!
3つの話のタイトルは「R.M.F.の死」「R.M.F.は飛ぶ」「R.M.F.サンドイッチを食べる」
この中で主演の三人(エマ・ストーン、ウィレム・デフォー、ジェシー・プレモンス)はそれぞれ
全く別の役を演じてるけど、1話目の自分を殺してくれと依頼に来るR.M.Fという頭文字の男と
第3話で病院にいて結局無事殺される男は、同じ男なのかな?
なので、完全に別世界の別の話というよりは、別の話だけどどこかで繋がってる感じのある世界です。
この監督の映画はどれも支配と隷属や依存関係のことを書いてるけど、
主題歌になってる?ユーリズミックスの歌の歌詞がまさに直球そういう感じで
これ、歌詞も曲もすごくこの映画にあってて、この歌なしで考えられないくらいです。
今聴いてもかっこいいな。
わたしにはとても聞き覚えのある昔のヒットソングだけど若い人は知らないのかな?
最初の話は、ストレートにある男の支配の奴隷になってた男がそこから離れようとするものの
結局また許しを請うて戻ってしまう男の話。
2つめは妄想?から妻を別人と思い込むようになった男に、
別人じゃないと証明するためあらゆる要求に応える女の話。
3つ目は新興宗教がらみ、新興宗教ってまさに支配とコントロール、隷属の世界だよね。
まあ、絶対人に勧めない映画ですが、
こんなに頭を抱えながら映画館を出た映画はあまりない。(褒めてる)
そして、以下少しネタバレ
2つ目の話でちょっと
「エンドレスワルツ」という映画を思い出した。
夫への愛情を証明しようとする妻が、食べなくなった夫に言われて
自分の指を切り落としてブロッコリー(だっけ?)と炒めて出すんだけど、
「エンドレスワルツ」でも指入りオムレツが出てくるのです。
こっちは単にドラッグでラリって訳わかんなくなってる最中にギャハハはと笑いながら作るんだけど
指入りの料理はインパクトがあって忘れられませんね。
(ちなみに「エンドレスワルツ」は支配と隷属の不穏で異常な話ではなく
男女の愛憎と依存の話かな)